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ミクロの歴史を知るには現代の世界情勢を知ること~星野 博美×鹿島 茂、星野 博美 『世界は五反田から始まった』(株式会社ゲンロン)を読む~

2022年8月の月刊ALLREVIEWSノンフィクション部門は星野博美『世界は五反田から始まった』(株式会社ゲンロン)を取り上げます。五反田にあるゲンロンの話と思いきや、著者の星野さんの家族史の物語。戦前から戦中戦後の「大五反田」の歴史に話は広がっていきます。
五反田は小林多喜二が働いていた工場地帯。同じく町工場を経営していた星野さんの祖父は、昭和20年5月の大空襲のあと、いち早く、焼け跡に戻り、自分の土地であることを示すために「杭を打ち」ます。
主要紙や雑誌の書評欄で熱い支持を受けている本書。鹿島茂さんの書評はALLREVIEWSで公開しています。
※対談は2022年8月31日に行われました。アーカイブ視聴が可能です。

大画面で見る「大五反田」マップ

トップ写真でわかるとおり、本講演では、モニターに大五反田の地図が投影さています。地図の操作をするのは、ゲンロンのスタッフ。あたかもタッチパネルのように操作をしていきます。配信ビデオでは地図を使った講演の面白さをご堪能ください。

戸越銀座から五反田駅を通り清正公(覚林寺)あたりまでを直径とする、星野さんの定義による「大五反田」。ここには白金や武蔵小山も入ります。美智子妃ゆかりの池田山から、今、ブームの戸越銀座やタワマンがたつ武蔵小山まで。話は多岐に上ります。

対談では、実家が戸越銀座にあった梅宮辰夫の話まで登場。星野さんは地元に戻った梅宮辰夫に歓声を上げて手を振っていたそうです。

ドイツ降伏後、空襲は激しさを増した

大五反田には工場地帯があり、小林多喜二が働いていました。武蔵小杉と「ムサコ」争いをしている武蔵小山は、そのころ「おでかけ」するしゃれた商店街。戦時中は商店街ごと満洲に開拓団としてわたることになり、多くの人が命を落としました。推定の生存率僅か1割。開拓団の中でも厳しい生存率です。

一方、「大五反田」も激しい空襲に遭いました。5月24日の東京城南大空襲で投下された焼夷弾の量は、死者10万人を出した3月10日の東京大空襲を上回るもの。大五反田も焼失します。

工場焼失後、星野さんの祖父は、土地を見失わないよう、杭を打ち、土地を見張ります。実は、この話、一族の中では、星野さんしか聞いていません。祖父の息子であるお父さんは当時越谷市に疎開中で五反田に戻ったのは昭和24年。家族に確認がとれないまま、この話をゲンロンβで紹介すると、「うちでも同じような話が」という反響が複数あったそうで、星野さんは改めて祖父の話の正しさを知ったそうです。

戦争体験者が少なくなっていく中で、星野さんは関心を持つためには、世界情勢にも目を向けることだといいます。星野さんは、ミクロの話をしながら、当時の世界情勢にも目を配りながら書いています。例えば、5月の東京の大空襲について、空襲が激しさを増した背景には、5月8日のドイツの降伏があります。アメリカ軍は、軍事力をすべて日本に向けていきます。このような、広い視座が戦争への関心を失わないためには必要なのかもしれません。

空襲の話が強烈ですが、対談では、鹿島さんのこの地のお屋敷めぐり秘話も紹介されます。大画面の地図と合わせ、アーカイブ視聴でお楽しみください。

【記事を書いた人:くるくる】

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2021年2月には、鹿島茂さんとの対談6本をまとめた『この1冊、ここまで読むか!超深掘り読書のススメ』が祥伝社より刊行されています。
そして2022年3月に開店した共同型書店「PASSAGE by ALL REVIEWS」では、棚主になる会員や、運営を手伝う会員も。
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