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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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筑波大学コンテンツ応用論2019:伊藤智彦監督「SFアニメの近未来」——ツイートから講義内容を再構成する試み

2019年11月26日、筑波大学の落合陽一先生@ochyai)の講義「コンテンツ応用論」(@ochyaiL)において、伊藤智彦監督(@tomohikoito0218)がゲスト講師として登壇され、「SFアニメの近未来」というタイトルで講演がおこなわれました。本noteは、当日の「#コンテンツ応用論2019」タグのついたツイートをもとにして講義内容を推測してみたメモになります。

「コンテンツ応用論」関係者の皆様(落合先生、伊藤監督、TAの皆様、受講生の皆様、その他関係者の皆様)へ:本稿は、「コンテンツ応用論」や筑波大学とは無関係の一個人が、伊藤監督作品のファンという立場から、ツイートされていた講義内容に非常に感銘を受け、それを勝手にまとめたものになります。Twitterハッシュタグによる講義内容の拡散を推奨するという講義のスタイルから、これらのツイートは公知の内容であると判断しており、公開の可否については特に関係者の方々に直接確認を取ったものではありません。しかし厳密には、授業料を払っていないモグリの学生と同じ立場であることは否定できません。もしも問題があるようでしたら、コメントかTwitterでご一報頂ければ公開を控えます。

この講義は受講生が「#コンテンツ応用論2019」というハッシュタグで30ツイート以上を行うことで出席扱いになるというシステムになっており、毎回数千ものツイートによって講義内容や感想が垂れ流しで実況されています。それぞれのツイートの内容は、講師の発言なのか学生個人の感想なのかはたまた無関係の内容なのか判然としないものも多く、さらには個人のフィルタを通している以上、独自の解釈や不正確な切り出し、聞き間違いなどがどうしても一定量含まれてしまっているのですが、何しろ数千ツイートという数の暴力によって、「多くの人に独立に呟かれている内容は恐らく講師の発言だろう」という統計的な推測はある程度可能だったりします。そんな量子コンピュータ的な(ほんとか?)イメージで、伊藤監督の話をできるだけ再現してみようというコンセプトです。

もちろん、再構成の信憑性は正直にいってかなり低いものです。この試みはいわば、ある本の書評をシュレッダーにかけて窓からばら撒き、風に乗って飛んできたわずかな断片から元の本の中身を推測するような、あるいはInstagramに載った1枚の写真に対するコメントだけを見て元の絵画のディテールを想像するような、そんな無謀な営みに近い。特に後半の対談・質疑応答は、伊藤監督の発言なのか落合先生の発言なのかもはや判別不能だったりします。ですので、くれぐれもこれをそのまま「公式発言」として一字一句受け取るようなことはどうかお控え下さい。しかし数千ツイートの総体から、黎明期のフォトグラメトリのように、うすぼんやりと立ち上る何らかの輪郭は感じ取れるのではないかと期待します。あくまでそういうものとして受け取って頂ければ幸いです。

当然ながら私はこの講義を直接聴講したわけではなく、受講生の方々の脳内と私自身の脳内という2重のフィルタを通してディテールが失われた情報になりますので、もしも不正確な点や間違いに気付いた方がおられましたら、些細な点でも構いませんのでコメント欄かTwitter(@alltale2037)からご連絡下さい。また同様に、公開に関して問題があるようでしたら遠慮なくご一報ください(ちょっとギリギリトーク的な部分はぼかしました)。

また、前半は『劇場版ソードアート・オンライン オーディナル・スケール』(SAO OS)についての話になります。私は残念ながらまだSAO OSを観ていません(どうせなら第1期から全部観たいと思っているので、そこに至るまでのハードルが高い)。ですので未視聴ならではの勘違いや的外れな部分が多々あるかと思いますが、何卒ご容赦下さい(ご指摘頂ければ修正します)。いつか観覧した暁には、それを踏まえて再編集したいと思います。

