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【過去連作】恋愛ファンタジー小説:星降る国物語4 第四話 失われた記憶

前話

「うそ!! ジェトが死んだなんて!!」
ジェトが帰ってこないことをアンテが沈痛な面持ちで知らせるとシェリティは泣き崩れた。見ているミズキたちもつらかった。
「まだ初陣には早すぎた。国境の小競り合いが少し大きくなったぐらいと考えていたが・・・。
再度捜索を行ったらこれが落ちていた・・・」
ジェトの剣をシェリティに見せる。シェリティは奪うと同時に抱きしめた。
「ジェト。ジェト・・・」
大好きなジェトがいない。でもわかる。死んでない。どこかで生きてる。
「王様。ジェトは生きてます。わかります。星が告げてます。死んでないって」
シェリティが言うと急に周りがまぶしく光った。星降りだ。
「まさか・・・。ジェトの命のあかしか?」
信じられなという感じで周りを見渡すアンテたちだ。
そこへカエムがやってきた。
「星の託宣を伝えよう。ジェトは生きている。幼き星時経てまた現る・・・と。この星降りはジェトとシェリティのものだ。よく心を磨き絶望から希望へ戻られよ。シェリティ君」
「カエム様・・・。ありがとうございます。信じます。生きてるって」
うむ、といってカエム去っていく。妻のアフェラがシェリティの肩をぽんぽんとたたいて励ますと夫の後を追った。
それから毎晩ジェトの剣を抱いて夜空の星に願いをかけるシェリティ。長時間行っているため夕餉もろくに食べず剣の修業もぱたりとやめた。やせ細っていることを見ていられなかったシェリティ付きの女官、クビラによってミズキたちに伝えられた。ミズキたちはあわてて乙女の宮に駆け付けた。
やせ細った少女が痛々しく思えた。
「シェリティ。体を壊したらジェトががっかりするわよ。きれいな姿をしたシェリティのほうがジェトは喜ぶわよ」
ミズキとシュリンが説得するとシェリティはぽろぽろ涙をこぼした。
「毎日祈らないと帰ってこない気がして・・・」
「祈るのは自由だけど体を壊しては元も子もないわ」
ミズキがシェリティを抱きしめる。シェリティの声が震える。
「ミズキ様。ジェトは帰ってきますよね? 絶対。絶対」
「そうよ。カエムが言ったじゃない。幼き星時を経て現れんと・・・。時間がたつのを待ちましょう。その間シェリティはもっと美人になって好きになってもらうほどになるのよ。一目で恋に落ちるほどに」
シェリティの気持ちはミズキにも痛いほどわかった。自分の世界へ帰ってもそこにはアンテはいなかった。そしてアンテのいる場所に戻った。狂おしいほど願った。そうしたら戻れた。今のシェリティの狂おしいほどの祈りがミズキには伝わった。ミズキのほほから涙が伝う。ほほに何かがあたったと思ったシェリティが見るとミズキの涙がシェリティに触れてた。
「ミズキ様。泣かないで。私もっときれいになるから。星の宮にもまた行きます。シュリンと一緒に修業をさせてください」
シェリティが衣でミズキ様のほほをふく。
「だめね。自分の時を思い出すとまたびーびー泣くわ。今日はおいしい果物を持ってきたからそれを皆で食べましょう。エムシェレもやっと首が座ったのよ。また星の宮で会ったらいいわ」
「はい。クビラ。シュリンから果物をもらってちょうだい。皆で食べましょう」
「は・・・はい。今用意します」
シェリティ付きになって数か月のクビラはあたふたと用意し始めるがドジな女官はあちこちこちにぶつかりながら行動する。
不思議とシェリティから笑みがこぼれた。
「退屈しない女官ね」
ミズキもくすくす笑う。シュリンはその動作が気になってしかたないらしく助け舟をだす。
シュリンはもう二年ほどミズキ付きだがこんなにドジな女官ではなかった。
用意が整った頃アフェラがやってきた。
「女子で宴会をすると聞いてやってきたわよ」
どこで嗅ぎつけてきたのかアフェラが入ってきた。
「あらいいころあいじゃない。歌と舞を披露するのはどう?」
ミズキの提案にアフェラがうなずく。
「歌は適当よ。舞も適当に合わせて」
地方に名をとどろかせたアフェラの歌声にミズキがどこから持ってきたのか舞扇をだす。
「さぁ。さぁ。お客様はこちらよ」
シュリンが椅子を用意してシェリティとクビラを招く。
乙女の宮に声高らかな歌が響きシェリティは安心感からうとうとし始めた。
「シェリティ。今日は私たちが乙女の宮にいるから、ゆっくり眠りなさい。目を覚ましたらシュリンがおいしい夕餉を作ってくれるわ」
静かに歌と舞を終えてミズキがいう。
「そんな。ミズキ様には星の宮が・・・」
「いいのよ。アンテに任せてきたから。ゆっくり寝なさい」
寝台に導かれてシェリティは夢の中に落ちて行った。

