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鳥取でエジプトに行ってきた!
西日本に引っ越してきた。
せっかくなので関東からは旅行の選択肢に上がらない地域を選んで旅をするのだと思い立ったが4月末、手頃に日帰り可能な鳥取砂丘にダーツの矢を立てた。
ちょっと下調べ。砂丘の近くには砂の美術館という砂像の美術館があり今期は「エジプト偏」が開催中であるという。エジプトにはロマンがあるそしてそれは砂で秘匿されている。砂で表現するにはうってつけの国だろう。
ワクワクしてきたではないか。
砂の美術館「砂で世界旅行・エジプト偏」
鳥取市の市街地から10分程車を走らせると「飛砂注意」の黄色い看板が見えてくる。おお!南房総でお会いした珍しい看板とまさかの再会。まもなく砂丘に到着した。駐車場から砂丘の方向は高まりになっていて見えない。砂丘はとっておきとして先に美術館に向かった。
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チケットを買い入場する。でかい!
「砂像」という言葉のイメージで想像していたのが資料館とかにある江戸時代の街並みミニチュアみたいなものだったので、見上げるほど大きいとは思ってもみなかった。
高さは3 mあるだろう。幅と奥行きも相応でボリュームがあり、砂の出す重量感に圧倒された。舐めててすいませんでした。
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すっごいなー、おっきいなー、よくつくったなー、と一通りやっているうちに興奮が収まってきたので、じっくり見てみようかという気分になった。ふと床に置かれた「砂に入らないでください」と書かれている注意書きが目に入った。背景の床のレンガ、注意書きが置かれているだけの床、このレンガすらも砂を掘った模様だと気づいた。
こ、こまかい…!
神殿や像の大きさにばかりに気を取られ、注意書きが無ければ「全てが砂であること」には気づけなかっただろう。
こうしたことで目の蒙きが啓かれ、さっきまでぼんやり見ていた砂像がさらに細かい造形を持っていることが一気に理解されたのだった。
滑らかな像の肌も、ヒビの入った石も、崩れたレンガも、壁画も全部砂。しびれる発見だった。砂の彫りかた一つでこんなにも異った質感を表現できるのだろうか。地球上の物質が100種類の元素だけでできているのをはじめて知ったときのような感覚である。
一つ目の作品で気づけたのは僥倖だった。続く作品もいろいろなモチーフを全く異なる質感で彫刻しており、その違いを見つけるのが楽しかった。作品を照らす照明も質感がより強調されるように考えられているので、写真映えもばっちりだった。
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建物によりかかる女性。開かれた胸元がエロく目が引き付けられる。柔らかい乳房を薄手の服が覆っている。ターバンや上着の深くうねったひだや石積みの建物がひとかたまりの砂から彫りだされているという事実は脳を混乱させる。
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商人が絨毯を広げて価格交渉をしている。絨毯の角を商人がつまんでいるので、厚手の織物は複雑な起伏をつくって立ち上がっている。これもただひとかたまりの砂の山である。これは絨毯ではない。
『イメージの裏切り』である。
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弓を引き絞るラムセス2世。宙に浮いた弓矢を砂が崩れないように表現するため、弓と弦に囲まれた領域から覗く山並みが弓矢ごと手前に突き出すように彫刻されている。斜めの角度から覗くとよく分かるのだが、背景の山並みよりも手前側に浮き出している。砂ならではの技術が見れて面白かった。
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城塞から出陣するサラディン。意気揚々いまにもこちら側に飛び出してこようとする馬。強い立体感を感じる作品だが、奥行きがかなり強調されており上から見るとその薄さに驚く。例えば馬の前足は大胆に大きく、後ろ足は小さくシルエットだけになっている。城門は小さいが、そこから伸びる道は手前に広がって遠近感を強調している。取り囲む人々はよくみるとホビット族のようであり、英雄の偉大さの引き立て役になっている。
そういえばこのような遠近感の強調は会場じゅうの作品にみられた。どの作品からも感じる圧迫感はこのためだろう。会場も非常に広く感じたが、今思えばもしかするとそんなに大きくはないのかもしれない。
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砂の美術館には外会場もあり、エジプトマングースのようなちいさなかわいい砂像が庭のいたるところに隠れていて、それを見つけるのも楽しかった。
砂像というはじめての体験でこんなにも満足できるとは思っていなかった。この砂像は会期が終われば全て崩されて、次の作品に変わるのだという。こんなにも優れた作品達が短い会期で永久に失われてしまう。最後まで砂ならではの表現だなぁと少し切ない気分になった。
会期は2024年1月3日まで。
後悔しないように写真集を買って、砂丘を見に行くことにした。
次回、砂丘偏
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