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動物の手術と痛み

動物が痛みを感じるのか?

こんな当たり前のことに対して「No!」という時代が、それほど昔ではない事に多くの飼い主さんは驚くだろう。

今ではほとんどの獣医師がその事に対して「Yes!」といい、当たり前のように手術に鎮痛薬を使うようになったが、それもまだ20年もたっていないのではないだろうか。

実際、悲しいことに今、多くの動物病院で手術や術後に鎮痛薬が使われているが、そのほとんどがNSAIDsというタイプの鎮痛薬で、これは人でいうところのアスピリン(商品名はバファリンですね)やジクロフェナック(同じくボルタレン)のような系統の薬で、人であればこれらの薬だけで手術や術後の痛みを取るなんて到底ありえないし、鎮痛としては全然足りないということは、医療関係者ならすぐにわかると思う。

ただ、残念なことに動物の医療現場ではこれらの薬だけを鎮痛で使う病院が大半で、多くの獣医師がそれで鎮痛をしていると思っているという悲しい現実がある。

実際はこんなものでは手術の痛みを取ることはできない。

では鎮痛が弱いとどのような問題が起こるのか?

手術中の鎮痛が弱いということは、手術中にも痛みを感じるということになり、麻酔の効きが悪くなる。そのため、さらに麻酔の濃度を上げるようになるから、麻酔の量が増えるということはなんとなく想像できると思う。
でもそれだけじゃない。
麻酔の量が増えるということは、麻酔のよる有害な反応も出やすくなるということで、血圧が下がりやすくなったり、呼吸の抑制が強くなったり、覚醒というが麻酔の覚めも悪くなる。

つまりちゃんとした鎮痛をする事は、動物に痛みを感じさせなくするだけでなく、使用する麻酔の量を減らし、麻酔の安全性も上げているのだ。

逆にいうとちゃんとした鎮痛をしていない場合、動物たちに痛みを感じさせるだけでなく、麻酔の安全性も落としている事になる。

ただ残念な事に、そこまで考えている病院は本当に一握りである。

この現状を変えていくためには、飼い主さんにこれらのことを知って欲しい。そして、これらの基準で手術をする動物病院を選んで欲しい。
そうする事で、獣医師が痛みに対してもっともっと真剣に考えるようになると思っている。

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