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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(82)

前話

 私たちは薔薇園で理性を取り戻そうと躍起になったけれど、もともとデートの場所。逆に戻りそうなので、さっさとお母様のところへ行ってキアラを迎えに行った。
「王妃様にキアラを迎えに来たと言ってくれない?」
 なじみになった侍女頭に目通りを頼む。二つ返事で了承を得た。客間で待つ。
「キアラ、いい子にしたかしら?」
 待ちながら手をもんで心配する。
「俺たちの娘だ。しっかりしてるよ」
「親は恋に浮かれ切ってるのにね」
「それ嫌味?」
「事実よ。薔薇園でも理性取り戻せなかったじゃないの」
「むぅ」
 痴話げんかが始まりそうになったその時、キアラのキャリーバックを持ったお母様が入ってきた。
「なんですか。誰もがうらやむ新婚が痴話げんか始めるとは。エミーリエ、体調は大丈夫?」
「え? あ……」
 昨夜のことを示していた。顔から火が出るほど恥ずかしい。
「今さらですよ。いつそうなってもおかしくなかったのですから。陛下はやっとか、と言ってましたよ」
「うぅ」
 私はうなるばかり。
「エミーリエは心の声が聞こえなくてもすぐわかりますね。そこがいいところだけど。キアラも東に連れて行くの?」
 その言葉に二人で首を横に振った。
「東になんて連れて行ったら何されるかわかりません。お母様とお父様に預けていきます」
「そうね。東はやっかいだから」
「甘やかすのだけはやめてくださいね」
 ニコニコ顔のお母様に念を押す。
「孫娘みたいなものですもの。陛下なんてクルトに仕事を押し付けると言って、ずっとねこじゃらしをふっていらっしゃったわよ」
「出た。激甘のじぃじ」
 二人でハモる。
「激甘ばぁばもここにいますよ」
「姉上がすぐに孫を連れてきますよ。そうすれば、赤子の方に軍配があがります。新婚旅行が終わればあっという間にばぁばとじぃじです」
「だといいのですが」
 少し不安げなお母様の表情が気にかかる。
「この血筋はというより国自体に女児の出生率は低く、男児の数が多いのはエミーリエも知っていますね?」
 何のことだろうかと私はあいまいにうなずく。
「妊娠も珍しいのですよ。私は幸い三人の子に恵まれましたが、クルトとヴィルヘルムの年の差があらわしているように妊娠率も低いのです。ですから、周りもハネムーンベイビーと願をかけて言うのです」
「そうなんですか……」
「でも、幻の血筋のエミーリエなら何か解決できるものがあるかもしれない。聖杯伝説はしってるかい?」
「聖杯?」
 すわ、また聖女がらみか、と身構える。
「幻の血筋は聖杯を持っているという伝承がある。その聖杯から幾多の生命が生まれでるだろう、という伝承がね。おそらく、子宮を聖杯と解釈したと今では思われている。君の血はこの国を大きく左右するかもしれないんだ」
「そんな……。責任持てないわ。国の出生率を変えるなんて」
「エミーリエはそのままでいいんだ。ただ、生まれてくる子に新しい血筋が入ることによって新しくなるんだ。エミーリエはそのままでいいだ」
 クルトが肩を抱き寄せる。
「ご馳走様です。さぁ。キアラを連れてペット道具の店に行ってらっしゃい。クルトから話は聞いていました。キアラ専用の部屋をつくると。これからはその方がいいですからね」
 ぼぉぉぉ。
 顔から火が出る。つまりは夜、キアラを側において魔法の夜は過ごさなくてもいいようにクルトが取り計らってくれたのだ。
「若いっていいわね。さぁ、キアラと一緒に行ってらっしゃい」
「あ。はい」
 差し出されたキャリーバックを覗くとキアラはこの恥ずかしい会話を聞くことなくぐーすか眠っていたのだった。


あとがき
嬉恥ずかしあの後日談でございます。猫飼いながらってむずいわね。それよりサーコがかけたー! するすると書けたのにまた話が伸びた。あと一話で二部終了の予定でした。この話も、まだあるのです。山場が。本来の婚礼まであと何キロ? です。ヴィルヘルムの件が出てきたので、ああ~。100超える~です。ヴィルヘルムの心の闇が出現してきたな~。剣と水晶納めてすぐ婚礼にはいかず、同盟国やらと話が~。新婚旅行かしらね。そこでまた話が出るに違いない。訳ありより進むわ。めでたい事。訳あり、170か150でまだ成婚してないのよ。成婚しなきゃいけない大山もあるのに。はぁ~。読まれない大長編が多い。風響も長引く予感だし。早く終わるのは緑の魔法と恋の奇跡あたりか。しかし、自力作をとりあえず、終わらないと。過去作の格納庫も今度、プロフにID書いておくので見に行ってみてください。完結品のみ出しておくので。

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