* * *

タイトル:SFアニメの近未来

1.自己紹介
2.アニメ監督の仕事
3.作品事例紹介
4.映画のメソッド
5.終わりに

右下に自画像あり

フィルモグラフィ

・DEATH NOTE(演出)
・サマーウォーズや時をかける少女で細田さんの助監督
・世紀末オカルト学院(2010年)
・ソードアート・オンライン(2012年)
・銀の匙 Silver Spoon(2013年)
・ソードアート・オンラインII(2014年)
・僕だけがいない街(2016年)
・劇場版ソードアート・オンライン オーディナル・スケール(2017年)
・ハローワールド(2019年)

マッドハウスにいた。監督になれなかったのでA-1 Picturesに移籍した。

肩書はアニメーション監督。絵描きではない。

監督とは何か
1.クオリティの責任を取る人。
(監督はクオリティの責任、プロデューサーはお金周り(収益)の責任。
中身は監督、プロジェクトはプロデューサー。
作品の出来不出来は監督が責任を負う。プロデューサーは赤字にならないように)
2.決断を下す人。OKを出すのが仕事。
だから絵が描けなくても監督になれる。

制作の流れ
川原さん

SAO企画書

制作過程

プリプロダクション→プロダクション→ポストプロダクション

プリプロダクション:企画、脚本
プロダクション:絵コンテ、作画、背景、仕上げ、撮影
ポストプロダクション:編集、アフレコ、ダビング、フォーマット編集

プリプロダクション(こういう内容をやりたい)
文字情報だけの段階。シナリオの書き直しは10回以上

プロダクションで絵を描き始める
絵コンテは絵というよりどういう場面かという情報を渡していく。絵コンテを元に絵を描いていく

それらを編集して音声をつけるのがポストプロダクション。

基本SHIROBAKO。

アニメ業界はみんなスケジュール守らない。破るもの。
色がついた状態でのアフレコは少ない。

監督は全ての工程の1個1個をチェックする。

監督の仕事:
いろいろなセクションを取りまとめる
1000個以上のバラバラの素材をまとめてひとつの映画にする。
人間関係の取りまとめ(この人とは二度と仕事したくないという人を飲みニケ—ションでなだめる。)

作品例1:劇場版ソードアート・オンライン オーディナル・スケール

解説
VRゲームから出られなくなってしまいそこから脱出する

まずはお題目を決める
・TVシリーズの総決算
かつ、
・(ジャンプアニメみたいな番外編ではなく)本筋に繋がるオリジナルストーリーを作る(ファンのツボを考えて、正史のタイムライン上での続編にもつなげる)

制作において原作者からアイデアをもらった。
・AR(当時ポケモンGOは普及していなかった)を使ったリアルな東京でのバトル。
・100層のボス
・主人公(キリトとアスナ)のドラマ

制限が多いARをどう描くか。それまで描いてきたVRよりもARを面白く描けるか。
フィールドワーク(HADOやポケモンGOなど)近いものをやってみた。
デバイスの開発:オーグマーを実際に作る。(A-1 Picturesが)SONY系列だったので、せっかくなのでちゃんとしたプロダクトデザインとしてSONYにお願いした(複数案の遷移を紹介。エギルの同人絵でコラ画像?)。眼帯っぽいデザインから段々簡略化して最終的な形にもっていく過程。網膜認証できるように。本編でVR機器も兼ねるという設定を守るために、バンドで後頭部を囲うデザインに。センサー類の配置によりデザインが変わる。バッテリーがどうなっているかはわからない。

課題・目標
作品で達成したいポイントを明確にする、進むべきゴールを設定するのも監督の仕事。
三本柱を決めて、忘れないように机に貼る。一度決めたことはひっくり返さない。
1.ドラマ(何が大切か)。主人公の未来設計から翻って記憶の話
2.キャラクター(キリトさんTUEEEE)恥ずかしがってはいけない。読者アンケートも参考に。
3.ビジュアル(VRに負けないARのゲーム感)

