「自性の理解」

    自分に対して素直になる、というよくある言い回し。これは案外難しいのだと気づいた。なぜなら自分とは単数で語れる存在ではなく、むしろ複数としての集合に他ならないからだ。従って自分というのが何を指すかは一意的に定義されるものではなく、自分の中でも知らなかった自分(自性)に気付かされることが多い。つまりは、私が何者かを問うには私を何者かにせねばならないのである。それゆえ、自分を真に理解することは大変な作業である。しかし極限の思考の中で、あるいはふとした何気ない瞬間に、いわば直感的に自身の意思を確信できることがある。不断に変化・生成し続ける自己という存在の、核のようなもの。人生とはそんな自分の核に限りなく肉薄し応答しあうプロセスなのかもしれない。

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