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【連載小説後書き付き】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(69)

前話

 八百屋のおじさんおばさん、アルポおじいさんの生存確認をしてから私はなんのやる気も出ず、ただ、キンモクセイの宮でぼーっと外を眺めて暮らしていた。ウルガーはワクチン施行策で宰相のダーウィットお兄様達と毎日協議してこちらには食事の時しか来なかった。そのウルガーが顔を輝かせて昼の真っただ中やってきた。
「ゼルマ! やっと政策が通ったよ。ごめん。放りっぱなしだったね。アルミたちと遊ばない?」
「そうねぇ……」
 私はやる気のない声で頬杖をつきながら中庭を眺めていた。
「ゼルマ? 疲れてるの?」
「いいえ。ただ、心が憂鬱でぽっかり穴が開いたような気がするの。ウルガーが原因じゃないことは確かなんだけどなんだか体も重くて……」
「熱は、ないね」
 ウルガーが医者の顔をして熱を測る。前ならそんなウルガーに心を躍らせていたのにそれもない。嫌いになったわけじゃないのに。大好きなのに心がわくわくしない。どきどきもしない。どうしちゃったの。私。
「早い五月病、みたいなものだね。ちゃんと朝陽浴びて、規則正しい生活送ってる? 心が闇に支配されてるよ」
「え?」
 闇、という言葉がひどく引っかかった。
「母上もゼルマは闇を抱えてしまっているって言ってたね。俺と同じ状態だ。大丈夫。君の心の闇は俺が追い払う。春祭りをすることになったんだ。ゼルマもその準備に参加しない? パレードもするんだよ」
 パレード? 
 私はぱっとウルガーの方を向いた。
「ああ。ひどい瞳だ。こんなになるまで君を放っておくんじゃなかった。君は大丈夫だと思っていたから。俺の光だから。今度は俺がゼルマの光になる。こっち向いて」
 ウルガーがそっと頬に手を添えて自分の方にむける。
「ただの春のお祭りじゃないんだ。疫病を追い払う春の祭りを開催するんだ。出店も出て、いろんなものを売っていいことにする。市場以外にも露店を出して街のみんなにもう疫病は終わったと疫病神を退散させるお祭りをするんだ。店が潤えば経済も回る。人々の心も明るくなる。いいことづくめだよ。そして、待ちに待ったパレードの予行練習をするんだ。みんな、待ちきれなくてね、早く見たいっていうから予告パレードをするんだよ。あのこたちもアルポおじいさんも八百屋のおじさんおばさんも特等席に呼んでみてもらうんだ」
「って。疫病で疲弊した財政でそんな派手なパレード、できるの?」
「財政は祭りで持ち直す。復興策も動かしているから立ち直るのは早い。それにパレードは規模を縮小してする。あくまでも練習。街のみんなの期待に応えるだけだよ。ウェディングドレスも着ない。ちょっと奇麗なドレス着ておしゃれするんだ。お化粧はフローラ姉上たちがしてくれるし、ドレスも母上がとびっきりのものを用意するってうきうきしてたよ。パレードもみんなを笑顔にするんだ。その笑顔が君の光になる。みんなの暖かい心が凍った君の心をとかしてくれるよ。本当なら俺一人でしたいけれど、ゼルマみたいに強くないからみんなの力を借りる事にする」
 借りる……?
「ウルガー。あなたそんな人だった?」
「俺に熱はない」
 額に当てた手をおろしてそっと握る。
「ゼルマは今、俺と同じように人を亡くした虚無感にさいなまれている。この闇を追い払うには強烈な光が必要なんだ。俺一人では無理だよ。ゼルマは俺の闇を一瞬で吹き飛ばしてくれたけど俺にはなにもない。ゼルマにあげられるのは永遠の愛だけ。ゼルマ、元気になれなくてもいい。笑えなくてもいい。でも、一緒になにかしよう。春の祭りに参加したくなかったらパレードだけ協力してあとは父上の菜園で土いじりをしててもいい。クルヴァもタピオもそれらしいこと言ってたな。姉上が全然元気ないって。早く気づかなくてごめん。俺のゼルマ。医者なのに大事な人を見失ってた。ごめん」
 沈んだ声でウルガーが言って抱きしめる。ウルガーのせいじゃない。それだけはわかっていた。一生懸命否定した私だった。


【あとがき】
パレードをさっさとすればまだ姪っ子達はまだ生まれてないので、フローラ姉様だけ、まだ臨月ということにします。現、状態では。続き書きたいけれど、暑い。散歩に行きたくて行こうかと思ってたら、デイゲームでした。現在阪神巨人戦。ミスター掛布さんが解説。巨人も阪神の事も解説してすごい。ええ年だろうな。さて、この訳あり。いい加減、再開せんと。しかし、お外に行きたい。肩の痛みはましになりましたが、相変わらず、不眠になります。寝返りがうてない。明日はお出かけなんですがね。突風が吹くって、どういう天気? 観光気分で行ってきます。野球中継の声が異常に入ってきてマルチタスクができない。でもこの後登販の勉強して、タブレットで読んでいきます。暗記部分になれば同じ本の冊子版を使います。今まで使ってた本では全然情報が違う。買い直してよかった。頭がぼーっとしてます。ロキソニン飲んでるので。痛み止めも飲んでるんですが、神経系なので、筋肉痛にロキソニンは効くのでそっちも飲んでます。しかし、五月病とは。ゼルマがこんな風になるなんて書き手も思いもしませんでした。でも、死に連続で体験すればそうなるでしょう。もう、午後三時。おやつを捜索してきます。ここまで読んでくださってありがとうございました。

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