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【再掲載小説】ファンタジー恋愛小説:最後の眠り姫(17)

前話

「見て! クルト! 雪で真っ白よ!」
 初めて見た雪に興奮しながら、誰かに教わったわけでなく、雪玉をつくる。そしてクルトに投げつける。
「痛いじゃないか。雪がそんなにめずらしい? 君の生きていた土地と一緒だよ?」
「両親が西へ逃れたから雪は知らないの。こんなに綺麗なんて知らなかったわ」
「こういう事も出来るんだよ」
 クルトが少し大きな雪玉と小さな雪玉を作って上下に載せる。
「雪だるま、って言うんだ」
 そうしてまた小さめの雪だるまを作る。
「これが俺で、こっちがエミーリエ」
「可愛い」
 指でそっと触れる。なんだか恥ずかしくて嬉しかった。クルトの隣にいられるのが嬉しかった。
「嬉しいの? どうして?」
 クルトが不思議そうに聞く。
「わからないの? あなたの隣にいられるからに決まってるじゃない」
 言ってから気づく。自分の気持ちに。兄弟でもなく、親戚でもなく、恋人として好き、という事に。もう。結婚、ね。クルトの優しさに惹かれていた。クルトが隣にいることが当たり前になっていた。そして、それが一番嬉しい事だと。
「それって・・・」
「もう。朴念仁ね!」
 雪玉を作ってぶつける。クルトは今度はひょい、と避けた。
「ほんとにほんと? 俺の側がいいの?」
「そうよ! あなたの隣にいたいの。一生!」
 そう言ってまた雪玉を作って投げる。そして走って逃げる。「ちゅー」と来そうで。クルトが追いかけてくる。ふいに、後ろから抱きしめられた。
「『ちゅー』はなしよ」
「じゃ、こうだ」
 私を振り向かせると予告なしのちゅーが来た。どれぐらい時間が経ったのかもわからないほど、くらくらするようなちゅーが続く。それを壊しに弟と姉がやって来ていきなり終わる。
「あー! ちゅーしてるー! それは婚礼までだめだよー」
「そうよ。乙女に気軽に触れるなんて!」
「いいじゃないか。正式に婚約者なんだから」
 クルトの言葉に二人が私とクルトを交互に見る。
「ほんと? 姉上」
「そうよ。でも、肝心のエンゲージリングがないけれど」
「それは、暖かい部屋で代々伝わっている指輪をあげるよ」
「代々?」
「そう。魔皇帝の妃に贈られた指輪が、君へのエンゲージリングとして伝わっているんだ。それを持つ資格がある人間は一人、君から愛を受けた俺だけだ」
 そういってまた予告なしのちゅーをしかけるけれど、ヴィルヘルムが間に入り込んで妨害する。
「ヴィー!」
 二人で文句を言う。
「男女交際は健全に」
「何それ。どこかの標語みたいに・・・」
「姉上も言葉が随分、上達したね。あとは婚礼の書物を読破ししてね」
「なにそれ」
「ああ。指輪とともに贈ることになっている書物だよ。君の母君がしたためた、君への妻になる女性としての決まり事だよ」
「何、お母様は書いてるの。手紙に事細かに娘のこと書いて、さらに婚礼の決まりもなんて・・・」
「それだけ、あなたが心配だったのよ」
「カロリーネお姉様?」
「まぁ。わからないところがあれば聞きに来てね。ドレスの試着をしましょ」
「お母様になるか、お姉様になるかどっちかにして!」
 クルトと二人きりで雪を楽しみたかったのに、この二人はどこまでもだいなしにしてくれる。
「ヴィー! 雪玉あてるからね」
 そう言うとヴィルヘルムは間から離れて早速、雪玉を作る。負けじと私とクルトも作る。
「二人もなんて卑怯だよー。カロリーネ姉上、加勢して」
「ほい、来た」
 いつまでも四人で雪遊びを楽しんだのだった。


あとがき
まだ、幸せです。次第に外界と接するにつれいろいろな事が勃発。秘密の姫様ゆえ。クルトが全権利を持っているのです。ので独り占めー。いや、兄弟姉妹で独り占めー。親でさえ会わせてもらえないという。

あー。夏風邪が終わらない。おかげで元気いっぱい行動します、ができない。晴れてきたし、メガネは行こうか。外に一度はでないと元気になれない私です。でも、今カーテン開けたら曇り空だな。雨降るんでしょうか。午後からの天気予報を見ないと。

ここまで読んで下さってありがとうございました。

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