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【再掲載小説】恋愛ファンタジー小説:ユメという名の姫君の物語 第二十五話‐ユメ-祈り

前話

 お母様は気丈だった。私と亡くなった娘と混同しかけて泣いていた方だったのに、アレクシスは助かりますよ、と言った。
 なぜ? と問いかけるとあなたがいてくれるからよ、と言って後からきた国王陛下と手術が終わるのを待っておられた。私は、気が気でなかった。私の言動からあの女性の狂気とも言える愛を逆なでしたのでは、と。私のせいで刺されたのではないかと、自分を責めた。涙が出るかと思ったら、感情が凍ってなにも感じる事ができなくなっていた。
 長い時間が流れる。いつの間にか誰かが椅子を持ってきて私達は椅子に座って手術が終わるのを待っていた。どれぐらいたったか、医師が出てきた。
「難しい手術でしたが、無事乗り越えられました。目が覚めればもう大丈夫です」
 医師に詰め寄ろうとしていたのを我慢して立っていたけれど、その言葉を聞いて私は床に座り込んだ。こんな時に涙が出てくる。あとからあとから涙がでる。さっとハンカチが差し出された。お母様だった。
「本当に息子を想ってくれているのね。初めはお芝居だと思っていたわ」
「王妃様!」
「セレスト」
「はい。セレスト様。本当にお芝居だったのです。タイガー、いえ、アレクシス王子はまだ身を固める気がないので縁談を長引かせてうやむやにするつもりだったんです。私も記憶がなくて、戸惑っている所で婚礼どころではありませんでしたからお互いの利害が一致して芝居を続けていました。でも。王子は『幸せにする』とおっしゃいました。そして、愛していると先ほど告白して下さいました。私も王子を愛しています。なのに、私はあの女性の怒りをあおらせて王子は刺されました。私に、王子の妻になる資格はありません。このまま国へ帰って一生独身を貫いてこの罪を償います」
 立ち上がって、立ち去ろうとした私の手をお母様は取った。
「ユメ姫の婚約指輪ね。これが外れない限りは婚約者から離れられませんよ。あなたは今もアレクシスの婚約者。大丈夫。きっと目を冷ますわ。あなたの部屋を汚してしまったわね。代わりの部屋を用意するわ。しばらくアレクシスは眠っているでしょうから」
 そう言って指示を出しに行こうとされるお母様を呼び止める。
「別の部屋なんていりません。王子が目を覚ますまで側にいさせてください。祈らせて下さい。目を覚ますまで」
「本当にあなたはアレクシスが好きなのね。元々あなたのための部屋よ。入って側にいてあげて。私達がいるよりも喜ぶわ。陛下、アレクシスはこの姫に任せましょう。ユメ姫なら奇跡を起こすかもしれませんわ」
「そうだな。息子を頼んだ。姫」
「はい!」
 頼まれるやいなや私はまだ看護師達のいる部屋へ飛んで入った。
「姫様! こちらは私達で診ますから、別のお部屋で」
「陛下と王妃様の許可は取ったわ。ここで祈らせて」
「では、この椅子にお座り下さい」
「ありがとう」
 私は看護師が持ってきた椅子に座ってタイガーの手を握りしめて祈り始めた。
 


あとがき
第二弾、更新です。一応、ユメのシリアスはあったのか、と思いました。しかし、看病している間は本当にあれ、です。そして…とネタバレなので書かないですが。いちゃいちゃと。人工呼吸とかあるんでしょうかね。一応、発達した世界のはずですが。エミーリエほど発達はしてなさそうですけど。
また、次の更新をお待ちください。今日はこのほかにできればしていきたいです。一応、かなりたまってますからね。では、ここまで読んでくださってありがとうございました。

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