トランジスタ、hパラメータ
トランジスタの機能は、増幅・スイッチングがある。
試験では、特に増幅の特性に関する問題が出題されるので、確認をする。
院試で使用した電子回路の教科書
電子回路・アナログ回路の単位を取ったけど忘れた人
院試で必要となる基本知識を身に着けて、
旧帝大の過去問を解き切るレベルまでに到達させる。
多くの参考書で省略される数式の導入が詳細に書かれているので、
暗記から解放される。
このテキストを読んでから過去問を解くことを薦める。
トランジスタの接地
接地(GND)によって、エミッタ接地、コレクタ接地(エミッタホロワ)など名称がある。
エミッタ接地は電流・電圧・電力増幅を大きくさせて、
入出力抵抗が普通の大きさになる。
その他は、ほぼ1。逆に増幅が小さくなる時がある。
実用性と試験の出やすさは、エミッタ接地トランジスタである。
バイアス回路
トランジスタのベース-エミッタ間の電圧$${V_{BE}}$$は、
pn接合ダイオードとみなすことができる。
要するに、入力電圧が負であると、ベース電流は流れない。
問題を解決するには、直流電流を流せばよい。
トランジスタのベース-エミッタ間の電圧$${V_{BE}}$$は一般的に、$${0.7V}$$前後であり、これよりも低い入力電圧は増幅できない。
※温度上昇で電流増幅率$${h_{FE}}$$は大きく増幅するが、
$${V_{BE}}$$は低下する。
代表的なバイアス回路は、固定バイアス回路、自己バイアス回路、電流帰還バイアス回路がある。
固定バイアス回路
$${I_B=\displaystyle \frac{E_C-V_{BE}}{R_B}}$$
$${I_C=h_{FE}\displaystyle \frac{E_C-V_{BE}}{R_B}}$$
この式から、固定バイアス回路は温度の影響を強く受ける。
自己バイアス回路
別名:電圧帰還バイアス回路
固定バイアス回路と異なることは、$${R_B}$$の位置である。
$${I_B=\displaystyle \frac{V_{CE}-V_{BE}}{R_B}}$$
$${V_{CE}=E_C-I_CR_C}$$
※$${I_B<<I_C}$$とした。
この式から、$${I_C}$$が大きくなると$${V_{CE}}$$が小さくなる。
$${I_B=\displaystyle \frac{(E_C-I_CR_C)-V_{BE}}{R_B}}$$
$${V_{CE}}$$の式から、$${I_C}$$が大きくなると、$${I_{B}}$$が小さくなる。
しかし、$${I_C=h_{FE}I_B}$$だから、
$${I_{B}}$$が小さくなると、$${I_C}$$が小さくなる。
この抑制効果が自己バイアスに相当する。
固定バイアスよりも安定度は高いが、
安定度は高くするには、$${R_C}$$を大きくしなければならない。
電流帰還バイアス回路
ポイントは、$${R_A}$$の電圧を$${E_C}$$の分圧
$${V_A=\displaystyle \frac{R_A}{R_A+R_B}E_C}$$
閉回路より、$${V_A=V_{BE}+R_EI_E}$$
$${V_{BE}=V_{A}-R_EI_E}$$
$${V_{BE}}$$が低下すると、$${I_B}$$は低下して、$${I_C}$$は低下する。
$${R_E}$$を大きくするほど、安定度は高まるが、出力電圧は小さくなる。
一般的に$${V_E}$$は$${E_C}$$の10~20%となる$${R_E}$$を設定する。
抵抗を4つ使い、消費電力が大きくなることが欠点。
等価回路(hパラメータ)
そもそも、Hパラメータは何なのか?
何に使うのか?
定義
Hパラメータは、トランジスタの特性を表し、
2端子対回路において行列で定義される。
※箱$${h}$$は回路の要素でブラックボックスを示している。
この2端子対回路をH行列式(ハイブリット行列)で定義します。
$${\begin{pmatrix} v_i\\ i_o \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} h_{11} & h_{12} \\ h_{21} & h_{22} \end{pmatrix}\begin{pmatrix} i_i\\ v_o \end{pmatrix}}$$
計算をすると、
$${v_i=h_{11}i_i+h_{12}v_0}$$
$${i_o=h_{21}i_i+h_{22}v_0}$$
$${(1)v_o=0}$$
$${h_{11}(=h_i)=\displaystyle \frac{v_i}{i_i}}$$ (入力インピーダンス)
$${h_{21}(=h_f)=\displaystyle \frac{i_o}{i_i}}$$ (電流増幅率)
$${(2) i_i=0}$$
$${h_{12}(=h_r)=\displaystyle \frac{v_i}{v_o}}$$ (電圧帰還率)
$${h_{21}(=h_o)=\displaystyle \frac{i_o}{v_o}}$$ (出力アドミタンス)
fは順方向(foward)
r は逆方向(reverse)
iは入力(input)
oは出力(output)
その後ろにエミッタ・ベース・コレクタそれぞれの接地で添え字が変わる。
$${h_{ie},h_{rb},h_{oc}}$$など
小信号等価回路
Hパラメータを使って、トランジスタの等価回路を作成する。
初めに、トランジスタのみを考える。
冒頭の抵抗やバイアス電圧等を全て取り除いた回路である。
2式を満たす回路を作成します。
$${v_i=h_{ie}i_i+h_{re}v_o}$$
$${i_o=h_{fe}i_i+h_{oe}v_o}$$
一度トランジスタは増幅特性を持つことを思い出してみる。
つまり、小さい(入力)電流・電圧成分が、
大きい(出力)電流・電圧成分になる。
このことから、
入力インピーダンス$${h_{ie}}$$と電流増幅率$${h_{fe}}$$は大きい。
電圧帰還率$${h_{re}}$$と出力アドミタンス$${h_{ie}}$$は十分小さい。
