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エアオンリーがめちゃくちゃ楽しかった話

※表現の簡略化のため同人誌を「売る」「買う」「通販する」等と表現しています。


先日オンライン即売会の中で自ジャンルのオンリーが開催されたので参加した。新刊を作って通販で売って、他のサークルさんの新刊を通販で買った。

それだけなのに、それがめちゃくちゃ楽しくてびっくりした。

エアオンリーと言っても結局、根本的には通販が同じ日にいっせいに始まるだけだ。たくさん新刊が出るのは嬉しいけど、直接顔を見て売り買いできるわけじゃない。イベント会場の興奮も味わえない。私もそう思っていた。

なのに、楽しかった。

完全にリアルイベントと同じ楽しみが味わえるわけではないし、今回楽しめたのはいくつか条件がそろったおかげだという気はする。それでも、こんなご時勢でも「イベントの楽しさ」を全部諦める必要はない、ということに気付かされた。

それどころか、ここからリアルイベントとはまた違う形の、新しい楽しみが生まれるかもしれない。エアオンリーをはじめとしたオンラインイベントには、その「可能性」が充分にある。

私はその「可能性」がどこに行くのか見てみたくなった。


1.エアオンリーはどう楽しいのか


今回参加した「#エアオキニ」は公開日を決めて通販情報を主催サイトにまとめる(他のイベントだとおそらく「エアブー」なんかに近い)形式のイベントだった。通販情報以外にWeb公開作品も登録できた。調べたが、こういう形式のオンラインイベントはあまりレポが上がっていなかった。

同じオンラインイベントでも2Dのアバターを動かして即売会を疑似体験できる「pictSQUARE(ピクスク)」なんかはレポもよく上がっていて「楽しかった」という声が多い。そちらは参加者の様子がリアルタイムで見られるし、チャットも出来る。私は参加したことがないが、それは楽しいだろう、と予想がつく。

それに比べて通販情報を集約するタイプのオンラインイベントは、一見してそれほど楽しくなさそうだ。イベントと言っても基本的には通販が一斉にスタートするだけ。主催サイトに掲載されれば通販情報の見逃しは減るが、通販なんてボタンをポチッとして決済すれば終わりだし、いつでも出来るので特別感がない。

しかし、当日になったらそんな考えは吹っ飛んだ。


①ツイッターが盛りあがる

今回参加したような形のオンラインイベントには会場というものがないから、あの賑やかな空気を感じることは出来ない、と思っていた。

しかしその日、ツイッターのTL上では「買った」「買えなかった」「完売です」「カードが止められた」などの阿鼻叫喚が繰り広げられていた。そこにはすこし形は違うけれど、間違いなく「会場の熱気」があった。レポを書いたら同ジャンルの方からかなり賛同をいただけたので、その「熱気」は私だけの幻覚ではなかったはずだ。

通販情報がひっきりなしにRTされ、ハッシュタグをたどれば思わぬ出会いもあった。何よりオンリーのタグを見れば、こんなにたくさんの人が同じ作品が好きで、二次創作をしていることが分かるので嬉しかった。

これは自ジャンルのツイッター人口がそれなりにいて、そのなかでも多数がイベントに(一般、サークル問わず)参加していなければ感じられなかったことかもしれない。

それに、TLの構築の仕方によっては盛りあがりを感じることが出来なかったと思う。盛りあがりを目撃できるかは、フォロイーが積極的にイベントについてツイートするかどうかにかかっている。

しかし、逆に言えば条件さえ揃えばオンラインでも盛りあがることが出来る、ということだ。個人的にはそういうTLを持っていない人でも盛りあがりを感じられるように、主催側のツイッターで参加者をまとめた公開リストなどを作るといいんじゃないかと思う。


②「ついで買い」が起こる(かもしれない)

これは私の場合だけかもしれないが、同人誌を買っていくうちにイベントのときのように「ついで買い」が発生した。自ジャンルはジャンル柄、書店委託するサークルさんはおそらくいない。送料は個別に発生するのだから「ついで買い」してもメリットはない。

しかし、TLでは完売報告や「買った」「買えなかった」のツイートが流れてくる。それは新刊をめぐるライバルが可視化されるということだ。事前に調べて「うーん、ほしいけど、どうしようかな」と思っていたあの本も、次の瞬間には完売してしまうかもしれない、という危機感が湧いてくる。

それから、これはちょっと怖いところでもあるが、決済を何度かするうちに段々と気分が高揚し金銭感覚が麻痺してきていた。イベントの興奮で「理性が飛んでる」状態だ。危険もあるが、この状態で買い物するのは極めて楽しい。

そういったことが重なり合って、私はすっかり「迷ったら買う」という心境になっていた。主催サイトやハッシュタグで見逃していた通販情報を知れたこともあって、予定外の本をいくつか買った。どれも素敵なご本で大満足だ。

このように、オンラインでも理性は飛ばせる。ただし帰りの交通費や荷物の重さを気にすることがなくなる分、リアルイベント以上に使いすぎに注意しなければならないとは思う。


参加しやすい

オンラインの一番の良さは、何と言っても参加しやすいことだ。電車を乗り継いだり、人混みを歩いたり、暑さ寒さに悩まされなくてもいい。エアコンの効いた部屋で猫を抱きながらでもイベントに参加できる

