見出し画像

PGT Ⅲ. PGT-Aの有効性 はじめての体外受精の場合

2016年の1月1日から採卵を開始し1個以上胚盤胞を育てることができた、2113名の患者さんを研究対象としました。最終移植日2019年3月31日、最終出産確認は2019年12月31日です。
初めて体外受精をする患者さんは1249名(初回IVFグループ)、そのうち453名がPGT-Aを受検(PGT-A)、796名はPGT-Aを受けませんでした(非PGT-A)。

PGT-Aを受けない患者さんは若い人に多いことがわかります。


PGT-A受験者の採卵回数は有意に多い。特に高齢になるほど多くなります。


PGT-Aを行うと、胚移植を行うことができる患者さんは減ります。 PGT-Aを行わない場合は胚盤胞まで育てば移植可能ですが、PGT-Aを行うと、検査の結果、移植可能胚が得られない場合があります。移植可能胚が得られない可能性は年齢が上がるにつれ増加します。   


PGT-Aを行うと、移植回数は有意に減少します。


PGT-Aを行わない場合年齢が上がると妊娠率は下がりますが、PGT-Aを行うと、移植当たりの臨床妊娠率(胎嚢が確認できた確率)は、年齢にかかわらず70%近くと有意に高くなります。
ただし、35歳以下ではPGT-Aの有無により妊娠率に差はみられていません。42歳以上のPGT-A受験者の妊娠率が100%となっていますが、移植回数が10回とデータが少ないため結果に偏りがあるものと考えられます。


胎嚢確認後の流産率です。
PGT-Aを行うと年齢にかかわらず、流産率は低くなります。ただし、染色体にはかかわらない不育症がある場合はPGT-Aを行っても流産率は下がりません。


初めてIVFを行った場合、PGT-Aを行わない患者さんのグループの方が出産に至った患者さんの割合は高くなります。特に38歳以下の年齢の若い患者さんの出産率は高いです。
42歳以上のPGT-Aを行った患者さんの出産者割合が高いですが、この年齢の患者数が少ないための偏りと考えます。
PGT-A受検患者グループの成績が良くないのは、IVF開始時点でPGT-Aを希望した背景に、流産を繰り返したなど、何らかの妊娠が困難な事情がある場合が多いためではないかと推測します。


体外受精治療開始から第一子出産までの治療継続時間はPGT-Aを行ったグループで優位に長くなっています。「PGT-Aが出産までの時間を短くするメリットがある。」とは今回の研究からは言えません。
理由としては、PGT-Aを受けたか受けないかだけではなく、PGT-Aを選択した背景に流産を繰り返した経験があるなど患者さんの体質的な違い。折角PGT-Aをするのだから移植する前に複数個の移植可能胚を確保しておきたいと考える。高齢の患者さんの場合は、移植の不成功や流産のリスクが減るのなら移植できる胚が見つかるまで長期間治療を継続しようと考える傾向がある。など、さまざまの要因が絡み合っているのではないかと推測します。



初めてのIVF、PGT-Aを受けなかった患者さんの1回目の採卵後の経過

1回の採卵の後出産される患者さんは多いです。38歳以下の患者さんでは半数以上の方が出産できています。
出産した患者さんの平均移植回数1.35回、移植当たり臨床妊娠率80.2%、流産率7.7%、大部分の患者さんは1回採卵すれば大きなトラブルもなく出産できていることがわかります。
最初の体外受精からPGT-Aを選択する必要性は高くはないのではないのでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?