作品例2:HELLO WORLD

ネット情報のあらすじを監督が読む。

お題目:3DCGを使ってSFをやりたい(2015年)
京都、近未来、仮想世界(2017年3月にこのキーワードにたどりつくまで2年。野﨑さんから?ここまでかかったのは企画会議でポシャった。)
デザイン修正と達成したい目標を決める

SF特有の大きな嘘=量子記憶装置アルタラ。それ以外はできるだけリアルに描く。
アルタラは野﨑さんが考えてくれた。
SFのフィクションの部分。量子コンピューターではない。なんでもあり。
白くて丸かったら何かすごいことができそう(黒いとGANTZになってしまう)。
寂しかったので外側に冷却装置の覆いをつけた。寒いのでドームの中の息が白くなる。
アルタラセンターの詳細な設定を作り込むことが大事。本編に出ない所まで考える。モニター配置と各席での業務内容、モニターの監視項目(アルタラ庫内温度:絶対零度、ストレージ量)、研究者同士の会話、センターの組織体制(ハードウェアの稼働監視、ドローンの管制、ソフトウェアの研究等)や部門数まで考える。モニタは原子力関連を参考にした。管制室は宇宙関連が近いと思い、NASAやロシアのミッションコントロールセンターを参考にしている。ドローンのライブ映像、飛行ルート、稼働状況の画面。「タスクマネージャーの超すごいやつ」。

リアルな未来設定。
・スマートシティ化計画。
・5G後のスマホアプリ。
・2027年に実現可能なこと
リアリティは没入するために大切。未来未来しすぎない(空飛ぶ車など)。キャラクターの肌感覚を考えて、今使っているものの延長上を考える。
Wizの初期構想での名前候補(Letterなど)。原案にアスナと直葉の絵。プライバシーが緩くなりつつあるのを考慮してさらに進めてみた。位置情報とメッセージ。Wizの仕様書もある。
Pluuraの企業理念も決まっている。
「アンパンマンワールドにお金はあるか」(世界観の作り込み)

スマートシティ:ドバイのSmart Palm(フリーWiFiスポット)を真似たホットスポット。景観条例を意識した灯籠型のデザインと配色。充電、検索、広告、監視カメラ、街灯、AED(位置も考えて)などの機能。バス停、駅、ホテル入り口など、観光客が使えるように配置してある。狐面はホットスポットから湧いてくる。
自動運転:碁盤の目との親和性。ジドウ優先レーン。バスはすべて自動運転に(自動運転ステッカー「AIが運転しています」が貼ってある。運転手を描くのがめんどくさかったわけではない)。電線の地中化(京都中心部は既に実現)。自動駐車。あと何mでどっちに曲がります表示。
出てくるコンビニは全てローソン(八坂神社前のローソンの写真)。景観条例にも配慮。ローソンが製作委員会なので、セブンもローソンに書き換えた(編者註:恐らく四条堀川交差点のセブンイレブンと思われる)。

京都を舞台にする必然性:
・街並みの再現にあたり、近未来でも景観の変化が少なそう。アニメ制作スタッフに優しい街。
・街全体をアルタラで記録するのには山に囲まれた盆地が望ましい
・野﨑さんの前作「know」は京都が舞台で、京都に詳しくロケハンも済んでいる。「know」の前日譚的に見えれば良いという淡い期待も。
・グラフィニカ支社が京都にある。
ただし京都弁は使っていない。京アニ作品も京都弁を使っていないのでセーフ。
協賛会社の京都マルイがまさかの撤退で未来予測が早々に外れてしまった。なぜ言ってくれなかったのか。身内に裏切られた気分。宇治川花火大会も。

3本柱:
1.ドラマ:2人の自分の成長物語、人生に踏み出す、自分2人のバディもの
2.キャラクター:3Dだけどヒロイン可愛い
3.ビジュアル:仮想世界の表現を頑張る(直実のトリップ)