大都市から遠くても、家庭や健康の事情があっても、イベントに参加できる。新刊も買えるし、ツイッターを見ればみんなと同じ空気が味わえる。イベントには行けないけど通販だったら、と新刊を出してくれる方もいる。同人誌は出せないけどWebでなら、と作品を公開してくれる方もいる。

同じ原作のファンで二次創作が好き、という点はみんな同じだ。なのに、同じファンの中でもリアルイベントではどうしても機会が不平等になる。遠方だったら遠征費宿泊費がかかるし、事情によっては参加すらできない。でもオンラインイベントなら、リアルイベントには参加できない人でも参加できる可能性がある。

もちろん、オンラインイベントであっても参加できない事情がある人はいるだろう。けれど、リアルイベントよりも広い範囲のファンがより平等に楽しめる機会にはなるはずだ。


2.どうすればもっと楽しくなるのか(+これからの課題)


ツイッターが賑わっているだけでも会場の興奮は味わえるが、オンラインイベントにはもっともっと可能性がある、と私は思っている。

リアルイベントと違って会場の都合や物理的制約に阻まれることなく、イベントを拡張していくことが出来るはずだ。それは単にスペース数の話だけではない。主催サイトに色々な機能を持たせたり、参加者が自分で既存の外部サービスやアプリと組み合わせたりすることによって、更に進化できるんじゃないかと思う。


①外部サービスの併用

例えば、「giftee」を使えば差し入れが出来るし、「プロフカード」では情報をまとめた通販案内ページも作れる。音声通話アプリを使えば参加者同士で交流も出来る。

今回私は音声通話アプリ「mocri」のフリースペース(通話ルーム)を「エアサークルスペース」としてすこし開放してみた。本物のサークルスペースでの立ち話と違って買い物しながら出来るので、なかなか面白かった。

エアアフターも同じアプリで開催した。好きなお酒を準備して、飲みながら話すのは本当に楽しかった。イベント当日ではなく一週間後(イベント主催サイトの掲載終了日)に開催したので、直接同人誌の感想を言うことも出来た。大規模な集まりにするなら「Discord」や「Skype」も人数制限がないのでいいかもしれない。

他にも様々な外部のサービスと組み合わせたら、オンラインイベントはもっと楽しくなれると思う。


②積極的に模索する

エアオンリーを楽しくするために私も色々考えたが、一人の考えでは限界がある。でも多くの人が楽しみ方を考え、試していけば、もっと楽しいことが思いつけるかもしれない。

もちろん、思いつく人がいるだけでは何も始まらない。企画は参加してくれる人がいてこそだ。誰も参加してくれなかったら企画は立ち行かない。

今回のエアオンリーも主催してくださった方たちはもちろん、新刊を出すサークル、買う参加者、Web作品を公開したサークル、それをRTしたりいいねしたりした参加者、イベント中にツイートした参加者など、様々な形でたくさんの人が関わったからこそ楽しかった。

今はまだオンラインイベントを楽しくするノウハウも少ないから、失敗も多いだろう。けれど、試さなければ成功することも出来ない。「ちょっと試しに企画してみようか(参加してみようか)」という人がひとりでも多くなれば(そして得たノウハウをシェアすれば)、よりよいやり方がどんどん見つかるかもしれない。


③課題

もちろん、これは新しい試みだから、可能性もあれば課題もある。今回は主催者も参加者も手探りといった感じだったし、これからオンラインイベントが発展するうえで、議論されなければならない点もあるだろう。

例えば、18歳未満でも18禁同人誌がリアルイベントより容易に買えてしまうという問題がある。これは同人誌通販が元々持っている課題だが、オンラインイベントが盛りあがってきたらさらに重大な問題になると思う。

イベントならば身分証で直接確認が出来るが、通販ではそうもいかない。完全に画面の向こうの自己申告に頼るほかない。より強固な認証方法を同人誌通販を扱うサイトには考えてもらいたい。

他にも新しい試みをしようとすれば、思わぬ課題が立ちふさがるかもしれない。それでも、一つ一つ考えていけばオンラインイベントはよりよいものになれるはずだ。


3.同人イベントのこれから


今回のイベントは盛りあがったが、他のジャンルで同じことをして成功するのかは分からない。ジャンルが違えば、規模も、慣習も、ファン層も違う。どういう形のイベントが楽しいのかは人によっても違うだろう。

しかし結局のところ、色々試して試行錯誤していくしかないのだと思う。そうしてノウハウを積み重ねれば、より楽しいイベントの形が分かってくるはずだ。

オンラインイベントには可能性と、様々なメリットがある。先述のとおり参加のハードルが低いし、おそらく個人主催もリアルイベントよりは容易だ。

出来ることなら、オンラインイベントはリアルイベントの単なる代替ではなく、新たな形のイベントとして定着して、リアルイベントが開けるようになっても存続してほしい。そうすれば同人活動はきっともっと選択肢の多い、豊かなものになるはずだと私は信じている。



ここまで読んでくれてありがとう。オンラインイベントが今後どうなるにせよ、これを読んでくれた方がよりよい形で同人活動を(していなかったら何でもいいので趣味の活動を)出来るように祈っている。

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