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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:氷晶の森の舞姫と灼熱の大地の王子 第九話 花嫁の条件

前話

「待たせたか?」
「別に。さぁ、行きましょうか。帽子はちゃんとかぶったみたいね」
 ああ、とレオヴァルトとなったレオポルトは言う。
「ここに来るときは髪の毛を染めたりしていた。この髪の色が目立つのは自覚している。アデーレ、いや、リリアーナも染めてやらんとな」
「良いお兄ちゃんなのね」
「両親がろくでもないんでね」
「それについてはお悔やみを申し上げるわ。でも、だからこそ、地下組織が作りやすかったみたいね」
「地下組織?」
「焔煌の誓いの団よ。ニコが中心みたい。本人はまだ知られたくないようだったけれど、いずれあなたはその真実にたどり着くわね」
「そうか……。ニコが……」
 
 どいつもこいつも、俺の国はもうダメだと思っていたのか……。
 
 自分も同じだが、自ら生まれた国が朽ちるときと思うと憂鬱だ。
「なんて顔してるのよ。二国間の争いを取り除けばどちらの国もあなたの国よ」
 千里眼のように見抜くユレーネにレオポルトは驚く。
「争いなんて止められるのか?」
「私とあなたが無事結婚できたらね」
 さらっと良いのけるユレーネにただただ、驚くレオポルトである。
「花嫁の条件って……」
「さぁ、我が家にどうぞ。私と両親はあなたを歓迎して迎えるわ」
 気づいたら、城門を越えていた。そして案内されるままに行くと国王夫妻が座っていた。帽子を慌てて取り、レオポルトは跪く。
「陛下並びに妃殿下にはこの度の混乱、申し訳ありません。我が国の腐敗は至る所にあり……」
「陛下、など堅苦しい呼び名はいらぬ。婿で息子になるのだからな。さぁ、そこの椅子に座りなさい」
 王妃が椅子を引いて示す。
「あ。すみません」
 レオポルトは申し訳なさげに言うと椅子に座る。ユレーネも向かい側に座った。
「で、花嫁の条件って、たった一つだけなの。私が母のように国一番の舞姫になるまでは婚礼の式は挙げない、という事を守って欲しいの」
「って。何年もかかることじゃないのか?」
 その間、あの国を放置しろと? レオポルトはイラッとする。
「ユレーネの腕前ならあと一年か二年もすれば完全な舞姫になりますよ」
「王妃様……」
「お母様、今はお母さんがいいかしら? ユレーネはアデーレ姫にお姉ちゃんと呼ばせてるだろうから、私も一般家庭のようにお母さんでいいわ」
「いいわって……」
 ユレーネそっくりの自由奔放さで言う王妃、エレナにあっけにとられる。
「それが、婚約指輪なのね。うらやましいわ。相手の作った指輪をはめることができるなんて。この人は不器用でまったくできないんですから」
「わるかったな」
 目の前で夫婦げんかを始める国王夫妻にレオポルトはまた、あっけにとられる。
「これが我が家の実の姿よ。私は普通の家庭で育ったも同然なの。お姉ちゃんって呼ばれるのが夢だったわ」
「って、ほんとーに、俺でいいのか?」
 自信なさげに聞くとユレーネはころころ笑う。それが鈴の音の様で思わず聞き惚れる。
「だって、はじめて会った時から好きだったもの。でなきゃ、満月の夜になんて呼ばないわ」
「って……」
 国と国の政略結婚と思っていたレオポルトはまたびっくりする。
「恋愛結婚、てか?」
「あたりー。だから、デートもイベントもちゃんとするのよ」
「これから戦中になるぞ」
「大丈夫。あなたのように二国間の争いを終わらせようとしている人はたくさんいるわ。あなたの国のニコのようにね。カール大臣だったかしら? あの方もいち早く、あなたがこちらに突撃してくるって教えてくださったのよ。あの方、独身?」
 突拍子もない事を聞かれてレオポルトは拍子抜けする。
「独身だが……。また誰かと見合いをするのか?」
「わからないわ。舞姫の親友は一人だけだもの。あの子はニコがスキなのよ。まさかあなたの親友とは知らなかったけれど……」
「で、話を戻そう。我が国には舞姫団しかいないが、君の国には剣舞がある。婚礼の時に二人の舞を合わせて踊れば、二国間の友情が続くことが示せる。どうだ? 二人で舞を極めるのは」
「舞を?」
 国王、ヴァルターが言う。
 てっきり剣を持って戦いに行くのかと思っていたレオポルトはそこで、また驚愕したのだった。
 
 この王家は何を考えているんだ?
 
 呑気な氷の国の国王家族に拍子抜けしてレオポルトはユレーネ達をじっと見ていた。


あとがき

また書き忘れてました。今日は一日寝込んでました。書いた物の、なかなか載せる時間がありませんでした。あの野球中継すら途中放り出すほど胃が痛んだので。いつの間にか寝ていて九回裏のサヨナラヒットを見れて満足です。やるやん。ルーキーよ。と言う所です。
このお話もトントン拍子に。もうひとつの本ネームでしてるものも割と展開が早いのですが、こちらはかなりのスピードで進んでます。あっという間に戦争かしら? デートかしら? この緊張している時期にデートって。ユレーネの心臓には毛が生えているのか? まぁ。自滅なんですけどね炎の国は。焔煌とかいて「えんこう」と読みます。でも「えんこう」で出してもでません。ほむらと書かなきゃ最初の字出ません。これも辞書登録しておこうかな。最近、読んで頂けてるようでありがたいです。スキお待ちしております。七割か五割ぐらいの格率でフォロバもいたします。フォローお待ちしております。


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