【共同マガジン・連載・ロマンスファンタジー小説】改訂版 羽根の生まれる街 プレリュード 序章
この世界には背中に羽根が生える特別な人たちがいるという。そんな人たちが織り成す世界の物語・・・。
背中にこぶができて三日。痛みは増すばかり・・・。鎮痛剤も効かない。
「痛い。痛いよ。お母さん」
氷嚢を取替えに来た母親にミリは訴える。
「羽が生えるのは特別ななんだからもうちょっとの辛抱よ」
母親はにこやかに微笑むと部屋を出て行った。できあがったこぶにそっと氷嚢をのせる。
「気持ちいい・・・。冷たい・・・」
翌朝、早朝ミリは叫び声をあげた。
「痛いー!!」
背中のこぶがもりもりと盛り上がってくる。
めりっと皮膚が裂けた。血が飛び散る。
血と脂がまざった羽がばさり、と飛び出てきた。
「はぁ・・・」
荒い息をミリは吐き続ける。
つくんつくんとまだ痛みが癒えない。
母親はそんなミリの羽を刷毛と水で洗い流していく。赤黒かった羽がだんだん白くなっていく・・・。最後には灰色がかった羽根が現れた。真っ白ではないかすかに黒がかっている。羽根にはいろいろな種類があるといえども不吉な色合いにミリは心配した。両親は羽根の生まれたわが子を大層喜んでいたがミリには素直に喜べない気持ちがあった。
「学校・・・大丈夫かな?」
ミリは不安げに問いかける。
大丈夫、と母親は上の空で答える。まるで夢でも見ているようだ。
「ちゃんと答えてよ」
ミリは苛立った声を出して母親はようやくミリをみた。
「大丈夫よ。この世界には羽根の生える人がたくさんいるのだから。私も羽根がほしかった。姉にはあったけれど私にはなくてね・・・」
聞き飽きた昔話に付き合いながらミリは思う。果たして本当に羽根は幸せのしるしだろうかと。羽根を持つものは特別で神聖だという。だが、反対に羽根を持つものを嫌悪する人間もいることも確かだった。
私、今でも人間なの?
素朴な疑問がミリの頭に残った・・・。
学校へ登校する。羽根は小さな、かわいらしい羽根となって背中から飛び出していた。ひそひそと噂話が飛び込んでくる。
「あの人よ。羽根が生えたの」
「気持ち悪い」
「いやね。汚いわ」
「ぞうきんみたいな色ね」
次々と聴かされる言葉にミリは泣きたくなった。ホームルームの担任でさえミリを奇異の対象としてみていた。
ここには私の居場所はない・・・。
ミリは手洗いで涙を水で洗い流していた。私は異端児。ここではやってはいけない。羽根の生えた人間だけが住むところがあるという。そこへ行きたい。思想も何もかも変わってしまった今ではそこしかミリの救いの場所はなかった。
「学校変わりたい」
夕食の席でミリは両親に告げた。
「皆私を軽蔑する。私には羽根が生えただけなのに。変な目で見るのよ。そんな目に見られないところに行きたい。私の居場所がほしい・・・」
切々とミリは訴える。
「そんなところはどこにもないんだよ。よくお聞き。異端視していたのは自分の気持ちじゃないかい? 友達はミリを嫌ったかい?」
父親が穏やかに諭す。
ミリは最後に質問に首を振る。
「ううん。みんな優しくしてくれた。変なことを言う人は私の知らない人ばかりだった・・・」
そう。とミリは振り返った。友達たちは喜んでくれていた。それを嫌がっていたのは自分だった。羽根の生えた自分が醜くて仕方なかった。それは自分で決めたことだった。周りが決めたのではない。自分が・・・。
ミリはそこで気づいた。異端視していたのは自分だと・・・。
私が普通の人と違うのはちょっとした偶然から。だったらそれなりに歩こう。自分の道を。羽根が生えても生えなくても私は私。
大丈夫。
どこかでそんな声が聞こえた気がした。誰の声かわからなかったが自分を応援してくれている羽根のある人々の声だと思った。
やれる。自分なら。自分の道を歩いていける。
うずくまるときもあるかもしれない。泣きたくなるときもあるかもしれない。友達もいなくなるかもしれない。それでも私は私。孤独でも一人でも私を変えることができるのは私だけ。がんばろう。できる間は。
心配そうに見ている両親に向ってしばらく黙っていたミリはにっこりと笑って見せた。
「大丈夫。私は私。そうよね?」
両親はそっとうなずく。
異端者の道。このままずっと続く道。私はそれにしたがって歩こう。できるところまで・・・。
あとがき
今日ハーウェイのスマートウォッチ買いましたが、それによれば就寝時間は11時。越えてしまった。何を言われるやら。フィットビットにあきてアプリ課金も面倒なので、思い切って買ってみたのですが。最低ラインのものなので、どこまで使い切れるか。おかげでのたのた居眠ってたら時間がなくなった。しばらくこれを載せます。その次は何にしましょうかね。共同マガジン参加者募集中です。お申し出があるとうれしいなぁ。と。とっとと寝よう。
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