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日記 :『gymnopédie』との邂逅

 「こういうことってあるよね」程度の話なので、そのくらいの温度感で読んで欲しい。


safmusic - You are not rockstar, I'm not rockstar

 先日、safmusicにハマった。今年の8月に出たアルバム『You are not rockstar, I'm not rockstar』をヘビロテしていた。
 ロックバンド・No BusesのフロントマンでもあるCwondoをフィーチャーした『Tan town』や、「bonus track」と銘打ちながらアルバム本編と不可分な『鳳城』などが個人的なお気に入りだった。しかし4曲目の『gymnopédie no.1, crush』がどうにも引っ掛かって、喉元を通らない。
 というのも、この曲の後半に登場するメロディが何だったか思い出せないのだ。この印象的で哀しげなメロディ。何かのサンプリングであることは明白なのだが、元ネタがどうしても出てこない。
 こういう時はモヤモヤするが、分からないのだからしょうがない。いつか分かることを信じて置いておくしかない。


Lil Soft Tennis - i have a wing

 その少しあと、Lil Soft Tennisにハマった。同じく今年の8月に出たアルバム『i have a wing』を繰り返し聴いた。
 すると、このアルバムの最後の曲『Girl』にまたあのメロディが出てきた!この曲におけるサンプリングの仕方は、safmusicとは少し違う。
 safmusicは、素材をそのまま生かしたようなサンプリングをしている。ピアノのメロディをLo-fiな音質に落とし込み、近未来的な効果音を足すことで、より退廃的な哀しさを演出している。さらに5曲目『eyes (feat. fox4G)』のイントロへの自然な足掛かりにしている。
 それに対しLil Soft Tennisのサンプリングでは、このメロディをきっかけに椅子の軋む音、ボーカルハーモニー、別のピアノリフ、軽快なドラムが足されていき、冒頭4小節のみを繰り返す元のメロディの存在感はいつしか薄れて、アルバムの最後が美しく締めくくられる。
 共通しているのは、それまでの音が一度すべて止んだ数瞬後、唐突にこのメロディが始まるという点。どちらのサンプリングにもそれぞれの良さがあると言えるだろう。


 問題は、サンプリング元が未だに分からないことだ。
 私は血眼で探した。ハヤトの野望の『Cities Skylines』の最終回、その終盤の汚水に街が沈むシーンでこの曲が流れていたから、きっとどこかのサイトのフリーBGMなのだろう。

 「BGM フリー 悲しい」とか「BGM フリー 終末」とかのワードで調べてみるが、一向にそれらしいのが見つからない。
 結局また諦めた。


 また後日になる。私は普段、HIPHOPや電子音楽を好んで聴くことが多いのだが、たまにクラシックを聴きたいときもある。お察しの通り私は全くクラシックには明るくないのだが。
 その日、Apple Musicで適当なワードで調べると、アリス=紗良・オットの『ナイトフォール』というアルバムが出てきた。
 ジャケットに惹かれて頭から再生した。

アリス=紗良・オット - ナイトフォール (2018)

 このアルバムの7曲目『No. 1, Lent et douloureux』、これじゃん!!!!
 もうこの瞬間の脳汁はやばい。探していたメロディに思いもよらぬところで出会った快感。

 曲名をコピペして調べると、この曲はエリック・サティという作曲家が1888年に書いた『Gymnopédies (ジムノペディ)』というピアノ独奏曲の第1番であることが分かった。
 なぜかフリーBGMだと思い込んでいた自分。考えてみれば、本当にフリーBGMだとして、そのサンプリングをサブスクで配信できるわけがない。著作権の切れたクラシックの楽曲だと推理するのが妥当なはずだった。
 というか、safmusicの問題の曲のタイトルを見たら『gymnopédie no.1, crush』(ジムノペディ ナンバーワン、クラッシュ) と書いてある!最初からこれを検索していればよかったのだ…。アホだ…。


 っていう。音楽リスナーあるあるでした。

 ちなみにこれと似たあるあるに、HIPHOPやダンスミュージックで聴き覚えのあるプロデューサータグに出会い、「うわ~なんだっけ?」とモヤモヤ考えて、そのもう一方の曲を思い出せた時の快感。というのがある。
 音楽を聴いていて二番目に気持ち良い瞬間である。

エリック・アルフレッド・レスリ・サティ (1866-1925)

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