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【連載小説+エッセイの勉強】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(72)

前話

 スティーナとトビアスにもらった元気で心に明かりがともった私は、ウルガーやダーウィットお兄様、マティアスお兄様に交じって春祭りの施策を考えることとなった。ウルガーはこもっているよりはいいからと強引に引っ張る。心が少し楽になっていた私は連れられるままカシワの宮へ来た。アウグストお兄様もいる。
「はい。母上からの宿題」
 さすがにこの人員の中で膝にのせて執務をする気はないらしく、私が座ったテーブルの前にどん、と冊子が積まれた。
「何これ?」
 ページをめくるとドレスが並んでいる。
「この中から好きなドレスを何着か選ぶんだよ。母上が決まったら来なさいって手ぐすね引いて待ってるから」
「って、この量尋常じゃないわよ」
「婚礼準備が進まないからこれを集めてストレス発散してたようだね。母上の気持ちを受け取って」
「気持ちって……。これだけの量見るのに何日もかかるわ」
「それはそれでいいよ。じゃ、あとよろしく」
「ってウルガー!!」
 叫べどもお兄様方と協議に入ってろくに聞いてくれない。しかたなく、ページをめくることとした。

「終らない……」
 私はいつまで経っても終らないカタログにため息を付く。ウルガーはお兄様達と集中審議中で何も気づかない。
「まるで春のパン祭りみたいね……」
「何? パン祭りって」
 ふっとつぶやくとウルガーが言葉を拾ってきた。
「こっちの独り言よ」
 過去世、セリの記憶の中の事。もう、どうでもいい世界だわ。
「そう……」
 私の返事でセリの記憶から出た言葉とウルガーはすぐに察知したよう。物分かりのいいことで……。だけど、他の三人のお兄様方が一斉に私を見ていた。私はびっくりして動きが止まる。
「な、なんですか?」
「今、パンと言ったか?」
 マティアスお兄様が聞いてくる。
「ええ。言いましたけれど?」
「それだよ。ゼルマ姫。大人から子供まで食べれるものは!」
 ダーウィットお兄様が言う。
「ウルガー様。花とパンの祭りにいたしましょう」
 アウグストお兄様も明るい表情をして言う。
「花だけでは男性は喜ばないかもしれないからね。パンもいいんじゃない?」
 ウルガーは面白くなさそう。どうしたの?
「ゼルマ姫に蹴飛ばされたから面白くないんだよ。ウルガーは」
「蹴飛ばしたって……。独り言まで独占しなくても。ただの一欠けらの記憶なのに」
「一欠けらでもなんでもゼルマの言葉は独り占めしたいんだよ。ウルガー様は。焼けますねぇ」
 アウグストお兄様も言う。
「え? 今のですねたの?」
「俺に異常はない」
 額に手を当てて熱を測るとウルガーがブスっとして言う。
「だったら、そっちの審議に入れてよ。いつまでもカタログ見てても退屈だわ」
「三人の男と共有するつもりはない」
「って。お兄様方にやきもち焼いてたのー?! ウルガー。可愛いー」
 思わず抱きしめる。
「ゼルマー。ゼルマを膝にのせて執務したい」
「ウルガー。タピオやクルヴァの教育上良くないことはしない方がいい。そのうち来るぞ」
 ダーウィットお兄様が言う。
「え? タピオ達も計画にはいるんですか?」
 ウルガーの頭をなでなでしながら尋ねる。ウルガーは思いっきり抱き着いて独占欲を発揮している。懲りない人ね。
「王室の育てている花を一輪ずつ、集まった人たちに配るんだ。花と言えば、トビアスも関係してくるな」
「花を……。そんな大量の花、この王宮にあるんですか?」
「さぁ?」
 三人のお兄様方が答える。
「花屋からも買うよ。そうすればそこも潤う」
「ラッピング、だれが……。もしかして王宮総出で?」
「あたり。だからそんなにこった料理は出せないとさっきから煮詰まっていたんだ」
 マティアスお兄様が言う。
「それに、パンならアルポおじいいさんでも子供たちでも食べられる。ゼルマはなんて賢い姫なんだ」
 胸のあたりをもふもふと顔をうずめてウルガーが言う。
「教育的指導ー!」
 ダーウィットお兄様が笛を吹く。どこから出したのかしら。
「年頃の男の子ですから」
 頭にお花の咲き乱れたウルガーが顔を上げて言う。そこへ、末弟たちの声が聞こえてくる。
「はい。ほっぺたにちゅー。今日はこれで我慢して」
「うん」
 にへら、とへたれウルガーが出現する。
「ウルガー。顔が崩壊している。元に戻せ」
 マティアスお兄様がつつく。と同時に弟たちが入ってきた。
「お野菜配っていいー?」
 ふっとウルガーの顔を見るともうなんでもないように澄ましていた。さすがは切り替えの早い王太子。世渡り上手ね。
「お野菜は少し大きくない?」
 タピオが持ってきたカボチャをもらいながら私は言う。
「トビアスのお花あげるー」
「まぁ。トビアス。優しいわね」
 頭をなでるとにへら、とウルガーそっくりにヘタレ顔になる。この子はウルガー二世だわ。
「それじゃ、それを計画書として書き出さないと。いつまでだっても終わりませんよ。あーだこーだ言ってても」
「まぁ。そうだな。ウルガー。まとめておいてくれ。タピオ。クルヴァ。トビアス。大兄と花の様子を見に行こう」
「行きましょう」
「え?」
 お兄様方が弟達をつれて出ていく。
「ありがとう。兄上たち。さぁ。ゼルマ一緒にドレスを選ぼう。ずっとこうしたかったんだよー」
 そう言ってカタログを持ってくると私を膝の上に乗せる。
「ドレス。ゼルマはどれが似合うかなー」
 落ちそうになるのでウルガーの首に両手をかけてバランスをとると仕方なく、私もドレス選びに移る。ひとりで見るのと二人で見るのとは少し違う。私もウルガーが足りなかったみたい。一緒に見るのが楽しくなっていつまでも一緒にカタログを見ていた。


【あとがき】
いちゃいちゃしてます。なぜか二千字超え。いちゃつくだけで。うつ病だし。しかし、食べれるけれど発酵のいるパン作れる人そんなにいるの? 春と言えばこれだけど。これ以上いう事ないです。はい。たまにはあまーいケーキですんませんです。続いてエッセイの勉強いきま~す。


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