歌糸は絶えず

灯りが照らし出したのは、豪奢な寝室だ。天蓋付きの寝台には繭が横たわっている。繭は微かに蠢いた。近づき、耳を眉につけると、柔らかな歌声が聞こえた。姉の声だ。姉はまだ歌を紡いでいる。歌が絶えなければ茹でられないから。私はホッと息を吐く。今年も歌糸売りに姉を渡さなくてもよくなったので。

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