見出し画像

感性が導く旅路。「幸せ」を追い求めたら、哲学があった!|ALiveRallyインタビュー#9

今回は16期春入学の渡部峻亘(わたべ たかのぶ)さん(以下、のぶくん)に、哲学を学ぶため渡航したアバディーン(イギリス)での留学経験を語ってもらいました。

「哲学はロックだ!」
「やりたいことあるならやっちゃえ」
「夢を持って生きられたら、やっぱり人生楽しいんじゃないかな」

「幸せに」生きるために幸福の哲学研究をしているのぶくんから湧き出る、考え抜かれ洗練された真っ直ぐな言葉は、きっと貴方の心に響くはず。

「ああ、これはもう、僕は哲学者として生きていきたい!」と、のぶくんを虜にした哲学の世界との出会いとは。そしてそんな「運命の出会い」の裏にあった、「理性を以て感性に従う」という独自の行動基準とは。

さあ、ようこそ!
哲学者・渡部峻亘の世界へ!!

基本情報
名前:渡部峻亘(わたべ たかのぶ)さん
AIU入学時期:16期春入学
活動内容:AIU正規留学
留学先:アバディーン(イギリス)
インタビュー時期:2022年 8月

「何が僕にとって良いのか」
~根源的な問いと向き合うために始めた哲学~


ーーまず、、、留学先はどこの大学?

A.  イギリスのスコットランド第3の都市、アバディーンにあるUniversity of Aberdeenという大学。

ーーアバディーンって、どういうところ?

A.  イギリスの中でめっちゃ北の方にある地方都市で、オーロラが見えたり見えなかったりするところ。 

ーーアバディーンに留学するって決めたのはどういう理由?

A. 大学3年の時に哲学を本格的に学びたくなって、AIUの哲学の先生にどこの留学先がおすすめか伺ったら “Aberdeen is the best.”って教えていただいて、調べてみたら確かに授業とか学生満足度とかが充実してたから、そこに決めた。

University of Aberdeen

ーーAIUに入った頃から、元々哲学に興味があったの?

A. いや、元々はビジネスに一番興味があって、2年生の頃はビジネス専攻として経営学を勉強しながら週40時間以上インターンとかを頑張ってた。それもかなり面白くて、半年ぐらい取り組んでいたんだけど、やればやるほど「これは僕がすべきことなのか?」とか「僕はどう生きるべきなのか?」という問いについて、立ち止まって考えたいって思い始めた。それで、それまでやってたことを2年生の冬で一旦全部やめて、哲学の勉強を始めたんだ。そしたら、自分がちゃんと考えたいことを考えるのに時間を割けることが僕の性質にとても合ってたみたいで、「これは面白い!」って思えた。その時は秋田の古民家のシェアハウスに住んでいて、周りに山と田んぼしかない日本の原風景みたいなところで友達と語り合いながら、ひたすら哲学をする暮らしが僕はすごく楽しかった。結構本当に、人生で一番楽しかった時期かもしれない。いつも楽しいけどね!(笑)

「もうこれは哲学しかない」
〜「哲学者」という生き方への運命的心酔〜

理性を以て感性に従う


ーー留学中は哲学の学会にも参加してたみたいだけど、、

A. うん。まず、「哲学者として生きることが自分にとって幸せだという仮説を検証したい」「哲学者として色々な人のアイデアを取り込みたい」「哲学の世界を知りたい」といったモチベーションがあって参加しようと思ったんだ。それでネットで調べて、「あ、こういう学会があるんだ!これはいけるぞ!!」ってなった。だけど、いざ行くってなった時に、ちょっと面倒臭さというか、なんか行きたくないなって思った節があって。例えば、学会に行くってなったら、時間やお金の都合上、12時間夜行バスに乗ってイングランドに行って、そのまま学会の1日目に参加。学会後はホステルの10人部屋とかに泊まって、次の日も朝からまたずっと学会。それが終わったら、また12時間かけて夜行バスで帰ってそのまま大学の授業みたいな。それが、まあきついわけで。だから 「行きたくないな」とか思ったりもしたんだけど、「その時の行くのが嫌だなっていう気持ち」と「行かなかった場合の未来に対する嫌だなっていう気持ち」の大きさを比べたら、圧倒的に後者が大きかった。そういう感性を持ってしまったので、もう理性的に今の自分を行かせるしかないと思って行ったんだよね。

ーーなるほど。「その瞬間の行きたくない気持ち」と「行かなかったときの後悔の気持ち」を天秤にかけた結果、行くことにしたという。「気持ち」をもとに「理性」で判断したんだね。