オリジナル作品の監督の仕事
まずスタッフィング(スタッフ集め)。いちからコンタクト
・過去に一緒に仕事をした人から誘った
・SAO原作の絵師のabecさんの実姉が堀口さんで、手紙を書いてコンタクトを取った。
・岩浪さん(ガルパンおじさん)
それが済んで初めて、従来通りの仕事

映画の作り方のコツ
映画のタイムスケジュール:三幕構成
・舞台用語。ハリウッド流の起承転結のようなもの。
・10年くらい前から意識するようにしている)。
・1幕:世界の設定(日常、達成したいこと、動機)
・2幕:展開(達成したいことができるかの葛藤、折り返しで一度気分落とす、再起、達成できることの決着)
・3幕:たたむ
・25分:50分:25分
・三幕構成を一番上手く使っているのは庵野さん(シン・ゴジラ)

何が正解かはわからないが、自分で目標やルールを決めて仕事すると作業しやすい。
まずは自分の中で目標を設定して、そこに近づくように努力する
手を動かす以外にも頭で考えて試行錯誤しながら作っていく。
人生は三幕構成。学生のうちに自分なりのメソッドを見つけると勉強や研究、仕事につながっていく。

対談

伊藤監督は人生今何幕ですか?→明日死ぬかもしれないからなあ

まどマギ的な作り方。
脚本を書くときは絵を考えながら書く。映像映えを考える。
イメージしやすいものがあると書きやすい。
映像化しにくい作品はある。knowは映像化しづらい。

近未来感を出すのに、見慣れないもののほうが面白いのであえて日本のものを使わないで海外のものを使う。

SFはどのくらいまで嘘をつくか。SFの嘘の許容範囲とは。エヴァは壮大な嘘がたくさんある→監督は世界観の構築が仕事。自分の肌感覚としては、こうしたいという願望を、突飛な所に飛ばないようにしつつ、程度良く嘘をつく。嘘に嘘を重ねるとバレる。SFの嘘は1個にしておいてあとは辻褄を合わせて確からしくしておく。

大学は何系だったのか→船乗りの大学に行っていた。卒業してたまたまマッドハウスに入った(2001年)。何社か受けて入りやすそうないい加減なほうの会社に入った。黄金期の前のマッドハウス。僕らのウォーゲーム、東京ゴッドファーザーズ、時かけ、サマーウォーズ、DEATH NOTE。

エヴァンゲリオン世代。エヴァで作り手を意識し、アニメ業界を志した。アニメ会社の色の違いを見極めるようにした。ガイナックスは絵描きが強いから近づかないようにしようと思った。A-1 Picturesは傭兵集団。

ここ10年のアニメ業界で変わったのは?→一番の変化はアニメ作品が増えた。中国の勢いは無視できない。パッケージが売れなくなった。ネット配信でグローバル化(海外用字幕を発表前に付けないといけない。海外の反響がリアルタイムで来るようになった)。作り手と配給側の意見の相違(お金の問題)。

落合:ネタバレ無しに映画やアニメを見るのが難しい時代。ネタバレを想定して作品を作る(と神山監督も仰っていた)。公開日に有働さんからドラクエのネタバレされた

ネットの反響は気にするか?→割と気にする。エゴサする。

ハローワールドはキャラがポリゴンでできているが、最後だけ作画(早速ネタバレ)。気付く人だけ気付くメタフィクション。ポストマトリックス時代の仮想世界オチ。

作中の設定は一人で考えるのか?→プロットは一人で考えずにチームで作る。発案があるのを待つ。企画は2年半前に作った。合宿して話の流れとオチを決めた。やりたいことが集まっても初手で絞り込むのが難しい。
プロデューサーが監督を見つけたところからコネクションが始まった。SFをやろうということになってプロデューサーが野﨑まどさんを勧めた。

