おひとり様天国
「娘さんは、一人でいることが平気なんです。この年齢でそれができるなんてすごいですよ。お母さん」
母が、高校初めの二者面談で言われた言葉らしい。
違うんです。先生。ただ友達がいないだけなんです。
日の暮れた茶の間で一人、私と母の間にある虚空に向かって反論した。
当時は一人でいることを指摘されたようにしか思わなかった。
「一人でラーメン屋!?あんた、もう一人焼肉いけるよ!」
一人ラーメンの上は一人焼肉。基準がわからん。
「一人でオランダ!?もう、どこだって行けるよ」
オランダをなんだと思っている。
あの夏の日、ジージーと蝉が鳴く古びた校舎の何十分の1の箱の中で先生が仰った意味もわからぬまま(というか、頭からすっぽりと抜けたまま)華の十代が終わり、煌びやかな二十代に両足を突っ込んでいた。
先生が仰った意味がようやく理解できた。
と、言いたかった。
私はいまだに、集団でしか行動できない人の気持ちがわからない。
一人でラーメンを食べたいなら、食べればいいし、一人で肉も焼けばいい。一人で旅行に行きたければ、どこにだって行けばいい。隣に家族連れがいる?だからなんだ。それは私の人生と関係あるのか?
自由気ままなおひとり様万歳。
こりゃ天国だ。