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それってワークシェアリング?

先日、ある自治体での打ち合わせを終えた帰り際、別の部署に呼び止められた。割と深刻な顔の担当さんの話を聞いていたが、何か違和感というかモヤモヤした話をしよう。

政府は「女性が活躍できる社会、女性が輝ける社会」というスローガンをぶち上げているが、呼び止めた担当さんは正にその推進を命ぜられていて、ワークシェアリングを推奨している。

何に悩んでいるか要約すると、なかなか成果として出すものがないという愚痴なのだが、担当さんの言葉の端々に 時短時短 と、しきりに時短という言葉が出てくる。

ん?ん?ちょいちょいちょい。

ワークシェアリング=時短?

しっくりこない違和感はこれだ!

ワークシェアって時短じゃないよね?それを言うならワークシェアじゃなくてタイムシェアだよね?

疑念が湧いたのでちょっと調べてみた。確かに、勤務時間を短くすることで生活に割く時間が増え、雇用機会が増えるという定義は欧米のワークシェアリングにも含まれている。でも勿論それが本質ではないし、いろんなドキュメンタリーやレポートを見ても、そこをクローズアップしてるものはなかった。

どうやら日本版は、この勤務時間を短くという部分だけが誇張され、拡大解釈されて独り歩きしているようだ。

しかしそうなると、元々あるパートタイム(含 アルバイト)という働き方と一体何がどう違うのか?正規雇用と非正規雇用の違いか?それに伴う待遇の違いか?

さらに言えば、サービス残業が問題となる昨今、今まで支払わなかったものを2交代制にわざわざ就業時間を区切ったり、有休消化すら認めない隠れブラックが企業が暗躍する世の中で、余計にコストがかかるような時短労働を推進するだろうか?

働く方は時短で働けたら、フルタイムよりは働きやすかろう。でも受け入れる企業側はどうだろう。
本来、ワークシェアリングとは、その名の通り1つの仕事を分かち合う、つまり作業分担する仕組みなので、同じスキルの人材が2名必要になる。なぜなら、そういう体制にしないと、他の誰かに負担が掛かってしまい、不公平感が組織内に蔓延化し、仕組みどころか組織そのものが維持できなくなってしまうからだ。

また、高いスキルが要求される業務ほど、リソースの確保やコスト面での調整が難しくなるのは言うまでもない。デザインのように作業分担が馴染まない業務もある。とはいえ、オランダやドイツなどでは成功例もあるので、組織の在り方や導入の工夫次第では有効かもしれない。

結論から言えば、時短という観点からではワークシェアリングを企業が導入する可能性は低いだろうし、時短労働ならパートタイムや契約、派遣などの契約で縛る非正規雇用が既にあるので、正規雇用に切り替えるメリットが企業側にはない。それ以前にサービス残業や無賃金労働がなくならない限り、理想の働き方には程遠いのが現状だろう。

ワークシェアリングが本来の仕事をシェアするというアプローチならば仕組みとしてはアリなのかもしれないが、同時にギャランティや責任感もシェアすることになるので、これまでのやり方では運用も管理も難しくなるだろう。

ワークシェアリングが上手く運用させる鍵となる条件は3つあると思う。

1. 働く者が不公平感を感じない
2. 関係者全員の理解と情報共有を完璧に行う
3. 業務に対して時間的、コスト的なバッファを多めにとる

本来のワークシェアリングという仕組みが上手く稼働すれば、その結果、時短になるという考え方は支持できるが、時短労働のために仕事を割り振るという日本的な考え方は、言葉を選ばず言えば、誰でも取り換えがきく仕事に限られるし、企業にとってのメリットがない以上、この仕組みは導入されない。

この違いが分かるだろうか。一応、担当さんには僕の考えを伝えたが、いずれにしても既存の働き方を改善することの方が先だし、変えられないなら新しい組織を創るしかないだろう。

平等は正しいかもしれないが、いかなる力もそれを実現出来た試しはない
オノレ・ド・バルザック(19世紀のフランスの作家)

『それってワークシェアリング?』ってお話でした。

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