若干コア向けの作品。一般向けに宣伝しすぎても凝った設定が伝わらない。コンテンツで一番金をかけるべきは広報。一般向けとターゲット層のバランス。

映画監督になるには→まずは勝手に映画を作っちゃう。自分で名乗れば映画監督になれる。名乗ったもん勝ち。今の時代、何にだってなれる環境は揃っている。下積みがなくてもバズってしまえばなれてしまう。配信は儲からないが、赤字にならないようにする。そうすると当たったときに稼げる。→落合先生:すみっコぐらしがJOKERより面白いと妻から聞いて観に行ったがカメ止めより面白かった。鷹の爪団。

制作チームの人間関係をどう調整していくのか→100人のポテンシャルを100%まで引き出せるような働きかけをしてモチベーションを引き出す。ポテンシャルを引き出すシーン、エフェクト(カラフルエフェクト等)。色んな監督像がある。

脚本は制作段階のどの部分まで調整するのか→ポストプロダクションで変えられる所は変える。3DCGは声を先に録る(プレスコ)ので台詞替えが容易。細かい台詞はダビング前でも入れたりする。お偉い人の意見を聞いたり。

ゲームエンジンの進化(Unity)。制作にも活用した。

京都のロケハンには6回行った。伏見稲荷など。地元の人しか行かないような所にも行った。

SFが現実になりうる時代、5年先の未来をどう描いていくのか、→SFは初手が大事。映画を2年かけて作っているうちに現実に追い越される。それを見越して、3手先を考えて作る。無茶ブリするくらいがちょうどいい。

オリジナル脚本の世界観とキャラクターはどちらを先に作るのか→担当者と摺り合わせていくが、企画段階より後になることもある。世界観と、その世界観でのキャラクターの気持ちとのリンク。野﨑さんがシナリオの時点で家族構成から作り込んだ。主人公の父親はいなくて、母親はお堅い仕事だが途中退場。キャラクターの履歴書を作る。

モーションキャプチャーは使っているか?→使っていない。モーションはアニメーターが全部アニメらしく手付けすることで余計なフレームをなくした。アニメーターが自分で動いてみて録画したのを見て描いたりもしている。

サメ映画。

アニメ監督の椅子取りゲーム。宮崎枠は新海監督が埋めている。押井監督で空いたSFの穴に入りたい。でも小難しい話は一般受けしない。みんなが楽しめるものにしたい。

制作で最もカタルシスを感じるのは→完成した時よりもダビング(効果音、サントラ、台詞などの音付け)終わったとき。耳で聞いて、一つの作品が9割方完成した感じ。

考えるときは、落書き、箇条書きからアイデアをまとめていく。

宮崎監督は絵が動いているだけで感動してしまう。他の監督のゾーンに近づかないようにしている。ケモノと子供の細田監督。背中が痒くなりたくなったら新海映画。○○の煮凝りを投げつけるのが新海監督。村上春樹の映像化。みんなジブリゾーンを目指しているがそれぞれ適正ポジションがある。

観客に持ち帰って欲しい物は?→考察する楽しさを持ち帰って欲しい。劇場を出てから友達と議論が生まれる映画を作りたい。だから謎、考察する余地を残した。メタメッセージを探りたい人と気軽に見たい人両方を考えることが大事。→落合先生のすみっコぐらしのとんかつの深読み(婚活)

リメイク作品が多い。漫画がすぐアニメ化され、アニメを作りすぎて原作モノが枯渇してきている。オリジナル作品を作っていきたい。ディスカッションとブレストでジャズっぽく作っていく(→落合先生:ネトフリの全裸監督、秩父シリーズ)。

セカイ系と括られがち。SFを作っている意識しかなかったので驚いたが、確かにそういう見方もできる。緩やかに衰退していく日本で求められる映画とは。悲劇的なものは描けない。謎を残し過ぎても見終わった後不快感が残るので、重要なところは伝わるように強調し、これだけわかってくれればいいというラインを引いた上で謎を残す。ハリウッドでは試写の反応を見て直したりするが、日本では時間的に難しい。

