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おじぃさまの至福の時

認知症コミュニティのおじぃさま

突然

「うえふぇふぇふぇふえ」と声高に笑い始める

ねたきり1年半
入居10年
認知症歴12年

入居された頃より言葉が支離滅裂

ジェスチャーと聞き取れない言葉のオウム返しでココロを通じ合わせていた

この頃では、一瞬一瞬のおじぃさまからのあらゆる伝達手段に

「これかな?」と予測を立ててのコミュニケーション

だが

時々一人で楽しむおじぃさまを見る

ベッドに横たわり
両手を挙げ何かを掴もうとするその表情は
はにかんでる

壁や天井に向かって怪しげな言葉をかけるその表情は
優しげだ

「ぅぇふぇふえふぇふえ」

その表情は
母親に抱かれてる子どものようだ


巷では『老いると子どもにかえる』と言われるが
かえったのでは無い


おじぃさまが生きてきた人生の中で
素直で無邪気な自分を

取り繕うこと無く安心して表現できる一番の時なのだ

真綿で包まれてるように
暖かく…安心で独り占めできる幸せ感を備えているのが

母親なんだと思う


今も時折聴こえてくる

「うえふぇふえふぇふえ」

そこに
お母さんが見えているのだろう

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