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ルイ十四世ゆかりの地ヴァーチャル・ツアー~鹿島先生のヴェルサイユ講義の補助線として~

第1回 ヴォ―・ル・ヴィコント城、国立ゴブラン工房、ジャンダルメンマルクト(@ベルリン)

仏文学者の鹿島茂先生がコロナ禍で旅行ができない人のために「スペシャルオンラインサマースクール「三代の王とヴェルサイユの名花」を開催されています。2020年8月15日に第1回の講義が開催されました。テーマは「ルイ十四世と三人の愛姫」。講義では、いろいろな場所が次々と紹介されました。ヴェルサイユ講義を楽しまれた方も、そうでない方も、ルイ十四世のゆかりの地をヴァーチャル・ツアーしてみませんか?

★ヴォ―・ル・ヴィコント城

パリの南東50キロ方向、フォンテヌブロー城の近くにヴォー・ル・ヴィコント城はあります。パリから行くには、公共交通機関を使うこともできますが、フォンテヌブロー城と合わせて周るバスツアーも便利です。

ヴォ―・ル・ヴィコント城はルイ十四世の財務卿だった二コラ・フーケが,建築家ル・ヴォ―、造園家ル・ノートル、内装デザイナーのル・ブランの3人に命じて作った城。
フーケがルイ十四世をこの豪華な城に招いたのは1661年8月17日のこと。当日はモリエールの劇も上演されました。贅を尽くした宴会を観た後、城の素晴らしさに嫉妬したルイ十四世は、フーケを逮捕し、ル・ヴォ―、ル・ノートル、ル・ブランはヴェルサイユ建築に携わることになります。これがヴォ―・ル・ヴィコント城がヴェルサイユのモデルと言われる所以。トップの写真はヴォ―・ル・ヴィコント城の全景ですが、なるほど、個人所有の城としては非常に立派。

その後、この城の所有者は転々としますが、ずっと私有地でした。これは、フランスでは珍しいこと。一般公開がされるようになったのは1968年からです。私有の美術館であるためか、ヴォ―・ル・ヴィコント城の説明文は二コラ・フーケへの愛に溢れています。


★国立ゴブラン工房

ルイ十四世の有能な財務総監コルベールの殖産興業策として鹿島先生が紹介したのが「ゴブラン織」。工房設立に尽力したのは、コルベールと、ヴェルサイユの内装デザイナーのル・ブラン。ゴブラン織の国立工房はパリ13区のゴブラン通りに今でもあります。
個人でも毎週水曜日(フランスの公立学校の休暇日)の午後、ガイド付きで見学することができます。職人さんが絨毯を織っていく模様を直に見学できるのは貴重。

なお、併設のギャラリーでは展示会をやっていることも。こちらは、展示会開催時であれば、予約不要で見学することができます。

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PHGCOM / Public domain

★ジャンダルメンマルクト(@ベルリン)

1685年、ナントの王令が廃止され、フランスの新教徒(ユグノー)の多くは海外に亡命しました。亡命先は米国、英国、ドイツ、オランダ、ベルギーなど多岐にわたっています。中でも、ユグノーの痕跡が色濃く残っているのが、ドイツのベルリン。

フラヌール文学の傑作、多和田葉子の『百年の散歩』には以下のように描かれています。

 ユグノー派の人々がフランスから逃れてこの土地にやってきた時には、まだBerlinという都市があったわけではなく、いくつかの村が集まっていただけだった…
               多和田葉子『百年の散歩』(カント通り)

ベルリンの中でも、ユグノーの影響が見て取れるのがジャンダルメンマルクトの界隈。旧東ベルリンですが、現在はすっかりおしゃれな街並み。
ユグノーの痕跡となっているのが、広場のフランス大聖堂で、広場の向いに建つドイツ大聖堂と対になっています。フランス大聖堂はもちろん亡命ユグノーが建てたもの。

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Thomas Huntke, Germany (der Uploader) http://www.huntke.de / CC BY-SA (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)

この界隈には素敵なお店が多いのですが、オススメはチョコレート・ハウスの『ラウシェ(Rausche )』。1918年創業で、ユグノーとは直接関係はなさそうですが、1000平米を超える店舗は、チョコレートのデパートで、カフェも併設。公式サイトの店舗の様子は3Dで迫力があります。

ジャンダルメンマルクトは第二次大戦で壊滅的な被害を受けたあと、東ベルリンとなった激動の町なのですが、ドイツ統一後、21世紀に入り、19世紀の頃の街並みを取り戻しています。微かなフランスの香りが残る街並みを、いつか体験してください。

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第2回は8月22日開催予定で、ルイ十五世と二人の愛姫、ポンパドゥール夫人とデュバリー夫人を取り上げる予定。第2回、第3回だけの聴講も可能です。

※トップの写真のクレジット:Le Vau as architect, Jebulon as photographer / Public domain

【この記事をかいた人:くるくる】

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