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来たるべきWebカム世界で求められるカメラとは

Zoom等によるビデオ会議が急速に普及しつつある今、デジカメ好きに静かな波紋を起こしている現象がある。それはビデオ会議の際、Webカムの代わりに一眼カメラを使うというハックである。

ここ最近、海外で勤務するガジェット系YouTuber drikinさんが連日、テレワークのTipsを紹介する動画をアップしていたが、ついにこの回である一線を超えた。それはソニーのフルサイズミラーレス一眼α7IIIをHDMIスイッチャーのAtem  miniを経由してWebカムとして使用したのである。おそらくある程度のカメラ好きならなんとなく夢想していたが、その用途としてオーバースペックだとほんの冗談程度にしか考えていなかったことを実現してしまったのだ。その余りにも鮮明すぎる映像に視聴者は衝撃を受けた。そしてその映像が与えるインパクトは趣味物の道楽だけでなくWeb会議に実際に良い効果を与えるのではないかと真剣に考えはじめたのである。

α7 IIIがAtem miniというプロ向けのキャプチャーボード経由でないとwebカムとして使用できない状況に、drikinさんがUSB接続で直接PCに挿すだけでWebカムになるミラーレスカメラが必要なんじゃないかな、という提言に反応したのが、なんと、国内レンズ、カメラメーカーSIGMAの山木社長。実はSIGMA社が販売するSIGMA fpにはまさしくUSB接続するだけでWebカムとして使用できる機能が備わっていたのである。

このやりとりにかねてからSIGMA fpと親睦性の深いnote界隈でSIGMA fp愛好者クラスタが反応。各々が手持ちのSIGMA fpをPCに接続しはじめる現象となった。そしてその反応の一つのまとめとして下記のエントリが発表された。

外出自粛とWeb会議の急速な普及により一眼カメラの役目が大きく変わるのではないか、という指摘は、カメラ好きの道楽という贔屓目を差し引いても大いに検討すべき着目点だと思える。

これだけセルフィーが浸透した時代にWebカムのローアングルから写された歪んだ自分の顔を好む人間がいるだろうか。目線の高さにミニ三脚を立てて、歪みの少ないレンズで写されたきれいな自画像をパブリックに向けて発信する。古来の肖像画から写真館、写ルンです、プリクラ、写メ、インスタ映えとセルフイメージの美醜に囚われてきた人間にとって、それは抗えない性ではないだろうか。

各カメラメーカーはのんびりしていないで、この歴史的転換点を機に早急に今後発売するカメラ全てにPCにプラグインするだけでWebカム化できる機能を導入し、大々的にアピールするべきだと思う。

webカムでは到底たどり着けない画質と、複雑になりすぎてむしろカメラ単体としては使用できなくなったスマートフォン(スマホ単体でWeb会議を完結させることもできるが、ワークフロムホームはあくまでPCを母艦として成立するシステムである)を横目に、一眼カメラそれ自体の優位性を持って、でかいセンサーから弾き出す映像でライバルに優位性を見せつけていくチャンスなのだ。

早計ではあるが、以下にこれからのWebカム化していく世界に向けて、旧来のデジタルカメラがどのように進化していくべきか考えたことを書く。

・PCにUSBで接続するだけでWebカムとして使えること
すでに書いたが、現在これができるのはSIGMA fp(2020年4月現在レンズキットで24万円)だけである。各メーカーは、顧客が高額なカメラを買い、他社のキャプチャーボードを買い、さらにやや複雑な使い方を覚えるのを待っていてもこのニーズに応えることはできない。SIGMA fpと同等のWebカム機能を持ち、つなぐだけで最適な配信画質が設定されるような、限りなくオートに近いWebカムモードが実装されたカメラが待たれる。

・センサーサイズがコンデジより大きい、最低1型センサー以上であること
webカムやスマホとの差をつけるのが画質である以上、せめて1型以上の大きいセンサーがほしい。スマホですらフラグシップ機では1型に近いサイズのセンサーを搭載してきているのだから、とにかく物理的な優位性で殴らないことには始まらない。

・自撮りできるチルト液晶が上方、あるいは横方向に展開すること
基本的にPCモニターで映像を確認するため、自撮り用液晶は必要不可欠ではないかもしれない。ソニーの初代RX0のように思い切り割り切った形にしてしまうのもありかもしれない。それでもⅡには自撮り液晶が備わっている。接続前のセッティングのためにもあった方がもちろん便利である。

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(話はそれるがRX0シリーズのコンセプトこそ、この用途に適しているのではないだろうか)

またデザインで注意すべき点として、下方向に展開するチルト液晶は三脚と干渉してしまう。そうなるとモニターがバリアングルで横方向に展開してこちらを向くか、あるいは上方向に180度フリップする必要がある。上方に展開する場合、邪魔になるのは伝統的な一眼レフの特徴、ペンタ部分である。

・配信用カラーモードの充実
Web会議では、動画のように後から健康的な肌色をグレーディングしている暇はない。富士フィルム、SIGMAのようにJPEG撮って出しでも鑑賞に耐えるようなカラーモードを持っているカメラメーカーは強いと思う。

カメラ好きの妄想は止まらないが、素人考えはこれくらいにしておいた方がいいだろう。今現在、各カメラメーカーの開発者がワークフロムホームしながら、これからの未来のカメラを設計しているのを期待している。


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