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最新の花粉症薬の比較と使い分け

いつき博士です。
アレルギー患者教育向けサイトを運営しております。

2月からは
花粉がひどく薬が手放せない方が
増える時期かと思います。

今回は直近で発売された
1日1回服用する3種類の抗ヒスタミン薬
デザレックス(デスロラタジン)とルパフィン(ルパタジン)
ビラノア(ビラスチン)について勉強していきましょう。

1.抗ヒスタミン薬とは

ヒスタミンは主として肥満細胞から放出されて
ヒスタミンH1受容体に結合することで
アレルギー反応を起こす物質です。

抗ヒスタミン薬は受容体に
あらかじめ結合
することで
アレルギー症状を抑制します。

シーズン前から
抗ヒスタミン薬を服用
しておくと
受容体がブロックされて
シーズン中に花粉症の症状が出にくくなる
といった研究報告もありますね。

2.デザレックスとビラノアの試験

まずはデザレックスとビラノアの比較試験を解説します。

2-1.試験背景

本試験では
デザレックスとビラノアの両剤とプラセボの3群で
有効性と安全性を比較しています。

・対象
 12~70歳の季節性アレルギー性鼻炎720例
 (デザレックス5㎎群242例、ビラノア20㎎群233例、プラセボ群245例)

・デザイン
 多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験

 各3種類 1日1回14日間
 朝食の1~2時間の空腹投与

ビラノアでは食事の影響が受けるため
この試験では空腹時投与となっていますね。

症例数も多く
試験デザインの信頼度は高そうですね。

・主要評価項目
 TSS(総合鼻症状スコア)のAUC
 4鼻症状(鼻閉鼻汁くしゃみ鼻掻痒感)
 鼻以外の症状(眼の痒み痛み充血異物感耳・口蓋の痒み)
 この2つの推移

・副次評価項目
 4鼻症状スコア

鼻の症状だけではなく
花粉症における他の症状に対しても
評価していきます。

2-2.試験結果-1(有効性)

下記グラフから
プラセボ群より2群とも
鼻炎の症状を有意に改善しました。

デザレックスとビラノアでは
本試験から
同程度の効果を示す可能性がある
結果となりました。

14日間の推移を見ても
2群間に差はほとんどなさそうですね。

議題とは逸れてしまいますが
プラシーボ効果と言われているように
プラセボ群でも多少下がっているのも
面白いですね。

2-3.試験結果-2(安全性)

デザレックス群 32.6%
頭痛11.2% 眠気3.7% 疲労1.2%

ビラノア群 28.3%
頭痛12.0% 眠気3.9% 疲労2.6%

プラセボ群 25.3%
頭痛10.2% 眠気2.4%

メーカーに確認したところ
抗ヒスタミン薬を投与すると
前頭葉の血流が低下
頭痛の副作用も出てくるそうです。

3.デザレックスとルパフィンの試験

次にデザレックスとルパフィンの比較試験について解説します。

3-1.試験背景

本試験では
デザレックスとルパフィン、プラセボ群の3群で
同様に有効性と安全性を比較していきます。

・対象
皮膚プリックテストで陽性を示した
 12歳以上の季節性アレルギー性鼻炎359例
   (デザレックス5㎎群118例、ルパフィン10㎎群119例、プラセボ群122例)

・デザイン
 多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験

 各3種類 1日1回4週間経口投与

・主要評価項目
 T7SS(7症状スコア)のベースラインからの変化量
 (過去12時間を振り返った評価) 
 ※T7SS:鼻症状(鼻分泌物鼻閉くしゃみ鼻掻痒)
      非鼻症状(眼のそう痒症眼の発赤涙目)

・副次評価項目
 (その時点の評価)

こちらの試験でも
他の症状に対して評価していきます。

3-2.試験結果-1(有効性)

プラセボ群と比較して
デザレックスとルパフィンでは
減少している結果が得られています。

デザレックスとルパフィンでは
本試験から
同程度の効果を示す可能性がある
結果となりました。

3-3.試験結果-2(安全性)

デザレックス群 16.1%
眠気5.9% 頭痛4.2%

ルパフィン群 13.4%
眠気8.4% 頭痛1.7%  

プラセボ群 9.8%
咽喉頭痛2.5% 頭痛0.8% 

頭痛と眠気はビラノアとの試験でも
認められていましたが
ルパフィンの方が眠気が多く
デザレックスの方が頭痛が多いんですね。

臨床判断で
重要な参考値になりますね。

4.大事なポイント

今回の試験から
デザレックスとビラノア
デザレックスとルパフィンを比較した際
同程度の有効性があるのではないかと示唆されました。

しかし、プラセボ群も含み直接比較ではないため
一概には断定はできませんね。

では、この3種類でどれを選べばよいか
個人的な見解、患者背景を考慮して
以下3点でまとめました。


①眠気
アレルギーの薬ではここは気にしてしまいますよね。

今回の3種類ではルパフィンだけ
添付文書で運転への注意喚起が記載されています。

デザレックスとビラノアでは
比較的起こりにくいとは言われています。

かと言って
試験結果からも眠気が出る方もいるため
使用時の注意は多少必要ですね。


②食事
上記でもすでに記載していますが
ビラノアは食事の影響で効果が下がってしまいます

ルパフィンでは
グレープフルーツの影響
強い効果が出てしまいます


③効果
これまでの試験結果から
効果に変化はあまりないのでは?
と思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、臨床ではルパフィンの場合
医師によってはMAX量(20㎎)まで
処方することもあります。

治りが悪い際には
ルパフィンをMAX量
検討しても良いかもしれません。


マニアックな話になりますが
そもそも抗ヒスタミン薬は効き目や副作用に個人差があり
分子構造の骨格によっても合う合わないがでてくる場合があります。

薬剤を選択する際には
医師や薬剤師に相談するなど
自身にあったアレルギー薬を
選択することが求められてきますね。

《参考文献》
Bachert C et al. Allergy 64(1): 158-165,2009.
Lukat KF et al. journal of Asthma and Allergy.21 February 2013