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マネジメントの美学 Vol.1

こんにちは!アレンです。もう5月も終わりに向かっていますが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。今日は「Art of Management」と題して、マネジメントの美学について書きたいと思います。ぜひ最後まで読んでいただけますと大変嬉しいです。

マネジメントの重要性

私は外資系企業を中心としたさまざまな業界で15年以上のマネジメント経験を積んできました。現在は、EUの医療機器会社でAPACディレクターとして勤務し、アジアのオペレーションを管理しながら、自身が経営する会社で教育事業とコーチングサービスを提供しています。業界はFMCG、コンサルティング、テクノロジー、製造業、金融など多岐にわたり、多様な職種、人種やバックグラウンドを持つ人々と働いてきました。この経験から得た結論は、個人、組織、事業の成功はマネジメントによって良くも悪くもなり、その核となるのは「人」です。

この「人的資源」にフォーカスする原則は近年MBAをはじめ、人事担当者や経営陣にも広く認識されていますが、理想と現実の間にはまだ大きな乖離があります。その一因として、適任なマネージャーが不足している現状があると思います。一度は誰もが遭遇するでしょうが、リーダーシップの特性を欠き、倫理違反や感情的な態度が多く、威厳や権力を振りかざし、責任を他人に押し付けたり、チームの成功を独占したりするマネージャーは決して少なくはありません。

「People quit bosses, not companies」という言葉が示すように、人は会社ではなく上司が原因で辞めると言われています。これが常に当てはまるわけではありませんが、マネジメントの重要性を考える上で非常に大事な考え方だと思います。一つ言えるのは、私たちマネージャーはメンバーのキャリアや会社で活躍できるかどうか、大きな影響を与える重要な責任を担っていることを忘れてはいけません。

私自身、過去に感情的なマネージャーと働いたことがありますし、自己中心的なマネージャーとも仕事をしました。一方で、外資系コンサルティング時代には素晴らしいマネージャーに恵まれました。特に小林さんという方にはお世話になり、今でも尊敬しています。
こう考えると、マネージャーが自分自身や周囲の人々に与える影響の大きさを身をもって知りました。特に、テクノロジーが急速に発展し、ホワイトカラー職がAIに取って代わられる可能性が議論されていますが、マネジメント職はそのようなエマージングテクノロジーを効果的に活用しながら「人間」に焦点を当てて意思決定していくことが重要になってくると思います。

マネジメントとは何か?

「マネジメントの父」と呼ばれるピーター・F・ドラッカー氏は、書籍『マネジメント』の中で、マネジメントを独自のツール、原則、および理論を備えた分野として定義しています。他の専門分野と同様に、マネジメントには自己理解、訓練、そして規律が必要だと説いています。私自身、ドラッカーの作品を熱心に読んできましたが、彼の理論はマネジメントスキルはリーダーだけでなく、自己成長を目指す全てのプロフェッショナルにとって重要な概念であることだと感じました。

さらに、マネジメントは単なる企業活動や経営ツールを超えたものであると考えています。それは一生を通じて追求し続けるライフスタイルであり、どのような状況であっても、どの年代であっても、全ての人が実践できるものだと思います
初めは取っ付きにくいかもしれませんが、一つの理由としては「マネジメント」という用語はしばしば「管理」と同義で使われがちです。これはある程度正しいですが、私が思うマネジメントは、自分自身から始まり、周りの人たちと協力し、企業に変革をもたらし、社会にポジティブな影響を与える現代の哲学だと考えています。

ドラッカー氏が強調するように、マネジメントはリーダーシップと密接に関連しており、効果的なマネジメントが組織の成功に不可欠です。それだけに留まらず、個人の成長や自己実現、周りとの関係性にも重要な役割を果たします。特に現代社会では技術革新やグローバル化が進む中で、柔軟で適応力のある幅広いマネジメントスキルが求められています。

また、マネジメントは単に組織の効率を追求するだけでなく、倫理や価値観、社会的責任にも深く関わっています。私たち一人ひとりがマネジメントを通じてより良い社会を築くことができると思います。そのために学び続け、自らのスキルを磨き、インテグリティ(誠実さ・倫理観)を持って、他者との協力を大切にする姿勢が重要です。

なぜマネジメントが必要なのか?