映画監督は誰でもなれる時代になった。高校の時から映像作品を作っていた。

モチベーションの維持:テレビアニメは締切に追われながら作る。映画はちょっと違う。中間生成物を見て、作品の進みを自分で納得することでモチベーションを保つ。3Dの人達は真面目で、モノを上げてきてくれるからモチベーションになった。大学ではアニメーションサークルに入り1本作った。

安っぽい映画は、画面から溢れる低予算感。利権や政治的な原因が大きい。

映画の予告の作り方→予告編を作る専門のディレクターがいる。監督はあまり関わらない。映画が全部出来ていない段階で作られる。ネタバレしないようなラインだけは守ってもらう。オーディナルスケールのラストからのアリシゼーション。

スタッフのモチベーション:あえて褒めすぎないでたまに褒める。褒めすぎると上限が下がってしまう。威厳を保つ。

SFというジャンルは続いていくのか→時代時代で姿を変えていくのでは。だんだん哲学的、精神的なものになっていく。

フィクションに、これはリアルではないと文句をつけるのはNG。

インプットはどうしているか→知識は本や記事、肌感覚は海外旅行から。色々な物を肌で感じることが大事。

映画にしかできないこと、映画館とは何か。映画は、お金を払って暗い部屋で集団で同じ作品を見る一種の洗脳空間。現代社会で2時間も集中する空間は他にない。五感で感じる総合芸術。人の感情を揺さぶる装置。だからこそできることを新たに探ってみたい。ネットオリジナルの作品により映画の定義が揺らいでいる。

既存のものより初手のイメージができるだけ飛躍していたほうがいい。SFは技術紹介になるとつまらない。自分の理想の技術を投影してイメージを広げ、そこから現実と照らし合わせて練っていく。サーベイの前にアイデア。

アニメーターの低収入について→給料の話は野暮ではない。大事な話。監督でも副業している方は多い。自分で稼げるように兼業など工夫しないと食っていけない。ハイリスクハイリターン。権利分配問題は根深い。JOKERの監督は150億円。終わってから契約書を書かされる。

伊藤監督はシナリオを決めてから世界観を作り込む。

3DCGは、演者が経年劣化しない。

お金とリソース。

音楽は絵コンテの段階で入れる。音響監督によるMライン。

小道具の進化。

昔のSFと今のSFの違いは→ベースは同じだが小難しさが増した。実験性も問われている。

以上

* * *

落合陽一先生は、メディアアート、VR、HCI等の分野で時代の先端を牽引し続ける気鋭の研究者で、この「コンテンツ応用論」も受講が選抜制というほどの人気だそうです。自分は大昔この辺の分野をちょっとだけ追いかけたことがあり、今でも個人的に気になる分野ですので、だからこそVR、ARモノとしての伊藤監督作品には強く惹かれるものがあり、第一人者である落合先生がほかでもない伊藤監督をゲストとして選んだというそのチョイスにニヤニヤを抑えられませんでした。

「考察する楽しさ」を持ち帰って欲しいという監督の発言を聞いて、自分は完全に制作スタッフの掌で踊らされているのだなと^^;

最後に、「#コンテンツ応用論2019」タグのこの日の全ツイートをTogetterで集約したものを以下に置いておきます(勝手なまとめという性格上、Togetterに捕捉されないように「URLを知っている人にのみ公開」としています)。上記のメモはこれが源泉になっていますので、お気づきの点のある方はこの「原本」をご参照頂ければと思います。膨大な量がありますのでご注意下さい。

追記(2020.2.12):この講義の内容の一部が週刊プレイボーイ2020年2月17日号(2月3日発売、No.7)において「落合陽一の白熱!!筑波大学未来教室4th Season」(pp.146-149)として4ページの特集記事になっています。

きちんと取材された内容になっていますので、ぜひご参照下さい。なお、電子版は2020年3月3日までの販売なのでご注意下さい!

追記2(2020.2.29):内容が週プレNEWSに載り、誰でも観られるようになりました。しかも週プレで削られた所も入っていて分量が多い!

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