見出し画像

オルタナティブ投資熱の高まり

1.オルタナティブ資産とは

日経新聞に"三菱UFJ信託社長「オルタナ管理2倍に」"という記事があった。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78400960T11C21A2EE9000/

三菱UFJ信託社長「オルタナ管理2倍に」海外M&A検討

三菱UFJ信託銀行は株式や国債など伝統的でないオルタナティブ(代替)資産の管理残高を将来的に2倍に引き上げる考えだ。

低金利環境でオルタナ運用の需要が高まるなか、投資資金の受け入れ体制を整える。

オルタナの分野では運用面でも「会社や運用チームを買収して(運用残高を)増やしていきたい」と語った。具体的には未上場株ファンドや不動産、社債(クレジット)などだという。先進国の低金利環境が続くなか、投資家の運用ニーズが高まっていることに対応する。

2021年12月14日 日経新聞

オルタナティブ資産とは、伝統的な資産である債券・株式の"代替"という意味であり、「伝統資産」のアンチテーゼとして生まれた概念であることから含有する意味は広い。具体的にはPEファンド(バイアウト、ベンチャーキャピタル)、ヘッジファンド、インフラ、不動産等が含まれる。

では、なぜそのオルタナティブ資産が注目を浴びているかだが、記事にある通り、安定的なインカムを生み出す債券が、低金利環境下で投資妙味が薄れてきており、その債券の(文字通り)代替資産として、オルタナティブ資産の投資熱が高まってきているというわけである。

投資にあたっての必須知識である現代ポートフォリオ理論でざっくり説明すると、以下リスク・リターン平面において、株式がハイリスク・ハイリターン(右上)、債券がローリスク・ローリターン(左下)とすると、オルタナティブ資産はミドルリスク・ミドルリターンであると言われる(無論ピンキリだが)。

しかし、債券のリターンが低金利環境で低下しており、ポートフォリオに占める債券割合が従前どおり高いままだと、投資家のターゲットとする利回りが得られないため、債券の代わりにオルタナティブ資産を導入したいニーズが目下高まっているというのが記事の趣旨である。

Munasca, 現代ポートフォリオ理論における最小分散フロンティア, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=40666652

2.具体的な投資方法(GPIFを例に)

日本人の老後資金を稼いでくれるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)でもオルタナティブ資産は増えてきている。

GPIFの運用残高全体に占めるオルタナティブ投資割合は現在1.3兆円(0.7%)と微々たるものであり、大部分の資金は株式・債券で運用されているが、オルタナティブ投資の残高伸び率は急上昇しており、低金利の環境が続く限りは今後も伸び続けていくことが予想される。

不動産の場合、身近な国内不動産投資に加え、ポートフォリオの分散という観点から海外への分散投資も行う必要があるが、その場合質・量共にもっともメジャーな米国への不動産投資が基本となる。

GPIF

ただし、不動産や未公開企業をGPIFが直接買うというわけではない。日経記事に"投資家の運用ニーズが高まっていることに対応する。"とあるように、GPIFや、企業年金、保険会社等の機関投資家が、三菱UFJ信託のような専門会社(ゲートキーパーという、要はバイサイドアナリスト)を使い、「不動産に投資するファンド」に投資するファンド・オブ・ファンズ形式で投資が行われている。

より海外投資で一般的なPEファンドの投資スキーム図で説明すると、リミテッドパートナー(LP)が出資額のみの有限責任を負うGPIF等の機関投資家、ジェネラルパートナー(GP)が投資運用の意思決定を行うファンドマネジャー、図のポートフォリオ会社が投資対象である。海外不動産投資の場合、このポートフォリオ会社が不動産ファンドとなる。

Thomas Meyer, Pierre-Yves Mathonet, 「プライベート・エクイティの投資実務」より, https://amzn.to/3q6DM2M

日本の場合、国内であれば機関投資家が自前である程度投資判断を行えるかもしれないが、海外投資等専門性が必要な投資を行う場合、リミテッド・パートナーに対してゲートキーパーがコンサルティングを行う。

ちなみに現在GPIFの海外不動産投資のゲートキーパーは、みずほ系のアセットマネジメントOne、投資運用を行うファンドマネジャーをCBRE Global Investment Partners Limitedが担っている。
CBREは世界最大の不動産総合サービス会社で、CBRE Global Investmentはそのグループ会社である。
https://www.gpif.go.jp/investment/manager-entry/alternative-assets/results/index.html

3.まとめ

オルタナティブ投資ニーズの高まりと、投資方法についての概略をここで説明した。今後もオルタナティブ投資は加速していくが、その場合日本国内のみでは分散効果や利回り的に不十分であることから、今後も海外への投資が盛んになっていくと思われるので、引き続き動向をチェックしていきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?