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精神力と礼節


これはヤバイぞ!

駅前で編集者の友人と食事をしての帰り道。
駅から家へは徒歩約30分くらいの途中、10分くらいを過ぎた辺りか。

ギュルルルル~~~。

突然お腹の調子が!
「こ、これはヤバイぞ!」
猛烈な便意!
しかも感じからしてレイドバック(ゆるい)系に間違いない!
お酒を飲んだし、たくさん食べたし、季節的にもまだ夏じゃないけど薄着のくせに夜は少し肌寒いという、お腹が冷えてもおかしくない気候だし。
緩いということは、通常よりも我慢できる時間が短くなるということ。
これはヤバイ感じしかしないじゃないか。
帰路を急いだのですが、すでに歩を進めること自体がまるで修行のような生き地獄。
僕の精神力はすでに試され始めていたのです。

蘇る暗黒時代の恐怖

思い返せば、学生の頃はあんなに悩まされた便意との戦い。
僕らの小中学生の頃なんて、学校でウ○コなんかしようものなら、まるで犯罪者のように扱われた時代です。
「あいつウ○コしてたらしいで!」
噂は一瞬で全校に広がり、挙げ句の果てに「ウ○コ」というあだ名で呼ばれ、下級生からは「ウ○コ先輩」と呼ばれることもあるくらいの暗黒な時代だったのですから。
大人になって、しかも、早朝にラッシュで揺られながら通勤しないといけないような会社勤めもしていないし、肛門の自由を充分に謳歌出来る日々を送るようになってからは、そんなに便意を我慢することも少なくなっていました。
久方ぶりの突然ののっぴきならない猛烈な便意。
家まで直線距離的にあと1.2kmくらいの距離なのですが、家の便器までの距離のなんという果てしなさ。
地面を見つめ、一心不乱に歩み続けるアロさん。
しかも僕はかなり立派な痔キーパーで、肛門の戸締まり戦闘力は常人の約半分に満たない感じなのです。
この状況はかなりのピンチだと脳が狼狽すること著しいわけです。
色んなことを思います。
いいおっさんが歩きながらタレるのか?
僕は小学校1年生くらいの時に、2時間目から放課後まで我慢し続けたウ○コを、家の玄関前の門のところで堪えきれずに垂れてしまったことがあるのです。
そんな幼少の頃の経験から、一瞬でも堰(せき)をはずしたら、出切るまで止まらないウ○コの習性をよーく知っている。
今日の短パンは薄いベージュだし、漏れたウ○コの痕跡はハンパないぞ。
短パンをおびただしく汚しながら、股の裾から容赦なくウ○コが出切るまで流れ落ちるぞ!
小学1年生のように泣きながら立ち尽くして、ウ○コを裾から出尽くすまでタレ流しているおっさん。
そしてそれが僕。
Noooooooooooo----------------------------!!
オーマイガッ!
なんというこの世の終わりのようなイメージ!
あり得ない! それは絶対にあり得んぞーーー!
ヌオオオーーー!

突発的災難

とにかく僕は必死の形相で歩み続けました。
しばらくすると便意というものはグラフでいうところの平坦な部分に差し掛かります。
その時の精神状態や身体的な運動のリズムを必死でキープしようとするものです。
横断歩道が運良く青信号。
「よし!立ち止まらず調子をキープ出来るぞ!」
リズムをキープしつつ、余計な雑念を払いながら横断を始めた時、なんと信号無視の車が突っ込んできたのです!
間一髪よけたので事故にはなりませんでしたが、車はそのまま猛スピードで行ってしまいました。
僕はとっさのイレギュラーな動きと突発的な危険回避にびっくりしたことと、その車への怒りで便意が激しく復活。
あやうく膝をつきそうになるくらいの猛烈すぎる便意だ。
顔がゆがむ!
姿勢も歪み、内股で手がペンギンの真似をする時のような格好になっている!
偶然その瞬間を見ていたウーバーの兄ちゃんが僕の姿を見て心配してくれて
「大丈夫ですか? 当りましたよね? 怪我されてますよね?」
そういって駆け寄って来てくれたのですが、さすがに
「いいえ。ウ○コなんです」
とは言えずに「だ、大丈夫です」と鬼の形相(我慢のせい)で呟き、びっこを引くような動きでその場を離れました。
「あ…後 100メートルなんだ。。。。」
最後の力を振り絞って最後のコーナーへ!

しかし重ねて言うが、この戦いを幼少の頃から知っている身としては、常に最後のコーナーはこの壮絶な戦いの最大のクライマックスであることは熟知の域に達してはいました。
が、しかし。覚悟はしていたけど、その覚悟も虚しくやはりここで歩みが完全に止まってしまった。
カスい戦闘能力しか持ち合わせていない我が肛門が、なんとか鬼の形相で嘔吐物を我慢しているような状態で立ち尽くすこと3分。
その怪しげな佇まいはここで警官に会ったら間違いなく職務質問の対象だったろうと思う。
そして職質中に完全終了となったに違いないわけで。。。。。

しかし、その後少しだけ持ち直し、あとは内股と肛門筋に全精力をつぎ込みながら、崩れ落ちそうになりながらも、競歩のような歩みでなんとか家に到達。
こんな時はいつも不思議と鍵もなかなか刺さらなかったりするのだが、玄関が開いた勢いで靴のままトイレに駆け込み……パンツを下げると同時に大噴出!!
セーフ!!!!
至福の排泄の瞬間。
僕は心の中で「ありがとう!ウーバーの兄ちゃん。君はナイスだ!」と、
極限の状態とはいえ、心配して声をかけてくれたウーバー兄さんへのお礼の言葉を発せなかった自分を恥じながら、心の中でようやくお礼が言えました。
人はあらゆる時間と場所で、常に恐ろしい戦いを強いられる。
そして常に精神力を問われる生き物なんです。
とはいえ、そんな中で礼節を失ってしまった僕は、まだまだなんだな。
精進しようと思います。



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