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創作童話 ドクター・マキルの診療室 3/5

 けれどもその日から、ドクター・マキルとロールさんは診療どころではありませんでした。
 ラファルの動き回る速さと言ったらなかったのでした。部屋から部屋へ風が通り抜けるように動き回るので、部屋の中のものはあっという間に散らばりました。
 カルテや花びんの花が、たつまきに巻きこまれたように空中にまい上がりました。
「ラファルには困ったものだ」
「本当に困りましたねえ」
 ロールさんはそう言って、片づけながらにこにこしていました。
「でも部屋を散らかされるおかげで、思わぬ物も見つかったりしますよ」
「わしもあいつを見ていると元気が出る」
ドクター・マキルもロールさんも部屋の中を走り回ることが多くなりました。
 ある日、あんまり気持ちの良い風が吹いていたので、ドクター・マキルはイスに座りながらうとうとしてしまいました。
 すると、ラファルが耳もとでさけびました。
「ドクター・マキル!患者さんだよ」
 ドクター・マキルがはっとして目を覚ますと、女の子が足を引きずりながら入って来ました。
「これはしつれい。ええと、どうしましたか?」
「私は森の木を守っている妖精です。うっかり木の上から足をすべらせてしまいました」
 ラファルがいたずらっぽく笑って言いました。
「木の妖精が木から落ちるのか」
「これこれ、ラファル。手伝っておくれ」
ドクター・マキルはそう言って木の妖精をベッドまで運びました。
 ラファルが木の妖精の足首をつかんで言いました。
「ここがはれているよ」
 その時でした。
  ビリリリリリリリー
 木の妖精の足にビリビリが伝わりました。
「キャッ!」
 木の妖精はびっくりしました。けれどもそのとたん、足首のはれがみるみる引いていきました。
「まあふしぎ、痛くなくなったわ」
 ドクター・マキルはまきひげをつまんでピピーンと伸ばしました。そしてその手をはなすと、たちまちひげは丸まってパチンともとにもどりました。
「そうだ!ラファル。腰のあたりにも手を当てておくれ」
 ラファルは言われた通りに手を当てました。
  ビリリリリリリリー
 たちまちビリビリが走って、木の妖精は元通りに歩けるようになりました。
 木の妖精は足ぶみをしたり、フワッと浮き上がったりして喜びました。
「ありがとう!」
 木の妖精は、ほおをピンク色にそめてスキップをしながら帰って行きました。
 ドクター・マキルは言いました。
「ラファル、きみの力はすごいぞ」
 ラファルは体中にビリビリがみなぎってますます元気になりました。

              つづく

またまたaimaruさんのステキな画像を使わせていただきました。ありがとうございました✨

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