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東京を流れる川たちのアルペジオ(小沢健二ライブ)

小沢健二さんのライブに行ってきました。

2年前の同じ頃、の、さらに1年ほど前。活動のスパンや形態そのものが不定期なオザケンのライブといえばチケットはもちろん争奪戦。東京以外にも土日に開催される名古屋などのチケット抽選に申し込むも、とれたのは東京3日間公演のうちの1日だけだった。
1994年以来、オザケンが東京でやる公式のコンサートには全て行っている。だから今回は1日しか行けないというレアな状況だった。
それがさらにレアな、未曾有の状態になるとは…。

2020年にアナウンスされた公演の延期。「一年後にチケットに書いてある座席に来てください」世界中のアーティストが公演を中止する中、小沢健二は一年後の再会を約束してくれた。その時はまだ、一年後がどうなるかなんて誰もわからなかった。そして2021年には更に一年延期のお知らせ。さすがに2022年にはどうにかなっているだろうという微かな期待。

そう、オザケンのライブに行ける日は「どうにかなっている日」なのである。

そうして2年間、パスポート入れに入れておいたチケットを握りしめて「有明ガーデンシアター」へ向かった。2020年にオープンした新しいホールだ。りんかい線の国際展示場駅の駅の裏、というと便利そうな響きだが、実際は細い階段と歩道を大勢の人が列になって陽射しの強い夕方を歩かなければならない。公演後は混雑を避けるため、と更に遠回りさせられ汗だくになって歩道橋を上って下りた。

ホールの中はというと武道館サイズで4階席までバルコニーがあり、どこから見てもステージがよく見渡せそうな構造だ。武道館のようにステージを360度囲んだ座席ではなかった。そして4階建ということで、上層の座席の人はエスカレーターを乗り継いでいかなければならないのは国際フォーラムのようだった。

座席について、静かに回りを眺める。どの人もコロナ禍の2年間で様々なことがあったのだろうと思う。それでも「オザケンのライブを心待ちにしていた」という共通点がある。不思議な無言の連帯感。

いよいよ客電が落ち、ステージ上に出演者が現れる。真っ暗なステージにピンクやオレンジやグリーンの蓄光のアフリカや南米の民族衣装を着た出演者たち。

アフリカ人奏者がコンガを叩き始める。ドラマーがリズムに乗っかる。バイオリンが一人、また一人と登場し、メロディを奏でる。エレキベース、ギター、トランペットと、どんどん音楽が分厚くなっていく。客席は手拍子。チェロにハープにキーボード、サックス、ビブラフォン、と増えていき、それらを束ねる指揮者登場!(服部孝之さん!)
最後にギターを背負った小沢健二登場!!

毎回、オザケンのライブは本人の休憩がほとんどない。一人でずっと歌い、モノローグを語り、ギターをかき鳴らす。音源では重ね録りしている部分も一人で歌い切る。なんという体力!

今回は一つの曲を切り取って、他の曲の間に入れて、昔書かれた詞を今の自分たちが眺めたらどうなるだろう?といった試み。ひとりの変わらない意志が昔と今を違和感なく繋げる。

最後に歌われた「そして時は2022年、全力疾走してきたよね」で始まる「彗星」。本当の歌詞は2020年だ。

全力疾走してきたよね。

このたった一行の言葉が、全てを物語る。
誰もかれもが大変だった。まだ大変だ。
でも誰の現実も前に進む。

それを感じた最後の曲。

素敵な時間をありがとうございました。


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