#11 思い出の数だけ増えるシワ

このお話は私たち近畿大学山縣ゼミ生がアパレルブランド「オールユアーズ」をテーマに書き上げた「オールユアーズの物語」である。オールユアーズと様々な価値観を持つ一人ひとりの物語を紡ぎ出す。

今回は、「ハイキックジーンズ」を着て生活する女性を描いた物語である。

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春先の柔らかい太陽の光が窓から差し込む。
眠い目をこすりながら隣で眠る彼を起こす。

「朝やで〜〜!今日はパン屋さんまでお散歩するって約束したやん起きて〜!」

まだまだ起きる気配のない彼を横目に私はベットから立ち上がった。

付き合い始めて4年、同棲を始めて早1年。
大学生から付き合いだした私たちもだいぶ社会人としての生活に慣れてきた。
それでもやはり、月曜日から金曜日まで働き詰めの毎日は、自分が思っている以上に体を疲弊させている。

そんな社会人カップルの私たちの毎週の楽しみは、週末の朝のお散歩とたまに行く旅行。

昔から旅行が大好きな私たちは、
「次の旅行では〇〇に行こう!」が口癖だ。
来月末に旅行に行くことだけは決まっているものの、行きたい場所が沢山ありすぎてまだ目的地は定まっていない。

「お散歩しながら、旅行の予定も立てたいのになぁ」
そう呟きながらいつものジーンズに履き替える。

このジーンズは、大学3回生の付き合いたての頃初めて貰ったお揃いのプレゼントだ。

「このジーンズ、履けば履くほど味が出てくるらしいで!これ履いて一緒に長い時間過ごしていくの楽しみやな!」

この人そんなこと言えるんだ、という驚きと嬉しさがあまりにも大きくて、その時の雄飛(ゆうと)の照れ臭そうな笑顔を今でもこのジーンズを手に取るたびに思い出す。

このジーンズは、ジーンズとは思えないほど履き心地が良くて動きやすい。
お散歩にはもちろん、飛行機に乗る時、電車に長い時間揺られる時、車でどこまでも遠くへ出かける時どんな旅先・どんな場面でも、私たちの足元は決まってこのジーンズだ。

沢山の景色を一緒に見て、何度も何度も洗濯されてきたこのジーンズは、4年前とはまた違う表情をしている。シワや色褪せた箇所の一つ一つに思い出が詰まっていてそんな部分さえ愛おしい。


「おはよう!なんで笑ってんの?」
雄飛がやっと起きてきた。

「なんもないよ!はよパン屋さん行こ!」
笑ってそう返す。

「これからも2人で沢山色んな思い出を作って一緒に時を重ねていこな!」
そう心の中で呟きながら、今日もジーンズに足を通した。

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〈今回登場したプロダクト〉

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