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行動が変われば、見え方も変わる。海外経験が価値観を変えた。

【岡本 智之さんの場合-第2話】

さて、今回はご本人へのインタビューを交えながら、岡本さんに迫っていく。

岡本 智之さん

岡山県出身、1980年生まれ。「リストランテ&カフェ・彦六又十郎(ひころくまたじゅうろう)」オーナーシェフ。

山口県萩市明木(あきらぎ)に築100年&空き家歴10年以上にもなる古民家を購入し、地元住民の協力と自らの手でコツコツとレストランに改修。試行錯誤の末、無事に改修を終えて2021年3月に店をオープンした。

そして、ここが明木の恩人である彦六・又十郎が生きた時代から400年の時を経て、現代に古民家レストランとして蘇った「リストランテ&カフェ・彦六又十郎」。
目の前は田んぼ、裏手は山。穏やかで鳥や蛙、虫の声が響いて一年中自然の豊かさを感じられる所だが、ふだん周辺に人の姿はほとんどない。

Q.どうして田舎でレストランを開こうと思ったのですか?


(岡本さん)田舎がいいっていう発想は高校くらいまではなかったと思います、たぶん。
でも海外へ行くと、田舎でもいい店はいっぱいあるし、僕はそこの空気感がすごく好きで…日本に帰ってみると「あ、この空気感って海外のあそこに似てるな」っていうのがあって。
だったら日本の田舎でだって何かしてもといいだろうなと。海外の色んなところに行ったお陰でそこに早く気づけたということですね。

Q.なるほど…。海外はどちらへ行かれたのですか?


高校生の時、夏休みにクレアバレーへ短期留学して、卒業後にもう少し英語がしたいと思って、またクレアバレーへ行ったんです。幼稚園と小学校で先生をしながら、ワイナリーをちょっと手伝ったり旅をしたりして過ごし、1年ほどで帰国して国内の大学へ通いました。
大学卒業後にまた渡豪して日本語教師を1年間。この時ですね、飲食業をやりたいと思うようになったのは。
日本に帰る前にインドネシア、チベット、ネパール、インド、パキスタン、中国と旅して、上海から船で帰国しました。
それから実家の車屋の手伝いや、英語教室を立ち上げて子供に教えたりしながら、イタリアンのお店で2~3年働いて、27歳の時に自分で店を開きました。

Q.最初のお店はどちらで開かれたんですか?


岡山の街のなかですね。まずカフェを出して成功したので、2店舗目はイタリアンバルを開きました。店はすごく人気だったんですが、流行りなんていつ廃れるかわからないので、5年ほど過ぎた頃、オーベルジュをしたいと思って尾道や丹波篠山を見に行ったりもしました。

Q.店が人気のうちに危機感を抱いて行動されていたわけですが、
ご自身の中では、何か思うところがあったのでしょうか。

僕は当時、まだ本場イタリアのキッチンに入った経験がなかったので、料理の味がこれで合っているのかな、と疑念を抱き初めていた時期でもありました。もし店が廃れた時に自分の技術がないのは嫌だったんです。
イタリアで経験のあるシェフを雇用した時、本場の話を聞いていると楽しくて、自分も行かなくてはという思いに駆られました。
人にもっと教わったり、違う世界を見に行ったりするにはトップの立場では限界があり、思い切って店を売却して修業に出ることにしました。

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流行りの店を手放して海外修業へ。それが後の人生観を変える旅に・・・
修業のためいろんなところに手紙を出し、OKが来た中から選んで海外修業に出かけた岡本さん。
結婚したばかりの妻を伴い、イタリアのトスカーナへ渡ったそうです。

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Q.念願の海外修業はどうでしたか?

最初、トスカーナのキッチンに入った時はもう、動揺が止まらないぐらい。
あぁ、憧れてたキッチンに入ったんだなぁと思いました。
次にピエモンテでイタリアンの修業をして、その後、ポルトガルの高級レストランでフレンチの修業もしました。
初めて飛び込んだ高級フレンチの世界に戸惑いはありましたが、大人数で仕上げるというキッチンのスタイルがかなり刺激になりましたね。力を認めて上へ上へと行かせてくれて、色んなことをやらせてもらえたので楽しかったです。
そのポルトガルで料理人たちが「今、料理を勉強しに行くなら絶対ペルーだよ」とすすめてくれたこともあって、もともと予定にはなかったんですが、そこから調べてペルーのキッチンに入りました。
そして、日本に帰国して1か月後に、ポルトガルの滞在中に授かった子供が生まれて…と、大変でした。

Q.明木に海外と似た「空気感」を見つけたとおっしゃっていましたが、
具体的にはどのようなところなのでしょうか?


例えばオーストラリアのクレアバレー、イタリアの田舎町、インドのダラムサラなどですね。
僕は明木でも、そこにいた時と同じときめきと空気を感じる事ができますが、それを感じた事のない人に、その良さを言っても伝わりません。
僕も行かなかったら気づいていなかったかもしれない。
だから視覚や行動を変える事で、人の感じ方に変化を与える必要があると考えています。その空気感を生かしてどう見せるかで、伝わるんじゃないかと思うんです。

第3話“「やめた方がいいよ”と言われた家に、一目惚れ。」へつづく