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友の会会員が選ぶ「別れと出会いの季節に贈りたい本」DAY.5

きみこ選:辻 仁成『愛のあとにくるもの』

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桜の季節に読み返す一冊

本当はこれにしたくなかった。主人公の潤吾が女々しいから。だけど私はこの本が大好きで、一時期、春になると必ず読み返していた。だから今回読むのは4回目だろうか。

久しぶりの再読。驚くべきことに細かいストーリーは忘れている。日韓の歴史と苦悩。意表を突く表現。はっとする比喩が胸に迫る。長い長い一編の詩のようだ。

人は試練を乗り越えるとき、思考し成長する。潤吾もただぐずぐずしていたわけではなかった。最後にそれを証明する。言葉などではなく誰もが納得する方法で。心が澄み渡る素晴らしいラスト。またしても落涙。やはりどうしようもなく好きな小説だ。

女性側からの同名小説が韓国の作家によって「紅の記憶」として出ている。別れと出会いの季節に、合わせて是非。


【この記事を書いた人】きみこ


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