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【再掲載連小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(36)再編集版

前話

翌日、まだ眠いまま朝食の席につく。いただきます、と言いかけるとお母様が言う。
「あながた土いじりをしたいと言って、私も考えました。イーロとも相談ししました。タピオとクルヴァを巻き込みましょう。いずれ悲しみが来ます。その時に打ち込むことがあればきっと乗り越えるでしょう。少し離れた街に花の苗を買に行く事もできますからね」
「花壇が作れるんですか? 行きたいです。お花を選んで育てたい!」
 自分でも顔がはじけるように輝くのが解った。何でもいい。ウルガーに報告できるような生産性のある事がしたかった。
「タピオ達にもいい経験になるわ」
「ほら。また。人の事を考える。今はあなた自身のことを考えなさい」
「はい」
 また、やってしまうのね。これもウルガーの性格がうつったのかしら。
「ぜールーマー」
 お母様が地獄の声を出す。
「はい。考えません!」
「それじゃ、朝一番に街には出かけましょう。アーダ、このいたずら兄弟の外用の服はあるのね?」
「はい」
「それじゃ。タピオ、クルヴァ。朝食を終えれば、ゼルマと花を買いに来ますよ。きれいなお花をお姉様に選んであげなさい」
「頂きますは~?」
 食いしん坊のタピオが催促する。
「ごめんね。さぁ、朝食を美味しく頂きましょう。頂きます」
「いただきまーす」
 双子の幼い兄弟はぱくぱくと食事をお腹の中に納めていく。あっという間に食べるとお菓子を催促する。お母様がない、ときっぱり返事する。
「えー。お菓子ないのー」
「タピオ、朝ご飯、さっき食べたじゃないか」
 クルヴァがなだめる。
「さぁ。大お母様と姉上と花を選びに行こう」
 クルヴァがタピオを引っ張る。それがおもしろいのか引いたり押したりする。
「タピオ! ふざけていると置いていきますよ」
「えー」
「お返事は」
「ごめんなさい」
「じゃ、ゼルマも支度してきなさい」
「はい」
 ウルガーと離れて寂しい気持ちを花へのわくわくに切り替えた私だった。ウルガーに会えたら元気な私でいたいから。
「ゼルマ! ウルガーの事は考えない!」
 すかさず、お母様の突っ込みが入る。
「はーい」
 私は木の宮を走って準備に向かった。ミムラサキの宮に戻ったのはいいけれど、大方のものは別の仮住まいに残したままだった。きっと、私がいない間にアーダ達が整えてくれる。それぐらいは解るようになった。姫らしく、なったのかしら? そんな事を考えながら、身支度を調えていた。