そう!理性を以て感性に従うっていうこと。「やりたくないよー」とか「やった先の未来にワクワクする!」っていう感性と、「人生全体の幸福度の総量を増やすためには後者を優先すべきだよ」って言って感性をたしなめる理性。さらに言えば、「今の気持ちより人生全体の幸福度を優先したい」という感性。これら全部があったから、僕は自分を学会に参加させることになったんだと思う。

のぶくんが学会に行く時によく野宿していたイングランド・シェフィールドのバス停のベンチ。めちゃくちゃ寒いらしい。。

血湧き肉躍る哲学の世界


ーー実際に学会に参加してみてどうだった?

A. 結局、その学会に行くと、それまでほとんど見たことがなかった哲学者という、 遠い存在の人たちがウヨウヨいるんだよ。朝行ったら、哲学者の方たちが入って来て、なんか皆めっちゃ仲良いんだよね(笑)。それで「お、元気か?」みたいなことを言った次には、「最近研究どうだ?」みたいな話が始まって(笑)。

ーーそんな急に?(笑)

A. うん(笑)。それでプレゼンが始まり、それが終わって休憩時間にコーヒー飲んで休んでたら、哲学者たち、その時間もずっと哲学の話してて(笑)。ランチの時間もサンドイッチを食べながら哲学の議論。学会後もビールを飲みながらずっと哲学の話。ディナーでインド料理屋へ行っても、カレー食べながらずっと哲学の話。「ほんとにこの人たち哲学が好きなんだな」っていうのがすごい伝わってきて、血沸き肉躍るというか「こんな人生があるのか、めちゃくちゃ楽しいじゃん」ってもうすごいワクワクしちゃって、、、「ああ、これはもう僕は哲学者として生きていきたい」って思った。その後「でも本当に哲学者を目指して良いのかな。これはかなり険しい道だしなあ。」とか思っても、もう他のことにはワクワクできないくらい哲学に中毒になってしまって。自分が心の底からワクワクできる生き方を見つけられたという点で、めちゃくちゃ良い経験をさせていただいたなって思ってる。

ーー行きたくない気持ちもあったけど、実際参加してみたら血沸き肉躍る哲学の世界がそこにはあった。いやあ、良い経験したね。

A. うん、本当に。最初は学会に行きたくない気持ちもあったし、行かないこともできたかもしれないけど、 実際に行ってみた先には、僕の人生を変える経験があった。そこで僕は哲学者の方々と出会い、哲学者になるっていう夢を抱けたし、この道を極めることが僕にとって幸せな人生だなって思えた。「今のやりたくなさ」ではなく「未来のためにやりたいこと」にフォーカスして自分のやることを選べたのは、本当に良かった。

ーーどうやって生きていくべきかという問いの答えを探すために哲学を始めたら、自分は哲学をするべきだみたいになったのが面白いね(笑)

A. 確かに確かに!

哲学はロックだ!

ロックンローラーのぶくん!!!

A. あと、哲学の道を志したいと思うようになった良い経験がもう一つあって。ドイツのフランクフルトの学会に行った時に、ロックスターみたいな哲学者の方と出会ったんだよね。その人長髪でサングラスしてて、Tシャツ短パン姿だったから、「ロックスターみたいだね」って言ったら、「いや、ロックスターも哲学者もそんな変わんないと思うけど(笑)」って言われて、「確かに」みたいな話で盛り上がったんだよね。
 
ーーえ、ちょっと待ってストップ!(笑)

A.  うん、いいよ(笑)

ーーはい、質問です!
ロックと哲学って、どう似てるんですか?

A. えっとね、、、ロックっていうのは世界、もしくは世間とか社会に対して自分が抱いている違和感を起点として、自分の圧倒的な衝動によって「自分はこう感じるんだ!」「自分はこう考えるんだ!」って主張し抜く行為だと思うんだよ。これって哲学も同じで、哲学者がやっていることって、基本的には、世界に既に出てる答えに対する違和感っていうのがあって、 僕らが感じること、考えることを主張したくって、論文っていうギターで世界の常識をぶっ壊して新たな知識を創造していくっていう営みだと思ってる。だから本質的には、哲学はロックだと僕は考えている。おそらく、そのロックスターみたいな哲学者もそういう意図で言ったんだと思う。

ーーそう聞くと、哲学、めちゃくちゃ熱いね!

