朋友よ、冷たい朝に眠れ
「アルファさん、サーセン、遅くなりました!準備に手こずって!」
駅前。手を振りながら駆け寄ってくる、柄の悪い坊主頭は牧ちゃん。俺の友達だ。
◆◆
「つーか、アルファさん、ネットだとイキってた癖に、いざ会うとフツーに普通のオッサンっすね!」
牧ちゃんが豚足を頬張りながらゲラゲラと笑う。
「うるせえな!そっちこそガラ悪過ぎでしょ!」
俺も負けじと麻婆豆腐を流し込み、店員におかわりを頼む。
二人の間に積まれた青島ビールの空き瓶は、もはや山だ。
牧ちゃんと俺は友達だ。会ったのは今日が初めてだ。
「じゃあ、アルファさん…そろそろ、初めますか」
「飲み足りないけど、そうですね」
牧ちゃんが、スポーツバッグから拳銃を取り出す。自分の分を二挺。俺の分も二挺。俺たちは中華円卓を蹴飛ばし、立ち上がる。この店は黒旗会どものシマ。店員も全員奴らの一味だ。
牧ちゃんと俺は友達だ。
今日初めて会って、今日初めて飲んで、たぶん今日一緒に死ぬ。
(続く)
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