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第三十四回「ロックタクシー」

先日、仕事の関係で終電の逃してしまいタクシーに乗った。
ギターを自分より先に乗車させてから運転手さんに自分の家の住所を告げタクシーは夜の街を走り出した。

走り出して間も無く運転手さんは俺に「お客さん今日はライブの帰りですか?」などと質問してきたので
「ええ。事務所の代表の誕生日イベントで歌を歌いました」と言った。

続けて運転手さんは「どんな音楽をやっているんですか?」と訊いてきたので俺は少し声を大きく「ロックンロールです」と言うと運転手さんは更に声を大きくして「おお!!ロックンロールですか!ロックンロールが帰ってきた!」と興奮気味に話していた。

どうやら運転手さんは大の音楽フアンで自分でもビンテージのギターを所有し仲間たちとブルースなんかを演奏していたらしい。

それから車内ではロックンロール談義となった。
ストーンズの話からオアシスの話。清志郎や永ちゃんの話。

色んなラブとヘイトの話をしてタクシーは走った。
ロックンロールサミットでのあのバンドのライブがやばかったとか
ラジオでこんなバンドを聴いたとか。

まさか、俺が青春時代にすることが叶わなかた”仲間とのロックンロールの話”をこうして見知らぬタクシーの運転手さんと話すなんて思わなかった。

まだ話し足りなかったがタクシーは自宅付近に着いてしまいお金を支払った。
すると運転手さんは
「絶対にロックンロールやめないでくださいね!KEEP ON ROCK`N`ROLLで!!!」と下車した俺に言ってきた。

その言葉に俺も興奮して深夜の自宅前で雄叫びをあげてしまった。
ロックンロールには時代も性別も宗教も文化も学問も思想も思考なんてどーでもよくて「ただただデカい音を鳴らして踊る」というなんともチープなその中にある最大の愛がテーマなのだとこの時また俺は再確認させられたのだ。

そして、きっとあの運転手さんはロックンロールの天使か何かだと俺は信じてしまったのだ。




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