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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(52)

前話

 厩で馬を馬番に預けると私たちは急いで宮殿へ戻った。まだ、早朝だ。厨房へ急ぐ。
「料理長いる?」
「クルト様! エミーリエ様! お渡しした食事に何か……」
「違うの。この子なの」
 抱えていた毛布から顔を少し出す。
「母猫からはぐれたようで弱っているの。暖かいミルクあるかしら? 猫用の」
 何か悪いことがあったのかというほどのビビった表情が柔らぐ。
「もちろんありますとも。すぐにご用意しましょう。あたたかなベッドもご用意できますよ」
「ありがとう。料理長! 朝はこのバスケットのものをいただくわ。お昼を作ってもらうことになるの。ごめんなさいね」
 申し訳なく言うと料理長はなんというお言葉とでもいうように心配はいらないと繰り返す。
「料理長。その心配症はいつまでたっても治らないね」
「クルト様! そのお話は内緒でございます」
「料理長はね。僕が幼いころに見習いで入って上り詰めた苦労人なんだ。それから極度の心配症。あれはどうだこれはどうだと俺の嫌いなものに挑戦もしたね。おかげでいくつかの嫌いな食べ物は食べられるようになった。いつも感謝しているよ。料理長たちには」
 クルトが気安く言うと料理長はじめ料理人達は滅相もない、と手で止める。
「つつましやかな食事の共犯者でもあるものね。さ。ミルクをお願い。この子は私の部屋にあずかるわ。行きましょう。クルト」
「わかった。急いだほうがいいね。獣医も呼ぼう」
 足早に歩きながら私の部屋に向かう。部屋の鍵が開いていた。フリーデかしら? 入ろうとする私を後ろ手にかばってクルトが前に出て入る。
「よかったフリーデとカロリーネお姉さまね」
「どこ行っていたのよ。ヴィーは二日酔いで使い物にならないし、部屋へ来たらもぬけの殻。私の縁談まとめてくれるんじゃなかったの?」
 すごい勢いでお姉さまが迫る。だけど、今はこの子が大事。
「待って。お姉さま。この子の命の瀬戸際なの。協力して。まず、ベッドを作ってあげないと」
 子猫の顔を出すとまぁ、とフリーデとお姉さまが言う。
「どうしたの?」
「遠出に逝った先で母猫とはぐれたこの子を見つけたの。あのままでは死んでしまうから連れてきたのよ。ねぇ。子猫ちゃん」
 そう言うとフリーデがあたたかい毛布を集めて子猫のベッドを作ってくれる。その中にうずもれるように子猫は入っていく。
「やっぱり寒かったのね。もう、大丈夫よ」
 その時、料理長がミルクと離乳食を持ってきた。
「この時代には子猫用の食事まであるのね!」
 どこからやってきたのか不明な時代錯誤の言葉を口にするけれど、だれも気にしていない。私が過去から来た姫というのは知れ渡っていた。そしてそれを特別視しないのがこのクルトの宮殿の人たちだった。ごく当たり前のように接してくれるのがありがたかった。
「子猫ちゃん。ミルクよ。おなかすいてたでしょ」
 小皿を毛布の前に置く。子猫はうずもれていた毛布からでるとミルクをぴちゃぴちゃなめ始めた。
「よかった。猫用のミルクがあって」
 ひたすら子猫を見つめている私にクルトが言う。
「子猫ちゃんじゃ、エミーリエの猫にならないよ。名前を付けてあげて」
「クルト? この子をここで飼ってもいいの?」
 体調さえ戻れば野に返されると思っていた。私のいた世界では人間が生き延びることさえ厳しかった。動物にまで手をかける余裕はなかった。
「もちろん。エミーリエが気づかなければこの子は命を失っていた。ママになる資格は持っているよ」
「じゃ、パパはクルトね」
 子猫を挟みながらなんだか二人の世界を作ってしまっていた。フリーデはいつも通り側に控えていたし。カロリーネお姉さまも子猫に夢中。二人と一匹の家族が出来上がっていた。
「あの森は幸せの実、キルアデがよく実る原生林でキルアデの森っていうんだよ。キルアデという名前はどう?」
「キルアデねぇ。なんだか男の子っぽいわ。この子女の子よ。キアデは語尾が雄々しいわね。キアラではどうかしら? 響きがかわいらしいし」
「いいねぇ。キアラ。ご飯を食べてあったまったらこのベッドでお眠り。パパもママも側にいるから」
 そう言ってキアラの頭を軽くなでる。
「ちょっと。私の縁談は?」
 ようやく子猫の魅力から解放されたお姉さまが追求する。
「悪知恵の働くヴィーがいないから休止。三日酔いがさめたら段取りをつけるよ。エミーリエにも話があるからね」
「何の話?」
「王太子妃としての初仕事」
「まだ、婚礼はあげてないわ」
「それはどーでもいいんだ。向こうには、ね」
 どこか剣呑な雰囲気をほんの少し見せてクルトがいう。こんな表情も持っていたのね。怖いというより新たに知ったクルトの一面に私はかっこいい、と不埒にも思っていた。あばたもえくぼね。この色ボケはいつまで続くのかしら、と頭に花が咲き誇っている自分にあきれていた。


あとがき

勝ったー勝ったー阪神日本一~。なので更新してるわけですが、ビールかけまで起きてる。明日は家電量販店に行きたい。MVPインタビューがいい。って、テレビ見てるけど、大阪に人が大量に映ってた。テレビで静かに横田選手の冥福を祈り、祝ってるところですが、大阪はとんでもないようです。またカーネルの呪いが~。どこからともなく人が来たと。そしてpoliceが現れたと。交通整理があるようで。もう、寝る時間ですが、あくまでもサンテレビの中継に走ります。一番近い時間で違う局の番組があるのですが、あと三十分もドラマを見ないといけないのでもう変えちゃいました。やっぱりサンテレビボックスだよね。今かかっている話も見たくはないけれど、しかたない。続きを執筆しないとなー。編集作業は終わっているのであとは申請だけなんだけど、まだできない。なんともはや、寝込んでしまったので。明日一日で復帰しないと。やっと終わった。イアルの野を設定してなぜエデンの園を出す。卒業した学科の知識で文句を言ってしまった。神話体系が違いすぎ。知らないって怖い。いつまでもビールかけを待ってると余計な実況になるので、ここで止めます。阪神ビールかけまで執筆してまーす。

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