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創作童話 ドクター・マキルの診療室 1/5

 森の中の丸木小屋にドクター・マキルの診療室がありました。ドクター・マキルの口ひげはクルリとまいたまきひげでした。
困った時はこのまきひげをつまんでピピーンと伸ばしました。そしてその手をはなすと、ひげはたちまち丸まってパチンと元に戻った時、良い考えがうかぶのでした。
 ドクター・マキルの診療室では奥さんのロールさんがナースをしていました。
ロールさんはいつも金色のまき毛をプルプルさせながら、患者さんに笑顔をふりまいていました。その笑顔を見ると誰もが安心しました。
 ある日、診療室のドアがいきおいよく開いて、強い風と一緒にたくさんの木の葉が入ってきました。
「なんだ、なんだ」
ドクター・マキルは、大事なひげを両手で押さえながらドアの方をふり返りました。
「誰もいないぞ。それにしてもひどい風だ」
ドクター・マキルはブツブツ言いながらドアを閉めました。
 すると、後ろから声が聞こえました。
「ドクター・マキル、ぼくはここだよ」
「え?いつの間に?」
ドクター・マキルがふり返ると、そこには木の葉のかたまりが宙に浮いていました。
「きみはだれだね?」
すると、その木の葉のかたまりの中から声がしました。
「ぼくはラファルだよ」
「何でそんなところに浮いているんだい?」
「ぼくにふれるとビリビリすると思うから」
「それは困ったなぁ。でもそうしていたのでは診察もできないぞ」
ドクター・マキルは上を向いていて首が痛くなったので、イスに座りながら言いました。
「ここへ座れるかい?」
すると、木の葉のかたまりはスーッと降りてきて患者さんの座るイスにフワッと腰かけました。
 そのとたん、木の葉がハラハラと落ちて、中からわたがしのかたまりのようなものが現れました。

             つづく


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