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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(81)

前話 

 いつも通り、慎ましやかな朝食を食べていたけれど、デザートがついていた。料理長も知ってたみたい。恥ずかしい。そんな私をからかうようにクルトが言う。
「エミーリエがあんなに積極的とはねー」
 言外に含まれた意味にさらに顔が赤くなる。苦し紛れにクルトにあっかんべーとする。
「どうせ、じゃじゃ馬ですよーだ。お母様の娘だもの。お父様もお母様の愛情にはいつもたじたじだったわ」
「エミーリエの母上はあのおじい様の首にナイフを当てたんだもんね……」
 クルトがしみじみ言う。
「私はいくらキレてもクルトにそんなことはしないわ。愛人作ったら別だけど」
 私の目が剣呑になる。その目にやはり、お父様のようにたじたじとしているクルト。こんなに時を経ても好みは一緒なのね。お母様と。盛大なため息をつく。
「え、エミーリエ。キアラのお迎えに行かないか?」
「行くわ! キアラいない夜なんて、寂しいもの」
 クルトの苦し気まぎれに言った言葉に乗ってきた私も苦笑いする。
「まぁ、夜の一時間ぐらいはお散歩に行ってもらいたいけれど」
「だめだよ。キアラはそのうち専用部屋もつくるからそこで待機。俺もエミーリエとキアラが腕の中にいないと寂しい」
「クルト……」
「君の影だろ? さぁ、迎えに行こう」
 クルトがいつもの優しい笑みを浮かべて立ち上がる。私も立ち上がって一緒にお母様の所に行こうとすると、なんとお姉様がパンを口にくわえたまま突撃してきた。今頃、新居で朝食中では……。
 その後ろからヴィルヘルムやシュテファンお兄様、フリーデもやってくる。目を丸くしているとお姉様ははかじったままのパンをシュテファンお兄様に渡すと私をぎゅっと抱きしめる。
「かわいそうなエミーリエ! 婚礼の式を上げないままこんなことになるだなんて!! 清楚な花嫁姿がずっと楽しみだったのに!!」
「お姉様、仮の婚礼は上げて指輪もはめています。国民向けの婚礼と実際が前後しただけですよ。私もお姉様と同じ人妻になったということ。私はまったく悲観すらしてません。むしろ遅かったわ」
「エミーリエ」
 顔を真っ赤にしているけれど言うことは一人前の私の目をお姉様は見つめる。
「そうね。遅かったわね。長い春だったわね。東の件が収まれば、また幸せな新婚生活が戻ってくる。そのあとは、クルトの望み通り、女の子を産んで」
「ということは、お姉様は自分のお子様だけでなく、私たちの娘にもお人形ごっこさせるつもりですね?」
「当り前じゃないの。この目のかわいいエミーリエの子よ。かわいくないわけがないわ。私はどうも娘は生まない気がするの。根っからの男っ気がある姫だから。私もエミーリエみたいに髪の毛伸ばそうかしら」
 その言葉に強く反応したのは私とフリーデだった。
「思いっきり伸ばしてください。その髪を結いあげて最高のレディにしますわ!! お顔はおきれいですもの。短髪なんて寂しすぎますわ!!」
 フリーデがカロリーネお姉様の肩をぶんぶん言わせている。フリーデが壊れた。
「ヴィー!」
 フリーデ以外の人間が一斉にヴィルヘルムを見る。
「フリーデに何したの!」
 代表して私がヴィルヘルムに詰問する。
「積極的になりたい、っていうから薬を作った」
「ヴィー! 性格は勝手に変えちゃだめなのよ。本人の努力で変わればいいけれど、違う介入で矯正なんてできないわ。解毒剤はないの?」
「あるけれど!」
「出しなさい!」
 クルトとカロリーネお姉様が同時に言う。さすが姉弟の間柄だわ。
「君もだろ」
「私は思っただけ」
「俺にすれば言ったも同じ。ツーカーなの忘れてる?」
「忘れたいのよ!」
 あの流れっぱなしの恥ずかしい夜がよみがえる。あれは私じゃないわ。
「どっちもエミーリエ。みんないろんな顔があるんだよ。ヴィーは姉上にしっかり叱られてもらうから俺たちはキアラを迎えに行こう」
「あ。ああ……。そうね」
 上の空になりかけていた意識を戻す。
「エミーリエ! 頼むから、普通の思考回路に戻って」
「って、言われても……」
 朝、触れた肌がまだ熱いような気がする。一番むっつりスケベなのは私なのかもしれない。
「そうだよ! もう。何考えてるの。キアラを迎えに行くよ」
 クルトが手を引いて歩き出す。
「キ、キアラよね。キアラにもお婿さん紹介しないとね」
「そうそう。その調子。夜は夜。昼は昼なの! 恥ずかしいんだから」
「それ。女性の言葉じゃないの?」
「昨夜、神様が入れ替えたんだ。絶対そうだ。キアラも男の子にされてなければいいねぇ」
 少しからかうような口調でクルトが言う。
「また名前変えるの?」
「心配するとこ、それ? いや、俺たちは睡眠不足の上に、頭のネジが一、二本ぬけてるんだ。キアラを迎えに行く前に理性を拾い集めるよ」
「どうやって?」
 歩きながら話す。
「俺たちの薔薇園へ入って、きっちりと気持ちを落ち着かせて冷静になって迎えに行く。そうだ。今日はキアラの部屋の道具を買いに行こう。執務は昨日の夕方ある程度終わらせているし。エミーリエの方はある?」
「ううん。切りよく終わったわ」
「じゃ、キアラと城下へ散歩だ。新しいリードも買おう。キアラ、気に入ってくれるかな?」
 クルトがかなりのご機嫌。無理してるのかしら。空元気も元気のうちって……。
「俺だってキアラのこと好きだもの。娘を目に入れれてもかわいいという状態だよ。エミーリエは胃の中に入れたいけど」
「もう! ややこしい例えやめてよ。流れてくる映像と言ってる言葉が違いすぎるわ。もう。薔薇園まで競争よ!」
「ちょっとエミーリエ!」
 クルトの声を背に私は走り出していた。私のクルトへの想いももう止められないほど走り出していた。


あとがき
はい、自動作成のイラストは昨日で終わり。今日から自力画像と文章でお届けします。やっぱり長すぎて読まれないのかしら。神様ご降臨!はちょくちょく読まれてるみたいだけど。あちらの過去作格納庫は自由にしてるから自動生成も入れるし。こちらは自力が主に。なので毎日更新がなかなか。ストックが10話あるので、大丈夫だけど。サーコとかまだ書けてない。イメージ作るので大変だし。格納庫は確かID bluesky21734 だったような……。後半の数字を覚えていない。アカウント表見て書き直しておきました。こちらには自由に自動生成のイラストぶち込んだものを置いています。文章は自力。過去作にはAIはありません。それにしても眠い。冬季うつ? 何もできないぐらい眠いです。さっさと寝ようかしら。途中まで最新話を書いていたのですが。そういえば更新もしてないや、と思い出し、これだけはと来た次第です。眠くて何も考えられないので、とりあえず、ここまでで。
ここまで読んでくださってありがとうございました。

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