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愛するものを大切にして、まっすぐに生きる

【岡本 智之さんの場合-第4話】

第3話は、岡本さんが明木の古民家に出会って、地域の方たちと一緒に修繕するところまで。今回は最終話。

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Q.店名を彦六又十郎にしようと思ったのはなぜですか?


彦六又十郎のことは、私も地域おこし協力隊で明木に異動になってから知ったんですが、地域の偉人ではあっても全国的には有名じゃないので、
「興味を持って」と言っても皆なかなか持たないと思うんですよ。
だったら私がこうやって飲食業とかした方が目には止まるんだろうなと。「彦六又十郎」という響きもいいですしね。
ただ、いつかそういう存在になりたいなと思うのは大きかったですね。自分の利益じゃないところでいきたいっていうのもありましたし。

👉彦六又十郎のお話をまだ知らない方は、こちらからからお読み頂けます。

Q.お客さんには「リストランテ&カフェ・彦六又十郎」で、どんな時間を過ごしてほしいですか?


どうやったらこの田舎で、気持ちのいい時間を過ごしてもらうことができるかを考えています。
まずは庭を整えて、カフェタイムには外で食べられるようにしてみました。
オーベルジュはしないとなぁ。この明木で、田舎の美を感じてほしいっていうのはありますね。

Q.オーベルジュは以前からやりたいことでしたね。

はい。日本にいる時からオーベルジュをしたいと思っていましたが、海外に行って古いものを大切にしたり、その地と生きる精神のようなものを肌で感じたことで、より確信に変わりました。
明木にはもうちょっと宿やお店が必要で、私が店をオープンする事で誰か続いてくれたらなあっと思ってたのですが、振り返ってみると誰もついて来てなかったので、ご縁があって、破格の値段+めちゃくちゃ手を入れてくれて売って頂いた古民家を宿にできるよう、DIYで進めて行こうと思います。

Q.岡本さん自身としては、これからどうしていきたいですか?

今、足りてないものは何もないですね。食材に関して、こんなに生産者さんと一緒に動けるところはないので、恵まれてるというか…あとは僕次第というところじゃないでしょうか。
たとえばこうして草をいじってたら、これ食べられるのかなと思うようになるじゃないですか。こんどはスベリヒユとか見てたらこれを考えてみようと思う。次はそれについてばっかり考えるようになって…それを考えながら歩いてたらまた違う食材が現れて、これと合うんじゃないかとか。
ずっと料理のことだけを考えていられるから、その分チャンスが多いし恵まれてるっていうか、既に幸せなんですね(笑)。

店舗は広い庭とつながり、庭は山とつながり、目の前には田んぼが広がる。
彦六又十郎を取り囲む環境すべてが、岡本さんの人生のキャンバスなのだ。

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大抵のものは形にされていて、お金さえあれば、ほぼ何でも手に入る時代。
物欲だけで周りを見れば「あれがない」「これがない」と、人生は足りないものだらけになってしまう。

自然、料理、そして家族。
すでに大好きなものに囲まれて、ただ一心に向き合える岡本さんの人生は、
幸せの本質を掴んでいるといえる。

土にまみれて、向き合っているうちに日が暮れて、
明日には結果が出たり、出なかったり・・。
そういうことを積み重ねながら生きていく。
それが人間本来の姿なのかもしれない。

だから今を生きる者はただ、向き合うものを間違わずに
まっすぐ行けば、それでいいのかもしれない。

死んだ後に何か残るかもしれないし、残らないかもしれない。
いつか、知る人だけが語り継ぐ存在になっているかもしれない。
それは、後の者に委ねていくしかない。

ただ確かに言えるのは、400年前に村人を救い、真っ正直に生きた男たち「彦六・又十郎」は、今日も明木の地で生きている。

「リストランテ&カフェ・彦六又十郎」に3度目の春がきた。

(おわり)