先にも少し触れましたが、現在、AIなどのテクノロジーによって、これまで必要とされていた職種や仕事が置き換えられる可能性が出ています。私はある意味これはチャンスだと考えています。ルーチン化された仕事をAIが行うことで、私たちは人間的にしかできないクリエイティブな仕事に集中できるようになるからです。実際にChatGPTにAIではできないが人間にしかできないことを尋ねたところ、以下のような回答が返ってきました。

感情的体験と共感:AIはプログラムされたパラメータに基づいて情報を処理しますが、人間のように感情を経験し共感する能力はありません。愛情や悲しみなどの複雑な感情を理解したり感じたりすることはAIにはできません。

倫理的判断:人間は文化や個人の価値観に基づいて倫理的判断を下しますが、AIは与えられたデータとアルゴリズムに基づいて判断を行うため、倫理的な問題に対する深い理解や状況に応じた判断を下すことが難しいです。

創造性:AIは特定のパターンやデータから新しいアイデアや作品を生成することができますが、独自の創造性や革新的なアイデアを生み出す能力は限定的です。芸術や文学など、深い個人的な表現が求められる分野ではこの差が顕著です。

個人的経験に基づく学習:人間は経験から学び、それを生活のさまざまな側面に適用できますが、AIはそのような経験を持たず、データに基づいてのみ学習します。個人的な成長や進化を経験することはAIにはできません。

対人関係:人間は複雑な社会的相互作用を通じて関係を築くことができますが、AIはプログラムされた範囲内でのみ対応可能です。友情や愛情など、人間関係の深い部分を理解し、それを構築する能力はAIにはありません。

これを解釈すると、人間の感情に依存する「心理カウンセラー」、創造性が求められる「アーティスト」(一部では画像・音楽生成AIに取って代わられることもありますが)、生徒の個別のニーズや感情に応じる「教育者」、人間的な接触が不可欠な「医療従事者」や「ソーシャルワーカー」、そして人間関係の構築や倫理的な判断が求められる「リーダーやマネージャー」が存在します。これらの職種はAIが支援することはできても、完全に代替することは難しく、人間関係構築、創造性、倫理的判断といった人間にしか出来ないことはこれからも必須になります。
そして、これらすべてのスキルを包括的に有するのが『マネジメント』だと私は考えます。マネージャーはチームメンバーに寄り添い、創造性を活かし事業を作っていく、誠実で正しい倫理的な判断をする、そして継続して学習をしていく必要性があります。

マネジメントは単なる業務の遂行や生産性の向上にとどまりません。むしろ「人間力」を活かし、組織や社会全体の幸福と成長を促進する役割を果たします。AIが多くのタスクを自動化する一方で、人間の特性を最大限に引き出すことができるのは、効果的なマネジメントによるものだと思います。これこそが、テクノロジーの進化とともにますます求められるスキルであり、マネジメントの本質だと私は確信しています。

次に、効果的なマネジメントを実現するための3つのステップを見ていきます。

マネジメントの3つのステップ

① セルフマネジメント
セルフマネジメントは、自己管理能力を高めることから始まります。時間管理、目標設定、自己認識、自己成長を含みます。何よりもまず、他者をマネジメントする前に自分自身をマネジメントすることが大事です。なぜなら、人に影響を与える前にまずは自分自身に影響を与えることが原則だと思います。そのために、セルフマネジメントの基盤をしっかり築くことが重要です。

特に、EQ(エモーショナルインテリジェンス)に取り組むこと、そして自分自身のあり方(パーパス)を考えることが不可欠です。リーダーには特に意識してもらいたいですが、EQを高めることで自分の感情を理解、感情管理の能力が向上し、他者との良好な関係を築くことができます。
さらに、自分のパーパスを明確にすることは、行動の指針となり、日々の活動に意味と方向性を与えます。現在は様々な情報を簡単に得ることができる時代ですが、その反面私たちの集中力が極端に悪くなっていると言われています。パーパスを持たずにいると、不必要な時間を取られたり、自分自身のゴールが遠ざかったりするので、常にパーパスに沿って行動することが必要です。