A.  うん、僕は昔からロックがすごく好きで、哲学の道に進めばあの憧れのロックスターみたいに生きられるのかっていうところに熱さを感じて「もうこれは哲学しかない」という思いを強めたんだ。

哲学ってとっつきにくい印象があるかもしれないけど、めちゃくちゃ熱いし面白いんだよね。僕は子供の頃から数独とか、そういうパズルがすごい好きだったんだけど、僕は哲学って数独と構造的に同じだと思ってて。

ーー数独と同じ?

A. どういうことかっていうと、数独って最初、ところどころに数字があって、それをヒントに空いているマスを埋めていくわけじゃん。 哲学におけるその最初にある数字っていうのは、今までの哲学者たちが僕らに残してくれた知識だと思っていて。その今まで哲学界の巨匠たちが僕らに残してくれたものを手がかりとして、僕らは新しい知識を見つけていく。そうすることで哲学者たちは、僕らが気になって気になって仕方がない問いに対して、一歩ずつ答えを見つけていくんだ!僕はこれってめちゃくちゃ熱いことだと思うし、すげえ楽しいんだぜって伝えたい!もし読者の方で哲学に興味がある方がいたら、ぜひやってみて、この熱さや楽しさを体感してほしい!!

自分の感性に従え!
〜幸せに生きるための哲学〜


ーーこの記事を読んで「哲学面白そう!」ってなる人がいると思うんだけど、、、 

 一方で、哲学には独特のとっつきにくさが漠然とあると思っていて、すぐに「哲学やろう!」とは中々なりにくい気もするんだよね。すごく雑な質問になってしまうんだけど、そういう人たちはどうしたら良いんだろう。

A. えっと、自分に訊いてみてほしい!

ーー自分に?

A. うん。
面白そうだと思うもの、ここでは哲学を、やってみる自分とやらない自分のどっちが好き?って自分に訊いてみてほしい。それで、とりあえず好きな方の自分になってみようとするのがいいんじゃないかな。とっつきにくくても、やる自分の方が好きなんだったら思い切ってやってみたらいいと思う。答えが今すぐにはわからなかったら、仮説を立ててそれに従って生きてみるのもありだと思う。
それで違和感が出てきたらまた自分に訊いてみたらいいと思うし。場合によっては訊くか訊かないかっていうメタ的(高次元的)な問いを持ってみてもいいかもしれない。

ーーのぶくんの話を聞いていると、自分の純粋な感性に従って行動している印象を受けたけど、その背景にはどんな考え方があるの?

A. 僕は幸福を研究対象としてるんだけど、今のところ、人を幸せにするのは「楽しい」とか「ワクワクする」っていう気持ちだと考えてる。でもそういう気持ちってなかなか作ろうと思って作れるものじゃないかもしれないから、デメリットがない限り大切にしたいなぁって思ってて。

ーーなるほど、自分を幸せにするだろう「楽しい」「ワクワク」 っていう気持ちが行動の指針になってるんだね。

A. うん。全部の気持ちを大切にすることはできないかもしれないけど、自分のその気持ちが捨てて良いものなのか、捨てちゃダメなものなのかっていうのを、自分の心は知ってると思うし、究極的には知ってるのは自分の心だけなんじゃないかな。僕は捨てちゃいけないって思う気持ちに従って生きていきたい!いつまでも少年のままで!

ーー気持ちを人工的に作るんじゃなくて心の中にある気持ちを大切にするっていう考えは元々持ってたの?

A. いや、留学中に大事な気付きがあって、考え方がだいぶ変化した。

ーー気付き?

A.  うん、元々僕はめちゃくちゃ幸せでありたかったんだ。それで、何に対しても幸せを感じられるように全てのものを好きになろうと思ってた。僕が直感的に嫌だって思うものにも何らかの良さがあるって自分自身に思い込ませて、嫌なことに対しても幸せを感じ続けようって思ってた。

ーーなるほど。

A. だけど、そんな風に自分の純粋な感情に蓋をし始めてから、何も感じられないようになって、何をしてもただ日々が過ぎ去っていく感じがあって。すごいどうにかしたいなって思ってたんだけど、どうすることもできなかった。

ーー感情が死んじゃったんだね。

A. そう。そんなときに、エディンバラ(スコットランドの首都)にある、St. Giles Cathedralっていう大聖堂に旅行に行った。大聖堂というヨーロッパの建築の集大成の1つに初めて行って、「おお、これはすごい...!」って、久しぶりに僕の心が動いたんだよね。 

