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自分の死と宇宙兄弟の関係

自分がALS患者になったのも何かの縁なので、死ぬまでの計画をしっかり立てるためにも、自分なりにALSとしっかり向き合って内容をまとめてみた。

手始めに、すごく簡単にまとめるとこんな感じ。

・筋萎縮性側索硬化症(ALS)
・国内患者数は約1万人
・全身の筋肉が動かなくなる
・視覚、聴覚、内臓、などは変わらない
・平均発症から3 ~ 5年で死亡
・原因不明で完治不可


YAHOO!JAPANニュースより出典

動けないというだけで、内面的な自分はそのままというのが少し特徴的かもしれない。つまり、顔がピクリとも笑っていなくても心の中では大爆笑しているような状況があり得そう。

調べていて非常に悩ましい問題に気づくことができた。呼吸器をつけるタイミングだ。ALS患者によって症状も進行度合いもバラバラで一概には言えないようだが、呼吸に必要な筋肉すらもやがては動かなくなり呼吸ができなくなるので、遅かれ早かれどこかのタイミングで呼吸器をつける必要がある。

ALS患者にとって呼吸器をつけるということは声を失うことを意味するので、私にとってはこのタイミングより先はもう延命を望まないゾーンに入ってくる。ここまでくると、私の性格からしてシンプルに幸せを感じることができない気がするからだ。

事実、最近ニュースにも上がっていたが、呼吸器をつけないという選択をするALS患者も一定数存在する。理由は様々で、中には私と似たような考えで家族に負担をかけたくない患者もいるようだ。

できるだけギリギリまで家族との時間を過ごしたいという私の願いと、人によって大きく時期が前後する、呼吸器が必要になるタイミング。呼吸器はつけたくないが呼吸ができずに苦しみながら死ぬのはごめんだ。これらのバランスが私にとって先々の大きな課題だと感じた。

ところで、実は私自身、この指定難病に関する予備知識について、罹患する前からまったくゼロだったわけでもない。

何を隠そう、私はそこそこの漫画ヲタクだ。デジタル容量で500GB程度の漫画を持っており、もし冊子で所持していたとしたら、ちょっとした古本屋を開ける程度の蔵書量を誇る(誇れることではないが)。

そんなコレクションのなかのひとつに「宇宙兄弟」という言わずと知れた大人気漫画がある。兄弟そろって宇宙飛行士になるという、なんとも今の自分には眩しいほどに夢も希望もぎっしり詰まったキラキラ漫画であり、また丁寧なリサーチによる事実描写の精度の高さに定評がある漫画でもある。

この漫画のなかで、主人公兄弟の身近な登場人物がALSに罹患する描写がある。さらに、そこから発展して「せりか基金」という、これまた登場人物の名前を冠したリアル世界での基金も発足されている。「せりか基金」は、ALSの治療方法を見つけるための研究開発費をあつめる活動で、今度こそ何を隠そう、実は私は基金が発足したばかりであろう5年ほど前に、この基金に寄付をしたことがあるのだ。

ALS患者になった今思い返してみると、他に寄付などしたこともないのに、ALSという病気に対する興味と漫画のストーリーに対する感動があいまって、不思議な引き寄せる力が働いていたように思えてならない。正確な金額は覚えていないけれど、たしか1000円やそこらのほんの気持ちばかりの寄付だったように記憶している。それだけで社会に貢献したと自己満足に浸ることができた、コスパの良い思い出として残っている。

私が医師から最終宣告を受ける前の段階で自分がALSに罹患している可能性に辿り着けたのは、ALSという病気についてこの漫画のなかで事前に病気に対するイメージを持っていたことが大きく影響している。宇宙兄弟。。。こんな形で自分の人生と繋がるとは当時は夢にも思わなかった。

もし、あのときもっと多額の寄付をして、それだけではなく、「せりか基金」についてSNSで宣伝したりとか、もっと本気で応援していたら、少しは研究スピードも加速して今とは状況も変わっていたのだろうか?そんなわけない。そんなことでどうにかなってたら誰も苦労しない。と、理屈ではわかっているが、少しだけそんな思考実験をしている自分がいる。


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冒頭の画像について
画著作者:vecstock/出典:Freepik

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