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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:氷晶の森の舞姫と灼熱の大地の王子第二十九話 平和な時間

前話

 夕食をリリアーナと遊びながら待っていると、カールが顔を出してきた。
「カール! お前、人をたぶらかすのはやめろー。氷の国の義勇団は陛下の指揮下じゃねーか。ユレーネにやるって言ってたぞ」
「はい。女王の義勇団ですから」
「狸ジジィ。一癖も二癖もお前はあるな」
「ジジィ、とは心外ですよ。こんなにお肌ピチピチの青年なのに」
「公爵家とも通じてるな?」
「もちろん」
「どんだけ包囲網作ってるんだ」
 レオポルトが突っ込んでいるとユレーネが呼びに来た。
「あら。カール、夕食食べていく? レナを呼んでくるわ」
「ありがとうございます」
「お前も家族になるのか」
 はぁ、とため息をつく。文句を言ってもキリがない。
 王族のプライベート空間に行くとレナがユレーネに引っ張られてきていた。レナは無理です、と連呼している。
「カール様。助けて下さい。王族の空間に侍女が来るなど」
「おいで。レナ。君は私の未来の妻だよ」
「ほーら。レナもここにいていいのよ。行ってらっしゃい」
 ユレーネがぽんと背中を押す。つんのめりながらカールの所へ行く。
「本当に私を?」
「そうだよ。そんな事を気にしないで良いと思える国をユレーネ姫とレオが作るよ」
「ご馳走さま」
「姫こそ。娘ももういるではありませんか」
「娘?!」
「リリアーナ様ですよ」
「リリアーナは妹なのー」
「ほら。本人が主張してるじゃないか」
 大混戦を繰り広げているとヴィクトール国王がとりなす。
「まずは大人しく席に座りなさい。フロストロータス・ブロスが冷める」
「すみません!」
 リリアーナを子供用椅子に座らせるとレオポルトは隣に座る。その隣にユレーネが座る。
「ユ、ユレーネ?」
 場所が違う、と言外に言いながら名を呼ぶ。
「いいの。この席で。私とリリアーナとレオが一組なの。リリアーナが旅立つまでは」
「そうか」
 すとん、と納得してレオポルトが座り直す。大人しい兄にリリアーナが不思議そうにする。
「お兄ちゃん。餌のいらない猫飼っているの?」
「リリアーナ?!」
「お姉ちゃんとカールが言ってた」
 じとー、とレオポルトが恨まれがましく見る。
「でしょ。お父様の前ではいい子だし。普段はあんなにやんちゃなのに」
「だれがやんちゃだ。誰が」
 ヴィクトール国王が二人の名を呼ぶと、すみませーん、と二人して謝る。それを聞いたカールが馬鹿笑いする。
「カール!」
「お似合いですよ。女王と王は。私とレナのようにお互いしか見えてないのですから。今日のデートはよかったですか?」
「ま、まぁ」
「お兄ちゃん、お姉ちゃんどうしたの?」
 リリアーナの純粋な瞳に答えられない二人である。
「いいですね。思春期とは」
「もう知らん。リリアーナ。頂こう。ユレーネの料理だぞ」
 さっさと食べる兄妹である。すでに国王と王妃は口にしている。若者の会話をそっとしてくれていたのだった。
「美味しいー。これ、お姉ちゃんが作ったの?」
「レナと一緒に作ったの。これは氷の国で採れた根っこの野菜だけをスープにしたものよ。冷えた体を温めてくれるの。リリアーナもうんと食べて温まりなさい」
「うん。これも食べるー」
 他の料理も次々と平らげていく。流石、育ち盛りの子供だ。
「リリアーナ。兄ちゃんのこれもやるよ。いっぱい食べて大きくなれ。お姉ちゃんみたいに美人になるぞ」
「ほんと? いいの?」
 リリアーナの目は子供らしい光でキラキラしている。この国に連れてきて良かったと思うレオポルトだ。
「レオポルト。今日も家族一緒に寝ますか?」
 レオポルトは吹き出しそうになった。
「流石に俺、いえ、私は遠慮します。リリアーナをよろしくお願いします。お、私はフロリアンに用事があるので」
「氷の国の武器か?」
「ええ。アイシャードが魔術をさらにかけてくれるそうです。アドルフに対抗するのに有効な手だと」
「そうか。早めに手を打っておいた方がいい。リリアーナは私の娘でもある。安心されよ」
「ありがとうございます。さ。リリアーナ。これも食べろ。大きくなって美人になるぞー」
「うん!」
 幼い妹と兄のやりとりに皆、和やかになる。
「いいわね。兄妹って」
 ユレーネが言う。
「ユレーネにもレナがいるだろう? 姉妹のように育ってきただろ? そこにリリアーナを加えてやってくれ」
「もちろんよ」
 にわか若夫婦の会話も和やかに進む。
 
 平和な時間はまだまだ存在していた。アドルフが仕掛けてくるのはいつのなのか。それが頭の片隅にさっと横ぎったレオポルトだった。


あとがき

完結組です。第二部はまだですが。いつになったら落ち着くんだろうか。なんて思います。今日は阪神負けるかも。

あともう一作品。すぐ更新しますね。読んで頂けて幸いです。予想外にPVが延びててびっくりしました。今日は昨日アレルギーを出してしまい、病院でした。もうエビが食べられない。がーん。です。まだ発疹がひかない。まる一日かかってます。待合室の時にマシになってはいるのですが、完全にはよくならず。漢検の試験大丈夫? です。

ああ、コリ達が乱舞している。また産卵気をつけないと。

ではでは、作業に移ります。

ここまで読んで下さってありがとうございました。

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