② ピープルマネジメント
ピープルマネジメントでは、リーダーはチームで協力し、目指すゴールに導き、メンバーのスキルを伸ばすために支援することが必要です。ピープルマネジメントのフェーズでは、コミュニケーションスキル、チームビルディングを通じて文化や心理的安全性の構築、モチベーション管理、コンフリクトマネジメント、エンパワーメント、チェンジマネジメントなど多岐に渡ります。効果的なピープルマネジメントは、良いチームカルチャーを作り、チーム全体のパフォーマンスを向上させ、チームメンバーをコーチングやティーチングで成長を促進します。

何か大きなことを達成するときは、当然ながら自分ひとりでできることが限られています。他の人たちと協力して何かをやることは、今後テクノロジーが発達しても普遍的なものとなります。ただし、上記に記載した通り、人をマネジメントする前に、まずは自分自身のリーダーとしての素質を磨き上げる必要があります。そして意外とこれを意識しているリーダーは少ないかもしれません。リーダは役割ではなく「在り方」だと思います。

③ コーポレート(ビジネス)マネジメント
コーポレートマネジメントは、組織全体の管理を含む広範なスキルセットを必要とします。MBAなどで学ぶ、経営戦略、財務管理、マーケティング、オペレーション管理、イノベーションやDXやSXなどのトランフォーメーションなどが含まれます。現代のビジネス環境では、企業はVUCAの時代に対応するため、3C(Company, Customer, Competitor)の観点だけでなく、5フォースやPESTEL(Political, Economic, Social, Technological, Environmental, Legal)の観点からも業界全体を分析し、意思決定を行う必要があります。経営者は360度目を見張る必要があり、非常に厳しい世界になっています。

現在はどんなに優れたサービスや製品を持っていても、市場の成長が鈍化している場合、その市場は魅力的ではなく、製品は売れません。また、競合が激しいレッドオーシャンでは、価格競争が避けられず、ビジネスの持続可能性が危ぶまれます。情報も簡単に入手できる現代では、消費者は多くのオプションの中から選ぶことができます。さらに、不確実性の高い時代には、従来のビジネスモデルが崩壊することもあります。昨今のパンデミックで多くのビジネスが危機に見舞われたのは記憶に新しいと思います。

このような世の中だからこそ、包括的にコーポレート(ビジネス)マネジメントを学び、実践することが重要です。まずは組織の在り方を考え、経営戦略を練り、経営資源を有効に活用することで、組織のビジョンを実現し、持続可能な成長に近づくことができると私は考えます。

終わりのないライフワーク

マネジメントの美学は、一度達成して終わりではありません。各ステージでのスキルと知識を継続的に見直し、生涯かけて定期的にPDCAでレビューすることが重要です。これにより、自己実現と組織の成功に向けて常に進化し続けることができます。私もまだまだ道半ばだと思いますが、毎日学びつつ少しずつ実践しています。

次回の投稿では、本日説明したセルフマネジメント、ピープルマネジメント、コーポレートマネジメント各ステージごとの評価基準と具体的なスキルセットについて詳しく探求していきます。
また、AIをいかにマネジメントで活用するかについても書いていきたいと思います。この記事が皆さまのマネジメントについて、少しでもお役に立ったなら嬉しいです。次回もぜひお楽しみに!

【私の自己紹介】
Aki Allen Kaneko
1979年、カナダ・トロント生まれ。日本に帰国後、学校生活に馴染めず高校中退。その後、大検に合格し、26歳の時に青山学院大学に進学。37歳の時にカナダのマギル大学でMBAを取得。

フランスの消費財会社、米国の通信会社、英国のコンサルティング会社を経て、現在はEUの医療機器メーカーでアジアのオペレーションディレクターを務める。また、2020年にサイファーホールディングス株式会社を創業。新規事業コンサルティングやマネジメントコーチングビジネスを展開している。

自らの20年間の外資系での経験とマネジメントを軸に、キャリアアップやリーダーシップなど多種多様なキャリアパスを示し、それを実現するための考え方や訓練方法を推進している。また、グローバルリーダーを育成するためのコーチングセッションや、企業の成長・挑戦を支援するため、ミッション・ビジョンに繋がる経営戦略の策定方法からマネジメントの考え方まで幅広く発信している。ビジョンは周りに良い影響を与えること。

趣味はブレイクダンス、ブラジリアン柔術、読書。最近は生成AIの勉強に熱中している。

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