 お父様の車、と言っていいのか、馬車と自動車の融合物で近くの街にでた。服装はアーダ達の私服を着ている。こんな場所にきらびやかなドレスは無理。お忍びで木の宮で過ごしているんだもの。
 おチビの双子さんたちは果物やお菓子に目を奪われていたけれど、お母様にしっかりと手を握られていてわがままは叶わなかった。少しぐらいはいいのに、と思っていると、しつけです、と返事が返ってきた。
 活気のあふれる市場を通り越して花屋にいく。この辺はまだインフルエンザの猛威はなかった。首都と離れているからね。一人納得しているとお母様が呼ぶ。
「今、行きます!」
 行けば、タピオが駄菓子を握ってしがみついていた。
「もう。一個だけよ」
 何時の日かウルガーが何かの時に、と言って預けてくれていた小銭を出す。すっからかんになる。
「もう、私のお小遣い消えちゃったじゃないの」
「姉上、お金持ってないの?」
「ええ。大きなお金はぜーんぶウルガーとお母様しか持ってないわ」
「姉上、可哀想。お菓子あげる」
 小さな駄菓子をタピオは一個差し出す。
「優しいのね。タピオは。それはあなたのお菓子よ。自分で食べなさい」
 しばらく迷っていたタピオが今度はクルヴァに差し出す。クルヴァが我慢していたことを見抜いてた。
「タピオ。ありがとう。今度またお菓子もらったら一個あげる」
「うん!」
 幼い兄弟のやりとりにほっとする。そこで気づく。
「タピオとクルヴァを合せても五人兄弟だわ。あと一人は?」
「ああ。赤ちゃんが一人いるわ。同盟で捧げられた姫よ。故郷で逢い引きしていた恋人の子を産んでいるわ。それを陛下の子として認知したの」
「ね・・・年齢差が・・・」
「貴族の中では珍しい事じゃないわ」
 さらり、と言ってのける。つ、強い。あれぐらいならないといけないの? 自信が無い・・・。
「ウルガーは浮気しませんよ。あなたに首ったけなのだから」
「いえ、年を経てばばあになれば可愛い子がきっと好きになりますわ」
「なにをまた・・・。おじいさんおばあさんまで一緒に生きようと言っていた人が。あなた達は間違いなく運命の一対ですよ。さぁ、花屋に行くわよ」
「こんにちわ」
 お母様が店の人に声をかけると一瞬驚愕が走った。それをお母様は唇に人差し指を当ててしー、っと言う。なんとかお店の人の騒ぎは収まった。
「お母様、知り合いなの?」
「よく、木の宮には来ていましたからね。こことは嫁いできてからずっとなじみの店ですよ。この子はゼルマ。ウルガーの妻になる子よ。今度から宮の主人もゼルマが。よろしくしてね」
 お母様がにっこりして言うと、ぽーっと周りは見とれる。動いているのは双子の弟だけだ。
「大お母様。これ野いちごついてるー」
 そう言ってぽきっと取って食べる。
「タピオ! 勝手に食べちゃダメよ。すみません。これ買い取りますね。でしょう? お母様」
「ええ。何を買うかはあなたが決めなさい。お財布を渡しますから」
 ぽん、とお財布を持たされる。ずしっとした重みにいくら入っているのかしら。
私は、店の人にこの国の代表的な花を聞いて、小さなつる薔薇とタピオがかじった野いちごと、いくつかの明るい色の花を買った。
「いい買い物だったわね。女の子は買い物をしているときが一番楽しそうね」
 私が上機嫌でにこにこしているとお母様が言う。
「そういえば、ウルガーとも城下町へお買い物してたな~」
 あの果物屋さんはどうしているだろうか。病に倒れていないといいけれど。アルポおじいさんも。
「今は王宮周辺の事を考えてはダメですよ。また、気持ちが縛られてしまいますからね」
「はい」
 そう言って片方に頭を振って落とす振りをする。それをタピオとクルヴァが、真似をする。
「こら。まねっこはいけないわよ」
 花の入った袋を振り回しながら双子とかけっこする。目の前には中心街から離れて止めた、お父様の乗り物があった。お父様がにこやかに笑っている。タピオがお父様にくっつく。
「だっこしてー」
「いいですよ。タピオ王子。ほうら。高い高い」
 日頃の孫の甘やかしの延長線上のような状況に、ここにも頭にお花が咲いた人がいることを思い知った。
「まさに、じぃじ業してますね。お父様」
「幼い子供は皆、孫のようなものだよ。ゼルマもするかい?」
「いたしません!」
 お父様は軽く笑って運転席に乗る。タピオとクルヴァは助手席を奪い合っていたけれどお母様が乗って二人は私の横に押し込まれた。
「花は何を買ったんだい? ゼルマ」
「内緒。植えてからのお楽しみ」
 そこへタピオの邪魔が入る。
「ぼくねー。野いちごたべたのー」
「タピオ! 今内緒にするって言ったのよ」
「あ。言っちゃった」
「いいけどね。ウルガーの弟にふさわしいお行儀の悪い王子様達ね」
「兄上お行儀いいよ?」
 クルヴァが訂正する。
「あなた達の前ではね。私とお母様の前ではいたずらガキと一緒よ」
「そうなの?」
 ハモって答える当たりが本当に可愛らしい。
「まぁ。ゼルマもよく言いますね。さすがはウルガーが妻と見定めたことのある子ね。そういえば、ゼルマの名前を木の宮にいる間、変えてしまいましょうか。過酷すぎる日常から離れるという意味で新しい名前が必要ね」
「じゃぁ、『それ』、にでもしましょうか」
「『それ』?」
「今の意識の状態が『それ』を表しているんです。現と夢とすれば夢の部分ですわ。『私』は『私』。ただの『それ』」
「言いにくいわね。『それ』とは」
 幼い兄弟はさらに不思議そうにしている。意識とはなんて言い出してもわからないわね。
「では夢の方のゼルマなら『ユメ』と呼びましょう。ウルガーや陛下が悪巧みしている間に私達は絆を深めましょう。ね。『ユメ』」
「あらあら。知ってらっしゃるのですか?」
「当たり前ですよ」
「可哀想なウルガー達」
「調子に乗ってるからです」
 ぴしゃり、とお母様が言って私とお父様が笑う。双子の小さな王子達はなんの事だかまったくわからない状態だけどなぜだかきゃっきゃっとしていた。
 弟が増えて、また私に新しい家族が増えた。大事なものが。と考えたところで、思考をストップさせた。また、怒られる。
「よくわかりましたね。ユメ」
「やっぱりわかりますか?」
「もちろん」
 今度はお父様とお母様が含み笑いをして私は頬を膨らませていた。
 車は一路、木の宮に向かっていた。


あとがき
はい。ここです。「ユメという名の姫君の物語」のネタの出どころは。ここから訳あり後のストーリーを考えていたのにフライングスタートしていくつかは載せました。より心理学の知識が必要でちょっと止まってます。なんせ、心理学の本を手に入れたユメ姫の読書風景を描かないといけないのにユング心理学が遠のきつつある。最近心理学の教養本よんでない。で、止まってます。早起きの本をしばらく前は読んでましたが、朝、起きれません。寝るのも遅くて寝つきが悪い。ついに薬もらいました。半分だけ飲むという。一錠では次の日も残るので半分でもダメなら四分の一にとのこと。早く寝たいがアマゾンが来ない。ついに旧型のパソコンを回収に出そうとしていろいろ画策。あまりに持ちすぎているので整理します。段ボールを間違えてしまいました。明日買いにでかけます。早くカードこないかなー。遅すぎる。コロッケ食べてこよう。執筆気力がでない。漢検やばい。ここまで読んでくださってありがとうございました。

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