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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(57)

前話

 日増しにわが国へという招待状は増え、さらには、署名やら嘆願書が小さな村や町からも届き始めた。もう、婚礼準備どころじゃない。とりあえず、聖女伝説を払しょくする必要があった。それに手間取られ、婚礼準備は中途で止まっていた。私はこの婚約時間を延ばせて満足だったけれど、お年頃のクルトには口を開けば文句しかでなかった。婚礼が延びるなんてと。そして、その代わりのように用意されて先にカロリーネお姉様の婚礼が行われることとなった。今日は、カロリーネお姉様のウェディングドレスを兄弟であつらえてプレゼントする企みを企てる日。ヴィルヘルムと落ち合って、クルトの執務室の扉を開けた。
「クルト?」
 目の前には招待状やら嘆願書やらの山でクルトが見えない。だけどクルトがうなされている。机に突っ伏して寝てしまっているよう。『もう、書けません』とかなんとか言っている。私は回り込んで頬に軽くキスをする。逆ちゅー。それだけで、がばりとクルトは起き上がった。
「エミーリエ。ちゅー」
「いたしません。起きたから」
「ええー」
「兄上。恋人の語らいは二人きりで」
「ヴィーいたのか」
「いたのか、ではありません。姉上のドレスを決める日ではないですか。いつまでも決めないと兄上の婚礼もやってきませんよ?」
 ヴィルヘルムの言葉に背筋が伸びるクルト。そんなに結婚したいのかしら。今だって同じ宮殿にいて一緒なのに。
「主寝室が寂しいの。エミーリエの分の幅もあるから。って、弟の前でする話じゃないじゃないか」
「口を開いたのはクルトよ」
「兄上、お年頃はわかりますが、慎んでください。フリーデが倒れそうです」
「あ。フリーデも来たんだ。よいよい。みんなで決めよう」
 そう言ってウェディングドレスのカタログを山ほど持ち出してくる。
「何冊持ってるの」
「君と結ばれると知ってちまちまためてきたの。なのに、姉上と母上で決めて。一目も見れないんだから」
「それは見てのお楽しみ」
 ちぇっ、とクルトがすねて周りが笑う。そしてめいめいにカタログをいじりだす。フリーデとヴィルヘルムは仲良く同じカタログを見ている。私とクルトは一緒に見ない。同じものを見るときもあるけれど、自由意思を大事にしているクルトは私の意見を尊重してくれていた。
「兄上と姉上っていつもそうなの? 一緒に同じことしないの?」
 それぞれカタログのページをめくっている私たちにヴィルヘルムが聞く。
「遠乗りとか一緒に行くけれど、なんでも行動は一緒じゃないわ。それぞれ人格があるんだから」
 へぇ~、とヴィルヘルムが驚く。
「キアラの散歩は一緒だよね?」
「だって、私たちの猫だもの。二人で育てているのよ」
「そうそう」
「なんだか熟年夫婦だね。若い夫婦はそんなに達観してないよ」
「熟年って……」
 クルトもぶぜんとする。
「エミーリエはかわいい女の子なの。ばばぁじゃない」
 さすがにフリーデが文句を言いだす。
「姫はばばぁではありません。大事な主です。言葉を慎んでください」
「あ。ごめん。フリーデ。そうだよね。エミーリエは美しくてかわいい姫だよね。もうすぐ新妻になる」
 新妻、でクルトの頭のお花が咲き乱れる。何を想像しているのやら。不思議とクルトの思考はあまり流れてこない。どういうことかしら?
「王太子として心の鍵はかけるように育てられたんだよ」
「クルト!」
 また読んで。一気に不機嫌になる私の肩を抱き寄せる。
「機嫌を直して。愛しい人」
「ちょ……」
 ちゅーがやってきそうになってとっさに顔をそむける。クルトは私の後頭部とちゅーする。
「いい香りだ」
「おふざけは後! 今はお姉様のウェディングドレス選びよ」
 デコピン制裁を発令させて私は離れる。
「わかった。後ならいいんだね?」
 その不穏な笑顔が恐ろしい。これじゃ、もう妻じゃないの。
「妻だもん。内縁の妻。昔は相性を見るためにそういうのもあったそうだよ」
「ストーップ! 痴話げんかは後でして。もう一斉に気に入ったページを一気に出して。いい加減決めないと!」
 さすがは魔皇帝の魂の持ち主。リーダーシップは兄よりたけていた。ちぇ、とクルトがすねる。
「すねるのもあとにして。いい。せーので出すよ」
「せーの!」
 ばさっ。
 示したウェディングドレスは見事に好みが分かれていた。地獄の作業になりそうな予感にめまいを覚える私だった。


あとがき

今日はエッセイを更新しましたが、小説も更新日です。京都駅、帰ってくるときにぱかーんと晴れて、なんだ? でした。運がないな。宝くじにもってかれた。
疲れた。でも、考えるだけって面白いなー。学生時代講義に出ていた気分。さて、母上が台所でPCをしてると怒るのでないない、と。ほんとは昨日打ってた部分ネタがあったのに二千字になって途切れました。またあとで書きます。一日一話書いてます。では、また。ここまで読んでくださってありがとうございました。


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