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パクチー・イノベーション

2023.06.01 タイ・バンコク編

皆さんは、パクチーについてどんな印象をお持ちでしょうか。

実は僕、いつかの山小屋で、うっかり料理に混ざったカメムシを口に入れてしまったことがあります。
あの時の、そのまんまの味。それが僕にとってのパクチーです。(ちなみに虫は大の苦手)

独特で、他に例えることの出来ない、非常に強い香り
少し嫌悪感を抱くほど強い、でもそのインパクトが癖になるのかなとも思います。

それはバジルだったり、ディルやセロリ、春菊なども同じことが言えるのだけれど、日本において、パクチーだけは何となく別枠として認識されているイメージがあります。

その背景としては、何年か前に起こった「パクチーブーム」が原因なのではないかと。

タイやベトナム、トルコやメキシコなど、世界にはパクチーが多用される地域がたくさんあります。
ただその中からパクチーだけを切り取って、過度に誇張してしまった結果、日本特有の”パクチー料理”なるものが生まれまたのかなと思います。(それはそれでいいのだけど)

↓以下参考記事

実際、タイの屋台料理では、ガパオ、トムヤム、炒飯、ヌードル、カオマンガイ。。。。。
ほぼすべての料理に刻んだパクチーが使われていました

ただ、注目すべきはその使い方。

日本でよく見る、「パクチーどかーん!!とりあえずパクチー乗っけました!!」みたいな料理は一切なくて、びっくりするほど繊細な使い方
1つ1つの料理を分解していくと、必要不可欠な要素としてパクチーが存在している。
もし意識してパクチーを捉えていなければ、ごく自然に、もはや影の存在としてその一皿の味覚を構成する一部になっていただろうと思うくらい。

中でも、カオマンガイのスープにおけるパクチーの在り方はとても印象的でした。

まず、スープには茎、ライスの方には葉と、それぞれの特徴をちゃんと理解して、想像して、使い分けがされている。
正直、作り手が特徴をどう捉えるかという話なので、この部分はこれに使ったほうが良いという正解は勿論存在しません。

ただ、この時のカオマンガイの、透き通った、鶏の出汁を少し整えた(多分顆粒だしも入ってるけど)みたいな超シンプルなスープ。
ここに2㎜幅くらいに刻まれたパクチーの茎だけが、ほんの少し浮かんでいました。

無くてもいいんです。成立はする。鶏の出汁はおいしいですからね。

でもカオマンガイって、最高においしいんですけど、どこか単調ではあるんです
蒸したか茹でたか揚げた鶏を、鶏の出汁(もしくは鶏を茹でた汁)で炊いた米の上にのっけて、鶏出汁のスープと一緒に流し込む。

チャイナタウンエリアで有名なカオマンガイ専門店


一食を構成する土台が同じ
だからまとまりがあって、それぞれが同じくらいの優しさで並んでいる。それがある意味、単調に感じる。

しかし、この優しいリズムに変化を生み出しているのが、”2㎜幅の刻み茎パクチー”
それも、スープに浮かんでいることが重要なんです。

この一食の中で唯一アツアツである、スープ。
このスープから立ち上る湯気が、料理が運ばれてきた瞬間の香りを支配します。

心底嫌いな人は少ない香りでも気になるとは思いますが、アツアツではないライスの上に乗っけられた少量の葉パクチーは、噛むことによってやっと効果を発揮します。
つまり、口元まで持ってこなければ、強い香りを感じることはありません。

この湯気が、じんわりとした優しい印象を時折断ち切り、期待値を昇華させる。

そして、吹き抜ける圧倒的清涼感。

イメージで言うと、渓流

長野県・松本市 木曽川流域

透き通った水が流れていて、そこに時折、新緑を纏った風が吹いてくるような。
でもその基盤には広がる大地があって、それがここで言う鶏肉の味わい。
茶色いイメージに、鮮やかで、かつ透き通った緑が吹き込んできたんです

これぞまさに、僕にとっての
「パクチー・イノベーション」

パクチーを誇張して捉えることの多い日本では、”好き”か”嫌い”かみたいな聞き方をされることが多いように感じます。
実際レストランで働いていても、パクチーが”攻め”の食材であることは確かです。

今回タイの屋台料理を体感したことで、その概念がやっと覆されました。
パクチーもまた、その他すべての食材と同じように、一皿を構成する要素の1つだということ。
ごく当たり前のことではあるけれど、”食材をどう捉えるか”って本当に重要。一度ついてしまったイメージって、原体験が無いと中々覆すのが難しいんです。

これまた刻みパクチーの清涼感が心地よい、
トムヤムポーク

日本で食べる”パクチー料理”
それはそれで、パクチーが好きな人にとっては最高ですよね。
でもそれは、少なくともタイ料理ではない
あくまで、”パクチー料理”だということを皆さんに伝えたい。

だからパクチーが嫌いな、そしてタイ料理を敬遠している日本人の方
是非一度、タイに行くことをお勧めします。

タイ料理一食の相場は、約200円。

この記事を読んで、200円でパクチー・イノベーションを起こして、タイ料理について語り合える仲間が出来たら嬉しいです。
(ちなみにバンコク往復は安い時で35000円くらいです。最高。)

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