ジェトが行方不明になってから一年後。
どんなに国境付近を捜索してもジェトはいなかった。
だがカエムの託宣と星降りを信じてやまないアンテ達は聞き込みも欠かさなかった。
その中で有力な情報が手に入った。旅の一座にジェトそっくりな少年がいる情報だった。ミズキとアフェラはまさかともいつつちょうどアンテの誕生日が近いこともあって宴の席にその一座を読んでみることにした。一座が滞在しているところをカエムから聞き出したアフェラとミズキは一座をこっそり尋ねた。
「女将さん!!」
ミズキとアフェラはやっぱりという思いとまさかという思いでいっぱいだった。
「あら!! ミズキとナナじゃないかい。元気にしてたかい?」
こともなげに受け入れた女将にミズキもアフェラも次の瞬間突撃して聞いていた。
「ジェトはいませんか?!」
「ジェト? ああ。いるよ。国境付近で行き倒れいた子じゃなかったかねぇ。身に着けているものからジェトと名前判明したけど記憶がなくてね。力がありそうだし剣もつかえるようだから用心棒としていてもらってるけどその子がなにかしたのかい?」
「記憶喪失?! すぐに会わせてください」
前に乗り出すように勢いついたミズキとアフェラに押されつつ女将はジェトを呼びに行った。
「俺に何か用ですか?」
やってきた少年はやや背が高くなったジェトその人だった。だが記憶喪失。本人確認ができない。
「ジェトよね? 何か覚えていない? あなたは私の義理の弟なのよ」
ミズキが尋ねる。
「弟? 俺に家族がいるんですか?」
腑に落ちない風のジェトにアフェラもミズキも困る。
「本当に何も覚えていないの?」
「はい」
「とにかくジェトは王宮に来てもらう必要があるわね。シェリティもアンテもカエムもいるのは宮殿だもの。女将さん。この子をいただいていいですか?」
アフェラが交渉にでる。
「用心棒がいなくなるのは困るけど記憶喪失ならあんたたちまかせようかね。でもただじやれないよ」
ただでは引かない女将である。
「お金なら持ってきてるわ。人ひとり分はあるはずよ」
アフェラが金貨がずっしりと入った革袋をわたす。
「さすがナナはしっかりしてるね。ミズキも元気そうでよかったよ。ミズキはやっぱり星の宮に行ったのかい?」
「はい。もう娘もいます。エムシェレといいます。一才になります」
「そうかい。玉の輿かね。ミズキからももらえるのかい?」
「もちろん。しっかりこちらのものを」
アフェラと同じく革袋を渡す。
「ありがとさん。じゃ。ジェトをよろしく頼むよ」
「はい。じゃぁ。ジェト。行きましょう」
アフェラがジェトの腕を取る。
「え? どこにいくんですか?」
「決まってるじゃない。宮殿よ」
アフェラが先頭を切って強引にジェトを連れて行く。
「カエム?! カエム?! どこにいるの?!」
「そう大声を出さなくても私はいる」
背後から声をかけられてミズキはびっくりする。アフェラはいつものことらしい。別段驚きもしない。それよりもジェトを突き出す。
「ジェトよ。顔も何もかもいっしょよ。でも記憶がないの」
その言葉に面白そうに反応するカエムである。
「ほう。この私を見ても気づかないのか。シェリティを呼べ。星の宮で記憶の召喚を行う。シェリティにはジェトの剣を持ってくるように」
ささっと星読みの宮から役人がうごいて乙女の宮に飛んで行った。


あとがき
これだけ五話まであります。五話の見出し画像が消えてまたつくりに行かねば。バックアップ取ったのに。なぜか消えている。今、探してひえーとなりました。幸い、ダウンロードしたときのが残っていてコピーしてフォルダに入れました。これはWordpressのメディアのサイズなので流用できるんです。noteでは勝手に縮尺してくれてます。明日でジェトとシェリティの恋物語も実を結びます。お楽しみに。ここまで読んでくださってありがとうございました。

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