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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(60)

前話

「あ。こら。キアラ。おとなしくなさい! もう!」
  ちっともじっとしていないキアラと格闘しながらクルトの待つ部屋へ戻る。
「おまたせ! クルト! もう! キアラ! お外に行くのよ!!」
 子猫と取っ組み合いながら戻るとクルトが笑いをこらえていた。もう。
「おちゃめな娘みたいだね。おいで、キアラ」
 クルトが手を出すとキアラが飛んでやってくる。私はリードに引っ張られてつんのめる。
「もう!」 
 頬を膨らませていると、キアラはクルトの襟足の髪にじゃれる。その様子がまた一段とクルトを輝かせていた。
「人見知りしないんだね。キアラは。ママをいじめちゃダメじゃないか。ママが助けてくれたんだよ?」
 クルトがキアラの顔を覗き込むとうなーん、と一声鳴く。
「キアラ。おいで」
 生傷をの絶えない手を出して優しく呼ぶとキアラはまた鳴く。
「あら。パパがいいの? ママはいらないのね? じゃ、二人でどうぞ」
 ふん。お二人でどうぞ!
 機嫌を一気に悪くして背を向けるとその肩にキアラは引き止めるように飛び乗る。
「痛いってば! キアラ! ん? ママもいるの?」
「うなう~ん」
「もう。わがままね」
 そう言うけれどもう私の頬は緩み切っている。意地悪されたってキアラには負けるわ。クルトとね。クルトはなぜか口を押えている。
 ?
「クルト?」
「あ。じゃ、散歩行こうか」
「ええ。キアラ、抱っこされていく?」
「にゃん!」
 キアラは飛び降りると先頭を歩く。
「まぁ。わがままなお姫様ね。パパ行きましょ」
「ああ。手を」
 私はリードを持ちながら空いた手でクルトと手をつなぐ。仲睦まじい様子に宮殿内で見かけた使用人が皆、微笑んでみている。もう、婚礼などいらないのではないかという新婚カップルに見えるとフリーデが前に言っていた。まぁ、初夜を迎えていないプラトニックラブでこうなのだから、やっぱりお世継ぎを作る初夜は必要よね。やっぱり区切りが必要、といことになる。
「エミーリエ。散歩しながら考え事は転ぶよ」
 クルトがにやり、と笑って言う。もう。年頃の男の子なんだから!
「そういう君もね」
「現実問題として考えただけよ!! 行きましょ。キア」
 痴話げんかもいつも通りと周りは何も言わない。もう。本当に婚礼の儀式いらないかもしれない。
 私たちは薔薇園を歩く。かぐわしい香りに包まれながら、新たに増えた家族とともに散歩する。
「キアラ、嬉しそう。クルトパパに会いたかったのね」
 穏やかに私は言う。
「ここのところ君のところに行けなかったもんね。夕食も寂しくなかった?」
「大丈夫よ。キアラがもう大暴れするから料理長とご飯でつる作戦を日々企てていたのよ」
 おやおや、とその光景を想像してクルトは笑いをこらえるいる。
「でもクルトもいてくれると嬉しいわ。やっぱり、ママとじぃじだけじゃ限界があるもの」
「エミーリエが甘やかしたんじゃないの?」
「う」
 私が固まる。そのリードをキアラが子猫なのにすごい力でひっぱる。いえ。キアラの姿は見えなかった。リードの先は何かわからない空間のゆがみがあった。怖い。とっさに思うとクルトが抱き留めてくれる。
 だけど見えないすごい力が私たちを引っ張る。

 キアラはどこ?!

「キアラ!」
「エミーリエ! 危ない!」

気づいたら二人とも吸い込まれていた。私は急にめまいがして意識を失った。


あとがき
ろくに寝れず、早朝に目が覚めました。のでやりかけていた更新作業すすめています。休みの日に限ってこうなんだから。何しても目がさえる。母もがっかりしてるんだろう。でも、母が絡むとひがみ根性がでる。おとなしく娘同士で話した方が穏やかに行くと思う。向こうにその気があれば。母がやりかけていたふすまの張替えの途中のところに思わず昨日、穴をあけてしまった。指でぽすぽすと。昔はカッターナイフ突き立てていたのでつい。これ、わかったら怒られるよねー。ひそかに気づかないことを祈ってる私です。破壊衝動が久しぶりに。私も成長してないわ。まぁ。薬と朝食は済ませたので、顔を合わすこともないでしょう。今日は寒いけれどジュリアンを買いに行こうかと思っています。ほんとはセントポーリアが欲しいけれど売ってない。タニシもいるし。あー。貧乏。また、何かあれば、愚痴りに来ます。
ここまで読んでくださってありがとうございました。

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