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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:氷晶の森の舞姫と灼熱の大地の王子第十七話 凍った心と母の記憶

前話

 大きな食卓を大勢で囲む。
 
 よくこれだけ人が集まったもんだ。
 
 レオポルトは周りを見回す。だが、それだけ味方がいると言うことだ。レオポルトはふいに、涙がこぼれそうになった。凍った心がゆるゆる溶けて無防備な赤子のようになっていた。人のぬくもりにはじめて触れた気がしていた。
「お兄ちゃん? 泣いているの?」
 アデーレの言葉にユレーネがばっと反応して、顔を自分の方に向ける。
「首が痛い」
「泣くときは私の前だけよ」
「ユレーネ?」
「いい? 絶対に絶対に私の前だけよ!」
「あ、ああ……」
 毒気を抜かれ、さらにわからない命令を受けてレオポルトは何が起こったかわからなかった。
「リリアーナの前もだめよ?」
 とどめにそれを突きつける。
「ユレーネ?」
「レオは私だけの人なんだから」
 断言されてレオポルトはくすぐったい気持ちになった。ユレーネは自由奔放で独特な考えを持っている。しかし、これほど独占欲を持っているとは思わなかった。自分もそんな独占欲があるのかもしれない。なんだか嬉しくて微笑む。その微笑みをみてユレーネはつんとそっぽを向く。
「ユレーネ?」
「おにいちゃん。さっきからおねえちゃんの名前しか言ってないよ。ココア飲もうよ」
「ああ。そうだな。飲もう」
 氷の湖の上にいたせいで体は冷え切っている。暖かなココアは胃を温めてくれた。それからいつの日だったか、こんな風にココアを飲んでいた事を思い出す。
「あれは、母上なのか……?」
 湯気に向こうにあった微笑み。思い出を思い出そうとしてレオポルトは自分の中に没入してしまう。忘れなさい、と父に言われていた事を思い出す。亡くなった母は母ではない。忘れるように、と強く言われ、素直な子供だったレオポルトは記憶を心の奥底に封印してしまったのだった。それが、急に溶けてあふれ出す。
「レオ?」
 レオポルトの様子の変化に気がついたユレーネが声をかける。ニコやカールの声もかかる。だが、レオポルトは呪いがかかったかのように身動きができなくなった。アデーレが気を引こうと服の袖を引っ張るが、何故か強烈な金縛りになり、記憶が一気にあふれ出てきた。
 
 母上!
 
 レオポルトは遠い霧の向こうに微笑む母の姿を見た。眩しい光にレオポルトは包まれる。
 
 レオポルトはそのまま意識を失ったのだった。


あとがき

短めです。一話に収めようと書いてたら2000字になって泣く泣く半分に。出勤前にもう投稿してます。今日から交流戦。見るぞーと息まいています。漢検は無事16回分の模擬試験を終わりました。回答率が上がっています。二度目にするテストはさらに上がっています。今日も復習です。また。足のぼやきを書きに昼間出るかもしれません。ついにサポーター買って出勤です。いくらかマシになるかと。こういう話はあとがきじゃないですね。

でも。レオ一辺倒だった書き方がいろんな人物の視点で書けるようになってきました。ユレーネ視線とアデーレ視線を書きました。あとはニコとカール達ですね。これはもっと戦の話にならないとなかなか出ないかもしれませんが。「影の騎士真珠の姫」という作品をNOVEL DAYSで投稿しています。よかったら、この題名で検索してみてください。WordpressかNOVEL DAYSが引っかかります。名前は違いますがそちらが本ネームです。結構乙女乙女ですが。それで、あの人ね、とわかる方もいるかと思います。ほんまに戻らん気だったんですよ。だから、一番の信頼を置いてる方にも知らせていません。ので、また気になったらおいで下さいませ。NOVEL DAYSの方が更新率高いです。Wordpressは忘れきってます。💦

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