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身体と詩(うた)と、俺の関係

大野です。
今後、コラムのような、音楽に関する記事を執筆していこうと思っています。
これは第1弾です。

それではどうぞ

ハイポジ「身体と歌だけの関係」歌詞考察


今は昔、ハイポジという音楽ユニットがいました。
僕は、ある展覧会に行った時、たまたま取り上げられていたことがきっかけで知りました。

ある日YouTubeで音楽を聴いてる時に、たまたまハイポジの「身体と歌だけの関係」という曲を見つけました。
ハイポジの楽曲はApple Musicにあって、いくつか聴いたことはあったんですが、スタジオアルバムとしてのリリースはストリーミングでされてなく、そしてこの曲「身体と歌だけの関係」は、サブスクにて聴くことはできないみたいです。


この曲、歌詞がかなり奇妙なんです。それは、まず冒頭
「ガンガンやって はやく飽きてね」という、奇想天外な一文から始まるところから伺えます。
この一文が3回リフレインされた後
「一緒のスピードで!」
「はやく飽きてね」ときます。

ここ、すごいですね。

スピード、という言葉が使われている曲はいくつか知ってます。
例えば
野狐禅(竹原ピストルがやっていたフォークユニット)
「自殺志願者が線路に飛び込むスピード」
銀杏BOYZ
「NO FUTURE NO CRY」

この2つの曲の”スピード”は、”線路に飛び込むスピード”、”屋上から飛び降りるスピード”と、ある種の錯乱状態を端的に表していると思います。

なんでしょう、曲調も歌詞も、エネルギッシュなんです。青春パンクの流れです。僕の大好きな奴です。

僕は昔から、”スピード”という言葉に、異様に耳を奪われていました。すごくエフェクティブな言葉じゃないですか?
人間のスピードなんて、限られているのに、馬力を感じるんです。
人間のスピードって、結構すごいですよ。

本題に戻りましょう。
「身体と歌だけの関係」におけるスピードってなんでしょう。
この歌における主題は、セックスです。
セックスのスピードが速いのか。
これは面白い情景ですね。
でも多分、飽きるタイミングが同じであって欲しいということなんでしょう。
でもこれも、なかなか面白いじゃないですか。
大谷翔平くらいのミート力じゃないと、タイミングは合わせられないもの。(僕は前田智徳さんのファンですが。)
ここにおける早さというのは
第1回セックス〜第2回セックス〜第3回セックスと、間隔の短さの話でしょうか。さっさと回数こなそうぜ的な?回数こなしたら飽きるのか??
第何回まであるんでしょう。終わりなき旅でしょうか?

「一緒のタイミングで」ならわかります。
「一緒のスピードで」
ここなんです。問題は。

飽きる、というのは恐ろしいことです。
僕は一時期セブンイレブンのフレンチクルーラーを3ヶ月毎日食べたんですが、突然「飽きて」からというもの、一度も口にしていません。湧き上がる欲が、冷徹な眼差しに変換されてしまう。
そんな偶然的なタイミングを、「性的欲望」において一緒に成し遂げようというじゃないですか。

上等です。

そのあとの歌詞について、考えてみましょうか。

「何よりも大事な関係でいたい。
僕らの身体と僕らの歌だけの関係にしよう。」

待ってください。
めっちゃ愛し合ってるじゃないですか。
しかも、僕ってことは男の意見なんですか?
(ハイポジのボーカルは女性です。)
僕らって、なるほど、これは積極的な歌なんだわ。

※僕、いつもこんがらがるんです。歌って面白いのが
男目線の言葉を女性の声で歌われるだけで、ねじれが生まれることです。
(このねじれについてはまた話したいです。)例:Chara 『ラブラドール』

OK.混乱した頭を整理しよう。
「僕らの身体」とは、飽きた後に情景化する、鳥瞰的なイメージではないでしょうか。
その写真的なイメージと、「僕らの歌」が、契りを結んだ時、それは永遠を約束するということなんじゃないでしょうか。

こう捉えると、すごく単純に見えてきましたね。

なのに!

泣けてきます。全て覆されます。
2番では、
「何よりもステキな関係でしたい
僕らの身体と僕らの歌だけの関係しよう。」
に変換されています。

助詞の変換

これ、僕もよく使うんです。意味が全く変わってしまう言葉の不思議。
おい、どういうことなんだ!!

飽きてほしいんか、したいんか、はっきりセーい!!

わかりました。閃きました。
”その写真的なイメージと、「僕らの歌」が、契りを結んだ時、それは永遠を約束するということなんじゃないでしょうか。”
と先ほど述べましたね。
この永遠化されたあと、最高級の状態で、
「歌」が完成された後で、最高のセックスをしたいということなんじゃないか。

なんと贅沢な!

そうです。その後に続く歌詞を見てみましょう。
「歌だけが残る
ステキな僕らのステキな歌だけがそこに残る」

なるほど。これは明らかに、企てられています。
この歌が、世界で聞かれているとき、社会に飛翔したこの曲をBGMに、4畳半の狭い部屋で、また彼らは関係を築いてゆくのです。

恐ろしい。愛とは恐ろしい。
何か見えてきませんか?

僕の新曲の歌詞制作について

ここまで、ハイポジの「身体と歌だけの関係」を僕なりの解釈で述べてきたのは、この曲の歌詞に着想を得て、リフレインによる楽曲を制作中であるからです。

僕は今まで、音楽の不可逆な聴体験を意識して、時間感覚の浮遊をテーマに制作してきました。

例えば、カブトムシ 1st アルバム「色即ラグーン」に収録された
「哀哀愛」では

頭の中で知っている 君の匂い
広い宇宙に一人 一人だけのぼり落ちる

から始まります。

2番では

未来の中で知っている 君の匂い
昨日の君が知っている 僕の匂い

ときます。

ここでは
1番「現在」
2番「未来」「昨日」
の3つの時間が存在するのですが、僕は、全ての時間において君の匂いを知っているのに、君は昨日の時点でしか僕の匂いを知らない。
しかも、匂いは知っているかもしれないが、その匂いが僕であることは知りません。
(例えば僕が電車内で屁をこいたとして、目の前の女の子が顔をしかめたとしましょう。僕は彼女がこの匂いを認識したことを認識しますが、彼女はそれが僕の匂いであることは分からないかもしれない。)

だのに、僕は現在も未来も君の匂いを覚え続ける。
「香水」という小説を思い出しますね。

変態です。

こういう特殊な時間装置を利用して、想像に余白を持たせようと考えていました。

現在制作中の楽曲では、
同文反復と、それが繰り返される過程でのライムの変化。
を軸としています。

要するに、繰り返していく中で、ライムの響きを踏襲した別の言葉が出現してくるという、リズミカルなアイデアです。

そしてもう一つ、意識していることは、

「唐突な感情吐露」

無感情な繰り返しの中に、突然意思表明みたいなものが挿入される。
この落差を好んでいます。

新曲について述べるのはここら辺にしておきましょう。
歌詞って、面白いですね。

楽しみにしておいてください。

次回からは、スロウコアに関することや、メロコアというジャンルに関するブログの紹介、女性ボーカルバンドのディスクガイド、自販機本「Heaven」の内容紹介など、等面白い文章を頑張って執筆していく予定ですよ〜〜。

絶対、チェック、よろしくねん。










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