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ミムコさん縦スク文庫に応募します 童話「もうカミナリはへっちゃら」

 ともくんとなおくんの部屋には、天じょうに窓がついています。
「おにいちゃん、サンタさんはここから入ってくるの?」
 おとうとのなおくんが聞きました。
「この窓は開かないんだよ」
 おにいちゃんのともくんは、さめた口調で窓を見上げて言いました。
「月がまんまるだ。なおくんの顔みたい」
 ともくんがそう言うと、月よりまんまるくなってなおくんがふくれました。
「月や星は見えてもいいけれど、カミナリはごめんだなぁ」
 ともくんもなおくんもカミナリが大の苦手でした。
 天じょうの窓からは、月の光がさしこんで電気を消してもこわくはありませんでした。
 そのやわらかな光につつまれながら、ふたりはいつのまにか小さな寝息を立てていました。
  モワモワモワ〜
 夜中に目をさましたともくんは、何ども目をこすりました。天じょうの窓から何やら白いけむりのようなものがどんどん中に入ってくるのです。
「わぁー」
 ともくんはふとんをかぶりました。その声でなおくんも目をさましました。良く見るとその雲のようなモワモワといっしょにだれかが飛びこんできました。
「き、きみはだれ?」
 ともくんがこわごわ聞きました。
「ボク、オニノコ モワモワっていうの。
 ニンゲンのトモダチほしいです」
「オニの友だちなんていやだよ」
 ともくんが言うと、モワモワは
「やっぱりね」
と言って下をむいてしまいました。その顔があんまりかわいそうだったので、なおくんが言いました。
「いいよ。ぼくなったげる」
「ほんとー?」
 モワモワの顔ぽっと赤くなりました。
「きみさあ、人をおどかしたり食べたりしない?」
 ともくんが聞きました。
「しないよ。今日は晴れているからひまなんだ」
 モワモワがこたえました。
「雨ふりの日はいそがしいの?」
 なおくんが聞くと
「おとうさんの手伝いがあるんだ」
 すました顔でモワモワが言いました。
「それってカミナリのじゅんびじゃない?」
 ともくんがびっくりして聞くと
「そうだよ。まだボクひとりではできないんだ。ツノが全部はえたらできるようになるって」
 そう言うモワモワをよく見ると、イチゴみたいなツノがちょこんと頭の上についていました。
「おとうさんてこわいんでしょ?」
 ともくんが聞きました。
「うん。わるい子が大こうぶつ。よい子はまずいんだって。ねえ、それよりボクの新しいゲーム〝UFOレースⅡ”で遊ばない?」
 ともくんもなおくんもモワモワのおとうさんはこわいけれど、ゲームはちょっぴりやってみたくなりました。
「ねえ、いっしょにやろう!」
 モワモワはそう言うと、窓に向かってのびているけむりをチョンと指でさわりました。
 すると、白いけむりのかいだんができました。それは窓をつきぬけて空まで続いていました。
 ともくんとなおくんはモワモワについてどんどんかいだんを上がって行きました。
 しばらくすると、雲の門が見えてきました。そこは白いわたがしのようなじゅうたんがしきつめられていました。
「こうやって歩くんだよ」
 モワモワがトントン飛びはねながら歩いて見せました。モワモワについて行くとロケット型の部屋につきました。その半分くらいが大きな丸い窓になっていました。
 モワモワがボタンをおすと、ソフトが自動的にセットされて窓がスクリーンになりました。
「すごいなぁ。飛行機のコックピットみたい!」
 ともくんはこの間行った航空博物館で見たものを思い出して言いました。
 三人はパイロットになった気分で目の前をピュンピュン飛んでくる宇宙船をクリアして行きました。たくさんの星の間をくぐりぬけて、前へ前へと進みました。
「すごーい。本当に操縦しているみたいだ」
 ともくんが興奮して言いました。
「本当に操縦しているんだもん。当たり前だよ」
 モワモワはすました顔で答えました。
「え? あ〜〜〜」
 ともくんとなおくんが振り返ったとたん、星がいっせいに向かって来て、ロケットはその中に火花をちらしてぶつかって行きました。
  ヒュルルルルルル〜  ドスン
 気がつくと、ともくんはベッドの上にすわっていました。手はレバーをにぎったままの形でした。となりを見ると、なおくんがクークー寝息を立てています。
「あれ?夢見てたのかなー」
 ともくんはそう思いましたが、いつの間にか眠ってしまいました。
 次の日は雨でした。ともくんとなおくんが天じょうの窓を見上げたとたん、ピキ〜〜ッとイナズママークがくっきり見えました。
その後すぐに小さなイナズママークも見えました。続いてドドーン ガラガラの音とともにバチバチ大粒の雨が窓に当たりました。
 ともくんはもうカミナリがこわくありませんでした。だってあれはモワモワとおとうさんのしわざだってわかっていたからです。
そしてともくんはポツリと言いました。
「モワモワのヤツ。ちっちゃいカミナリできるようになったんだな」 
               おわり
(1995字)



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