【大学入試センターに詩を愛しているとは言わせない・08/13】共通テスト2018試行調査・国語第3問の問5について〈前篇〉
理由なき心情はない(はずだ)し、明示された原因が根拠になる(はずだ…)
【問5】
「私はさめる」という心情の理由をきいています。
問2とおなじく、理由を求めてはいる。しかし、問2とは違って、心情にかかわるこのような問題には、2つのポイントがあります。
1つは、その心情を説明すること。
もう1つは、その心情のきっかけとなったできごと、または、その心情がかかわっているものごとを説明すること。
以上の2つが正答の条件になるのです。
とはいえ、この問題は、根拠をみつけるのがたやすいようにみえます。というのも、傍線部をふくむ段落の4つの文に番号をふると、
となるからです。つまり、①の冒頭には、「ただし」という(前述のことがらに条件や例外をつけ加える)接続詞がある。
しかし、①と②のあいだや、②と③のあいだには、接続詞がありません。
すると、この①~③の部分は、ほぼ全体が丸いカッコでくくられた①や②を、③が受けて説明するという組み立てのようですね。
そして、その③の理由を述べるのが④の「何故なら、~から」にあたっています。
したがって、④が理由となって、③や①、②がその帰結になっている、と理解することができるわけです。すなわち、
という流れになっている、ということです。
ところで、この問題は、①の「私」が「さめる」ことの理由を問うていました。そうすると、当然、④や③を根拠とすればよい、ということになるはずです。
【解答】
【選択肢】
・選択肢①の「現実世界においては、造花も本物の花も同等の存在感をもつことを認識したから」というのは、〈「現実世界においては、造花」は「本物の花」と「同等の存在感をも」てないの「を認識したから」〉とあるべきです。
というのも、Xの〈死なないものはいのちではない〉というのは、‘死なない「造花」は「本物の花」のような生命をもたない’ことを意味するはずだからです。正答ではありません。
・選択肢②の「創作することの意義が、日常の営みを永久に残し続けることにもあると理解した(から)」は、第3~6段落の筆者の考え方に近いものですね。すなわち、第7段落で、「ただし」といって、「さめる」以前の筆者の「理解」にあたるものです。その「さめる」理由をたずねているのがこの問題です。よって、正答とはならないはずです。
・選択肢③の「花をありのままに表現しようとしても、完全を期することはできないと気付いたから」というのは、たしかに、Xの〈死なないものはいのちではないから〉に合致するといっていいかもしれません。というのも、Xは、‘造花は自然の花とはちがう’ということを述べているからです。であれば、当然、自然の「花をありのままに表現し」た造花など、つくることができないはずですね。とはいえ、Yの〈じぶんが永遠をめざした作品も短い期間読まれればよいと思った〉ことが欠けています。
・選択肢④の「自分の感性も永遠ではないと感じたから」というのは、Yの〈じぶんが永遠をめざした作品も、じぶんの感性の通用する短い間、読まれればよいと思ったから〉に、ほぼ合致するといっていいのかもしれません。しかし、X〈死なないものはいのちではない〉ことがアルとはいえませんね。
・選択肢⑤の「友人からの厚意を理解もせずに、身勝手な思いを巡らせていることを自覚したから」というのは、たしかに、X+Y〈死なないものはいのちではないので、じぶんが永遠をめざした作品も短い期間読まれればよいと思ったから〉に対応しているわけではありません。しかし、傍線部の直後の「(秋になったら……の発想を、はじめて少し理解する)。」には合致しているようにみえます。
選択肢①や②は、とりあえず誤答だとしておきます。
それに対して、選択肢③~⑤はどうでしょうか。まとめてみます。
…この問5は、「最も適当なものを」「一つ選」ばなければなりません。しかし、選択肢③や④、⑤は、いずれも根拠になりうるところとアヤシイところをもっています。であれば、「最も適当なもの」としてどれか「一つ」を「選」ぶことはむずかしくなってしまいますね…もう一度考えなおしてみましょう。
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