ーー無理やり自分に思いこませたのとは違う、本物の感動だね。

A. そう!そこで、こういう自然に湧き出てくる幸せを大切にしたいなって思った。

St. Giles Cathedral

A. もし苦痛を抑圧していたことが原因で幸せを感じられなくなっちゃっていたんだとしたら、嫌いなものは嫌いでも良いのかな、苦手なものは苦手でも良いのかなと思って。

ーーうんうん。

A. 辛いことは嫌だけど、それでもやっぱり、それを無理になくすことで幸せがなくなっちゃうんだったら、何も意味ないなと思って。たぶん人生を鮮やかにするのって感情で、感情がなかったら、ずっと味のない飯を食べてるような感じで面白くないかもと思って。そこで僕は人生で初めて辛さを受け入れようと思った

やりたいことあるならやっちゃえ!
~とびっきり美味しい人生に出会うための、試食のススメ~


ーー最後にのぶくんの留学経験を通じて、「これから留学に行きたい」とか、「哲学を学びたい」、「なんかやりたいことがあるけど、なかなか1歩踏み出せない」って言う人に向けてのメッセージをいただけたら嬉しいなと思うんだけど、

A. やっぱり基本的には、やりたいことあるならやっちゃえってことかな。ただそれは一時的なやりたいことってだけじゃなくて、 その結果としての未来についても考えたうえで感じる、本当にやりたいこと。それを「やらない人生」 と「やる人生」を想像して、それぞれがもたらす幸せとかリスクを考えた上で、後者にワクワクしちゃうなら、やっちゃえって思う。
それを考えた上で決断して、行動もしちゃえば後悔しづらいとも思うし。

考える時間と動く時間を分けるってのもおすすめかも!考える時間をしっかり取って、場合によっては制限時間を設けて、その時間の中で、これ以上考えられないってくらい全部考え切って、決断する。その後は一切悩まずに思考停止して、動いちゃう!
(のぶくん注:とりあえず動くことのメリットについて知りたい方は、キャリア理論の1つ「計画的偶発性理論 (Planned happenstance theory)」について調べてみるのもおすすめ!)

そうやって動いてみた先に、ずーっと心から楽しいと思える人生が待ってるかもしれない。いろんな幸せがあると思うけど、自分の心がワクワクするような道を見つけて進めたら、夢を持って生きられたら、やっぱり人生楽しいんじゃないかな。僕は人生を通してやりたいことが哲学なのか分からないまま、とりあえず哲学界に足を踏み入れてみたけど、すごく楽しかったし、一生を賭けたいと思えるようなワクワクする人生を見つけられた。

僕は大学生の期間って、人生の試食がたくさんできる期間だと思ってて。食べたいものを買う時にどれ食べたいのか分かんなかったら、試食するじゃん?大学生って、高校以前や大学卒業後と比べて、比較的自由に「試食」をできる貴重な時期だと思うんだ。だから試食しまくってみて、その結果「あ、これはやみつきだな」っていうものを見つけられたら素敵じゃない?僕はそういうものを見つけられて、もう本当に心の底から幸せだなって思ってる。

ーーありがとう、いや、めっちゃ納得する。僕も個人的に色々試食してきたから、

A. そうだね、僕もバクバク試食してきた(笑)

ーーバイキングぐらい食べてる(笑)

A. お腹いっぱいになってください。ほんと、みなさん、ありがとうございました。

アバディーンの日の出

最後にのぶくんから読者の皆さんへ一言

最後まで読んでいただきありがとうございます!まだまだ青二才な僕ですが、この記事を通してみなさんの幸せに少しでも貢献できていたらとっても嬉しいです。
 そして、この記事を読んでくれている、今まで僕の人生に関わってくれたみんな、これまでほんとにありがとう。みんなのおかげでめちゃくちゃ幸せです。これからもよろしくお願いします!
 それから今回のインタビューや記事を担当していただいた、りょうへいくん、たいせいくん、みさきさん、もえさん、しょうじろうくん含めALiveRallyのみなさん、本当にお世話になりました。みなさんのおかげで、インタビューを通して楽しく留学を振り返ることができて、今後の人生に繋がる良い解釈ができました。ありがとうございました。
 一言なのに長くなってしまいましたが、みなさん本当にありがとうございました!みなさんの幸せを心から願ってます!

Interviewer: Ryohei Yamada/Taisei Homma
Writer: Ryohei Yamada/Taisei Homma
Thumbnail Design : Moe Honda


*現在、ライター及びインタビューさせていただける方を募集しています。この人の話が聞いてみたい!などのご意見や、記事の感想等もお待ちしています!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?