したがって、指示があれば(重要)、
電圧帰還率$${h_{re}}$$と出力アドミタンス$${h_{ie}}$$は無視できる。
煩雑な計算が必要になるが、言及されていなければもちろん無視できない。これが、Z/Y/K行列ではなく、H行列にするメリットである。
ただし、BCE接地で、電流は増幅するが、電圧はしないということはある。
バイパスコンデンサ
図に示した$${C_E}$$は、バイパスコンデンサという。
安定抵抗$${R_E}$$で交流成分が低下し、出力電圧が低下することを防ぐ役割。
また、$${C_1,_2}$$は、結合コンデンサという。
直流成分を遮断する目的で使用される。
増幅回路から交流成分のみ取り出す。
つまり、コンデンサと直流電源$${E_c}$$は短絡。
$${C_E}$$を短絡させると$${R_E}$$は開放するので、
等価回路では考慮しなくてよい。
コンデンサ短絡
$${v_i=h_{ie}i_b}$$
$${v_o=-R_ci_c}$$
$${i_c=h_{fe}i_b}$$
したがって、電圧増幅率$${A_v}$$は、
$${A_v=\displaystyle\frac{v_o}{v_i}=-\displaystyle\frac{h_{fe}R_c}{h_{ie}}}$$
$${R_1,R_2}$$は、関係ないことに注意する。
入力インピーダンス$${Z{in}=R_1//R_2//h_{ie}}$$である。
出力インピーダンス$${Z{out}=R_3}$$である。
低域遮断周波数
コンデンサ短絡させた回路は、中域遮断周波数である。
電圧利得が3dB低下する周波数2つの内、低いものを低域遮断周波数と呼ぶ。
入力・出力結合コンデンサ考慮
初めに、入力結合コンデンサのみを考える。
今回は、$${R_1,R_2}$$も考慮する必要がある。
※試験で$${R_1,R_2>>h_{ie}}$$と指定している場合は、
$${R_1,R_2}$$は無視。(並列で逆数だから0になる)
計算が煩雑になるので、ここでは$${R_1//R_2}$$を無視して、低域遮断周波数$${f_{C1}}$$を求める。
$${|A_{C1}|=\displaystyle\frac{h_{fe}R_c}{h_{ie}}\displaystyle\frac{1}{ \sqrt{1+(\displaystyle\frac{1}{\omega C_1h_{ie}})^2}}}$$
中域周波数から、電圧利得が3dB低下した周波数が低域・高域周波数になる。
$${20 \log_{10}|A_{C1}|=20 \log_{10}|A_{v}|-3}$$
$${\displaystyle\frac{|A_{C1}|}{|A_v|}=10^{-0.15}=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}}$$
ゆえに、
$${\omega C_1h_{ie}=1}$$
$${f_{c1}=\displaystyle\frac{1}{2\pi C_1h_{ie}}}$$
同様に、出力バイパスコンデンサの場合は、
$${f_{c2}=\displaystyle\frac{1}{2\pi C_2(R_c+R_i)}}$$
※$${R_i}$$は出力側に接続した入力抵抗を考慮した場合。
バイパスコンデンサ考慮
$${v_i=i_bh_{ie}+i_eZ_E=ib(h_{ie}+h_{fe}Z_E)}$$
※$${i_e \simeq i_c}$$とした。
出力電圧は、はじめと同じ。
$${v_o=h_{fe}R_ci_b}$$
計算をすると、
$${f_{CE}=\displaystyle\frac{h_{fe}}{2\pi C_Eh_{ie}}}$$
高域遮断周波数
高域では、ベースコレクタ間の接合容量$${C_{oe}}$$を考慮しなければならない。
さらに、ベースコレクタ間電流が流れる。
$${i_{cb}=j \omega C_{ob}(v_i-v'_o)=(1-|A_v|)v_i}$$
$${C_i=C_{ob}(1+|A_v|)}$$
これより、入力側から見ると、$${C_{oe}}$$は、静電容量$${C_i}$$が接続されていると考えられる。(ミラー効果)
$${v_i}$$では考えにくいので、テブナンの定理で電流源に
この場合は、電流比$${\displaystyle\frac{i_b'}{i_b}}$$から求める。
$${\displaystyle\frac{i_b'}{i_b}=\displaystyle\frac{1}{ \sqrt{1+( \omega C_iR)^2}}}$$
$${f_{ci}=\displaystyle\frac{1}{2\pi C_iR}}$$
※$${R=R_1//R_2//h_{ie}}$$
負帰還増幅回路
前章のバイパスコンデンサ$${C_E}$$を取り除いた回路
等価回路から、負帰還増幅回路の電圧増幅度$${A_{vf}}$$を求める。
入出力電圧は、
$${v_1=v_i+Fv_o}$$
$${v_o=-|A_v|v_1}$$
※$${v_1}$$は、増幅回路の入力電圧
従って、負帰還増幅回路の電圧増幅度$${A_{vf}}$$は、
$${A_{vf}=\displaystyle\frac{v_o}{v_i}=-\displaystyle\frac{|A_v|}{1+|A_v|F}}$$
電圧に注目して、帰還率$${F}$$を求める。
$${F=\displaystyle\frac{|v_f|}{|v_o|}=\displaystyle\frac{|i_ER_E|}{|i_CR_C|} \simeq \displaystyle\frac{R_E}{R_C}}$$
増幅回路の電圧増幅$${A_v}$$は、
$${A_v = \displaystyle\frac{h_{fe}R_3}{h_{ie}} }$$
$${A_{vf} \simeq \displaystyle\frac{-R_3}{R_4}}$$
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