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PASSAGEは『映える』本屋~仲俣 暁生×鹿島 茂、鹿島 茂 『神田神保町書肆街考』(筑摩書房)を読む~

第46回の月刊ALLREVIEWSノンフィクション部門は仲俣暁生さんを迎えて、鹿島茂『神田神保町書肆街考』を取り上げます。通常はゲストの著作を鹿島さんが切り込むという形ですが、今回は、課題本の文庫解説を書いた仲俣さんが本書について鹿島さんに聞くという、いつもとは攻守を変えた対談となりました。鹿島さんの書店PASSAGEの棚主でもある仲俣さん。課題本と『神田村通信』の2冊を携え、対談に臨まれました。
課題本に書かれた神保町の話から、鹿島さんが息子さんと運営する書店PASSAGEの話につながっていきます。
※対談は2022年11月9日に行われました。アーカイブ視聴可能です。


PASSAGEは「神田神保町にあるべき書店形態」を具現化

仲俣さんは課題本の前に書かれた鹿島さんの『神田村通信』の中の「神田神保町にあるべき書店形態」に注目します。この中で、鹿島さんは以下のように書かれています。

私が神田に誕生してほしいと思うのは、デパート方式の大型の新刊本書店ではなく、いわゆるパルコ方式の集合的な新刊本書店である。つまり、一つの巨大店舗のなかにありとあらゆるジャンルの本が棚別に陳列されている総合店舗ではなく、昭和史の専門店、フランス文学の専門店、詩の専門店というようにそれぞれの専門店が個別に軒を並べ、独自に本を選び、販売しているような集合店舗である。

鹿島茂『神田村通信』清流出版 2007年

今年開店した書店、PASSAGEは上記の鹿島さんの夢をかなり具現化したもの。各棚が小さいながらも専門性を持っています。各棚から棚主の「ドーダ」オーラが出ているのはなかなかの見ものです。小さな棚であっても棚主の個性が光っています。

仲俣さんはPASSAGEの『破船房』の棚主。棚主になって驚いたのは意外と本が売れること。鹿島さんは「本は必ず売れる」という持論があるのですが、仲俣さんも、「意外な本が売れる」と実感しているそうです。

神田神保町は『オタクの街』から『映える街』へ

課題本『神田神保町書肆街考』は神保町はオタクの街になるということで終わり、仲俣さんは少し寂しい思いを感じたそうです。しかし、この本が出版された2017年から、神田神保町も大きく変わっていきます。
東京郊外から大学が戻ってきて、街に若い人が増えたこと。これに伴い、若い人に『映える』メニューがある喫茶店さぼうるが人気に。

PASSAGEはこうした若い人が入りやすい書店として、人気となっています。写真OK、シャンデリアのある内装は、インスタ映えもしますね。

三省堂が建て替えとなり、神保町の街並みも変わっていきます。神田神保町の書肆街は変わらないからよいのではなく、変わるからこそ価値がある。寒い冬、家にこもって読む本を探しに神保町探訪をしてみては。

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対談では、鹿島さんの学生時代の神田神保町の話や、パリのパサージュの話など多岐に上ります。

鹿島茂さんのサイン入り『神田神保町書肆街考』はPASSAGEの棚で販売中。オンラインでも購入可能です。

【記事を書いた人:くるくる】

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友の会会員同士の交流は、FacebookグループやSlackで、また、Twitterや、メールマガジンで会員有志が読書好きにうれしい情報を日々発信しています。
2020年以降はオンライン配信イベントにより力をいれています。
2022年9月には、ALLREVIEWS友の会から2冊目の本『多様性の時代を生きるための哲学』が祥伝社より刊行されました。
そして2022年3月に開店した共同型書店「PASSAGE by ALL REVIEWS」では、棚主になる会員や、運営を手伝う会員も。
もちろん、オンラインイベントを楽しむだけでもお得感があります。
本が読まれない時代を嘆くだけではダメだと思う方、ぜひご参加ください。
ALL REVIEWS友のTwitter:https://twitter.com/a_r_tomonokai


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